明日へ これが我が社の生きる道~縫製編~(35)ズーム

2021年11月19日 (金曜日)

縫製会社のロールモデルに 

 ズーム(東京都墨田区)は、1980年創業の縫製会社だ。元々は丸編み地縫製を主力としていたが、現在は織物縫製が約半分を占めるなど、丸編み地縫製を中心とする会社が多い墨田区において存在感を示している。元薬剤師という異色の経歴を持つ加々村征社長(40)は、独自の視点で会社を導く。

 加々村社長の父・義廣氏が立ち上げた。デザイナーを志していた義廣氏は、18歳で北海道から上京し、運送会社で働きながら専門学校を卒業して夢をかなえる。ただ既存の縫製会社との取り組みでは思うようなモノ作りができず、「自分で工場を作れば良い」という考えに至った。

 東京都内に自家工場を設立し、丸編み地製婦人服製造を行う。仕事は順調で小規模の工場では対応できなくなり、秋田県大館市に拠点を設けた。加々村社長は「父は信念を持つ人で、デザインが気に入らなければ仕事を受けないこともあった」とし、「それが信頼につながり、会社が成長した」と話す。

 そんな父の背中を見て育った加々村社長だが会社を継ぐ気持ちは一切なかったと言う。大学卒業後は薬剤師として働くが、「このまま薬剤師を続けていいのか」と自問自答し、プロの格闘家を目指す。トレーニングを続けたがけがも重なり断念。今後どうするか悩んだ時に初めて家業を継ぐという考えが浮かんだ。

 会社に入れてほしいと頼むが、「繊維は下りのエスカレーターを駆け上がるような業界。苦労するのが分かっている。薬剤師の道を進め」と断られる。薬剤師はいつでもできると説得し、義廣氏も折れる。「繊維業界で経営に携わると死を思うことが何度もある。絶対に死ぬな」。それが入社の条件だった。

 入社後は外資系ブランドで販売のノウハウを習得し、その後秋田の工場で縫製や管理を学ぶ。営業担当者として取引先を開拓すると同時に、自社ブランドも立ち上げるなど、新たな挑戦を行った。直営店も持つが、「デザイナーをはじめ専門のスタッフを置いたが続かなかった。OEMとの2足のわらじは難しかった」と振り返る。

 自社ブランドはいったん休止し、現在はOEMに絞り込んでいる。自社ブランドでは良い商品を作るために最高難度の縫製にもチャレンジし、これによって縫製技術が向上した。工場のレベルを上げることが日本のアパレル業界のためになると改めて気が付き、工場のスタッフや内職の活用を含め、技術を高める。

 39歳で社長に就いた。今後は工場のブランド化を目指すと話す。日本で5本の指に入るような会社になり、「縫製技術や労働環境、給与面などで縫製会社のロールモデルを目指す」と語った。

(毎週金曜日に掲載)

社名:株式会社ズーム

本社:東京都墨田区緑2の13の20

代表者:加々村 征

主要生産品目:婦人服など(織物製、丸編み地製)

従業員:26人。うち秋田工場は20人。