小林恵介のベトナム便り(12)/ウイズコロナの姿勢は保たれるのか

2021年11月16日 (火曜日)

 ベトナムの新型コロナウイルスに関わる状況については本欄第9回(8月17日付)で紹介した。100万人当たりの日ごとの新規感染者数(7日間移動平均)は当時76.7人、9月に136.5人まで増加したが、10月下旬には一時期、34.5人まで減少した。シンガポール、マレーシア、タイよりも現時点では少ない。

 ベトナム政府は「ウイズコロナ」の方向性にかじを切ったとみられている。ホーチミン市が9月30日に、ハノイ市が10月14日にそれまでの社会隔離措置を条件付きで緩和するなど動きが出てきた。

 筆者がいるハノイ市では、台数はまだ多くはないがタクシーでの移動が可能になり、レストランも午後9時までは利用できるようになった。日系製造業では、移動規制の緩和を契機に帰郷した労働者が戻ってくるか否かなどの課題はあるものの、工場稼働の条件が緩和され、稼働率は改善してきている。

 ワクチンの接種状況も向上している。ワクチンを1回以上接種した人口割合は、8月の10%弱から60%超まで上昇した。ASEAN主要国で比較すると、8月時点では最も低かったが、現在はタイに並ぶ水準だ。

 他方、ハノイ市、ホーチミン市などの日ごとの新規感染者数は11月に入ってから増加傾向にある。先述の100万人当たりの日ごとの新規感染者数は70人台に戻った。ワクチンを2回接種済みにも関わらず感染した、いわゆるブレークスルー感染の症例も報道された。日系企業からは「せっかく可能になった省・市間移動が再度不可となり、従業員の就業が難しくなるのではないか」などの懸念の声も聞かれており、ベトナム政府が今後、「ウイズコロナ」の姿勢を保つのか否かが注目されている。

こばやし・けいすけ 日本貿易振興機構(ジェトロ)ハノイ事務所次長。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。2003年ジェトロ入会の後、熊本事務所、ハノイ事務所、海外調査部アジア大洋州課などを経て20年8月より現職。『世界に羽ばたく!熊本産品』(単著)ジェトロ、07年、『分業するアジア』ジェトロ、16年(部分執筆)などの著書がある。