秋季総合特集Ⅳ(9)/トップインタビュー/クラボウインターナショナル/分散型で適地生産推進/社長 西澤 厚彦 氏/SDGsへの対応が鍵

2021年10月28日 (木曜日)

 クラボウインターナショナルは、カジュアルとユニフォームの製品OEMを主力とする素材メーカー系商社。クラボウやそのグループ企業との連携による素材からの差別化提案が強みだ。新型コロナウイルス禍で環境は厳しいが、カジュアル分野の回復や新規事業の種まきの進展など明るい話題もある。現状と展望を聞いた。

  ――国内外でモノ作りのサプライチェーンが変化しています。

 新型コロナウイルス禍の当初には、アジア各国で政府から工業団地のロックダウン(都市封鎖)や時短操業要請などが出されました。その中で安定操業と品質、納期の確保に適切に対応してきた経験があります。時間の経過とともに顧客や生産拠点との綿密なコミュニケーションが図られ、特殊な環境下でも対応できるようになってきましたが、それもさらなる感染拡大により見直しを迫られています。

 当社は納期、品質、ロット、価格、素材調達などを考慮し、生産拠点を中国、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、その他の地域で分散して対応してきました。今後はこのノウハウに加えて各国各地域に分散する協力工場を活用した新しい調達管理システムが必要であり、有効になると考えています。

 新型コロナ禍以外にも政治問題などが絡んだ調達リスクなどが考えられるため、その都度適切な生産拠点の開拓が必要になります。

  ――各国の特徴と使い分けについて教えてください。

 中国は小ロット、短納期、一貫生産に優れます。インドネシアは長年の技術指導により協力工場が充実していることや、品質、納期管理面でも信頼が高い。ベトナムは今やシャツ、ブラウス、カットソー、パンツ、デニムなど多彩なアイテムが調達可能で、現地素材の調達により納期、価格面で優位性が出せます。バングラデシュは価格訴求型商品で重要な拠点です。ナショナルスタッフの育成により現地での素材調達や品質フォローも向上し、顧客からの信頼度も上がっています。

  ――上半期(2021年4~9月)の業績推移は。

 新型コロナ禍や緊急事態宣言の長期化を背景に、前年同期比減収減益です。ただ、主力のカジュアル分野は壊滅的だった前年から徐々に回復しており、少し潮目が変わったのではないかとみています。ユニフォーム分野もワーキンや介護メディカルは堅調です。

  ――今後の重点方針を。

 専任スタッフも置いて新規ビジネスの開拓作業を進めていますが、こちらも徐々に進展しています。インフルエンサー系のブランドなどで種まきを続けており、手応えも得ています。すぐに芽が出るとは考えていませんが、将来への先行投資ですね。

 事業キーワードは会員制交流サイト(SNS)、SDGs(持続可能な開発目標)、トレーサビリティーなどになります。SNSは先述の通り、その活用者をターゲッティングしています。SDGsでは今期から、リサイクル、オーガニック、「ルナセル」の三つを包含した独自のサステイナブルブランド「エコロジック」の展開を開始しました。リサイクルでは再生ポリエステルや再生コットンを使用した製品を、オーガニックではオーガニックッコットンを、それぞれ混率にもこだわって展開します。ルナセルは天然繊維である独自のセルロース・プロテイン複合繊維です。

 トレーサビリティーでは例えば、「生産者が見える綿」としてブルキナファソ綿の展開を強めています。

  ――ユニフォーム分野の拡大もテーマに掲げています。

 今後は特に、別注案件獲得に力を注ぎます。クラボウが「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスと連携してユニフォームを共同開発したように、素材メーカーや素材メーカー系商社は企業の要望に応えられる機能的な素材を持っています。企業姿勢を打ち出すツールであり、着用者のモチベーションを引き上げることができるユニフォームというアイテムにおいて、SDGsへの取り組みもアピールしながら別注案件獲得を狙います。

〈私のターニングポイント/バンコク時代の交流が思い出〉

 「新しい勤務地での新しい人脈がその都度転機になった」と西澤さん。大阪、ニューヨーク、東京、バンコクと勤務地を変えてきたが、特にバンコク勤務時代が思い出深い。現地の日本人商工会議所や日本人学校の理事を経験したことで繊維以外の業種の人や大使、公使との接点を持ち、そこでの交流が「刺激になったし、勉強になった」。新型コロナ禍では働き方も変化したが、これも大きな転機。「改善の契機になった」と前向きだ。

〈略歴〉

 にしざわ・あつひこ 1982年クラボウ入社。テキスタイル第一部長などを経て2013年執行役員タイ国担当兼タイ・クラボウ社長兼サイアム・クラボウ社長。16年6月常務執行役員繊維事業部繊維製品事業担当、同年9月から現職。