秋季総合特集Ⅳ(7)/トップインタビュー/ユニチカトレーディング/エコの引き出し前面に/社長 細田 雅弘 氏/新事業開発室での取り組み推進

2021年10月28日 (木曜日)

 ユニチカトレ―ディングは2020年度からの中期3カ年計画を通じ、環境配慮型素材の販促に力を入れている。エコ素材におけるリーダーカンパニーの地位を確保すべく、「エコフレンドリー」や「キャストロン」「テラマック」といった幅広いラインアップを打ち出している。新型コロナウイルス禍後をにらんだ成長戦略を細田雅弘社長に聞いた。

  ――新型コロナウイルス禍に見舞われた20年度の業績は2%の微減収でしたが、営業利益を大きく伸ばしました。

 昨年は新型コロナ禍に伴う厚生労働省からのガウンの大量発注という特需が発生し、利益を大きく伸ばすことができました。21年度はこれがなくなりますが、何としても目標に掲げた営業利益5千万円を達成しなければなりません。この間、当社は会計基準を変更しましたが、22年度は変更前の基準で売上高を360億円ぐらいにまで回復させる必要があります。

  ――ケミカルリサイクルで生産する再生ポリエステル「エコフレンドリー」の市場浸透に取り組んできました。

 婦人アパレルで採用が進んでいますが、新型コロナ禍で当初、描いていたスピーディーな立ち上がりにはなっていません。当社はバイオナイロン11「キャストロン」やPLA(ポリ乳酸)繊維「テラマック」、植物由来のPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維を複合した「パルパーソロナ」などエコ素材で多くの引き出しを持っているのが一つの強みと言えます。これらを武器に、社会問題の解決につながる取り組みを引き続き強化していきます。

  ――新事業開発室の発足後、およそ1年半が経過しました。

 クラウドファンディングを使い毛布、タオル、ガーゼケット、敷パッドを販売してきました。いずれも目標額を超過達成しています。これらの開発・販促を主導したのが新事業開発室です。厚労省から受注した医療用ガウン「ユニソフィア」の開発・生産を市立東大阪医療センターと共同で進めてきたのも同室です。この1年半で当初期待していた以上の成果を出してくれました。

 ――シキボウとのコラボレーションにも乗り出しました。

 まず、シキボウの抗ウイルス加工「フルテクト」を施したマスクの販売から着手しました。ユニフォーム素材に使わせてもらうとか、先方の「アゼック」と当社の「パルパー」との複合素材など、今後バリエーションが広がりそうです。12月には東京、大阪で共同展示会の開催を計画しています。ここでいろいろとこの間の成果を披露することになります。

  ――ほかにも展示会への出展を計画していますか。

 サステナブルファッションEXPO、北陸ヤーンフェア、感染症対策展などの展示会に出展し、10月には当社主催の展示会を開催しました。これらが今後の業績拡大にどう寄与してくるのか、今から楽しみです。

  ――グローバルな市場をにらんだ取り組みにも力を入れてきました。

 ベトナムのホーチミンにグローバル開発センターを開設しました。中国やインドネシア、日本との連携で取り組みの成果が徐々に出始めています。今後はパルパーソロナのようなエコで独自の素材にも広げていこうと考えています。

 一方で、ミャンマーに駐在員事務所を開設する件はペンディング状態にあります。ミャンマーを縫製基地として活用したいのですが、仮に日系アパレルが政情不安を理由に撤退を始めるとなると別の方策が必要になってきます。規模は小さくてもそれぞれの国に拠点を持っておくことが必要です。私はカンボジアに注目しています。

  ――産業資材や非衣料の商況はいかがですか。

 巣ごもり需要を追い風に生活資材向けの販売が好調です。工業用フィルムも販売増が続いています。これからは親会社の商材を右左で流していくだけでは生き残っていけません。ユニチカの商材や他社から調達する商材にいかに付加価値を付けられるか、ここを突破口に次なる成長を目指していきます。

〈私のターニングポイント/重要なのは人脈作り〉

 かつてユニチカ本体の技術開発企画室で全社のR&Dを担当していたとき、ポリ尿素の研究に取り組み、「NEDOに助成金を要請しようとしていた」。このとき、かつてのスイス留学時にいろいろと交流のあった京都大学の先生を相手に案件を説明したところ、いいよの一言でプロジェクトに採択されたという。「先生と懇意だったことが後押ししてくれた」と、常日頃からの人脈作りの重要さを痛感したという。

〈略歴〉

 ほそだ・まさひろ 1982年4月ユニチカ入社。2007年7月技術開発本部技術開発企画室長、12年7月執行役員、14年6月執行役員樹脂事業本部長、15年4月執行役員樹脂事業部長、16年4月上席執行役員樹脂事業部長、19年4月常務執行役員繊維事業本部長兼特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長、20年4月常務執行役員特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長。