環境特集(3)/有力繊維企業/SDGsを追求/東レ/旭化成/クラレ/ユニチカ

2021年12月06日 (月曜日)

〈東レ/「アンドプラス」の販売急増/ナイロンでケミカルリサイクル〉

 東レはグリーンイノベーション(GR)事業拡大プロジェクトに力を入れている。2020年度は新型コロナウイルス禍で業績拡大にブレーキがかかってしまったが、引き続き目標とする売り上げ1兆円の達成に向けてGRの拡大に取り組む。

 2050年でカーボンニュートラルを達成することを表明しており、今年4月には社長直轄のサステナビリティ委員会を発足。各工場はチャレンジ30プロジェクトに取り組んでいる。

 繊維事業では、白度、トレーサビリティーの確かさが特徴のペットボトル再生ポリエステル「&+」(アンドプラス)の販売がここに来て急増しており、同社はリサイクル素材全体の販売を25年度で500億円まで伸ばすという目標を掲げている。

 アンドプラスでは、イトーヨーカ堂が「ボディヒーター」などに採用したほか、メンズスーツの郊外型量販店のドレスシャツ、大手百貨店のパンプスにも入った。

 バイオ原料使いの「エコディア」や「エコディアナイロン」の販売も順調に推移しており、スポーツ以外の用途開拓に力を入れている。

 ナイロンではケミカルリサイクルを本格化させる準備を急いでおり、名古屋事業場に専用の設備を導入し22年度から月産数㌧規模でスタートさせる。産廃業者と連携し廃棄された製品を回収する取り組みも検討している。

〈旭化成/日タイでも「ロイカEF」生産/環境配慮型をグローバルに拡販〉

 旭化成のロイカ事業部は環境配慮型スパンデックスをグローバルに販売するための体制構築に力を入れている。ドイツの旭化成スパンデックス・ヨーロッパで生産してきた再生タイプ「ロイカEF」や生分解する「V550」の量産をタイや日本でも立ち上げ、世界市場での拡販を目指したサプライチェーンの構築を急ぐ。

 プルミエール・ヴィジョンやアンテルフィリエールなどの海外展に「エコ・スマート」ブランドでロイカEFを出展し、サステイナブルな物性のPRに力を入れてきた。

 これまでは、ロイカEF、V550をともにドイツで生産してきたが、21年度からは他国へも広げグローバルに環境配慮型素材を生産・販売できる体制を整える。

 今年4月からタイのタイ旭化成スパンデックス、守山工場(滋賀県守山市)でロイカEFの量産に着手しており、下半期からは守山工場でV550の量産に入る。

 新型コロナウイルス禍でスパンデックスの世界的な市況は20年度上半期まで低迷していたが昨年8月以降、反転し、10~12月期は中国を中心に需給バランスはタイトに推移しているという。

 旭化成はロイカEF、V550を前面に打ち出し、再びロイカ事業を成長路線へと転換。環境負荷を低減するための技術革新、高品質の追求などに取り組みロイカ事業の競争力強化を進める。

〈クラレ/環境配慮型前面に/バイオ使い22年から〉

 クラレは2022年から中期経営5カ年計画をスタートさせることにしており、人工皮革クラリーノ事業では「環境対応型素材を第一義に位置づける」とともに主力の靴・スポーツシューズ向けや自動車内装材向けの販売を伸ばす。

 環境配慮型素材として、既に有機溶剤を使用しないCATS製法で生産する「クラリーノ―TN」、再生ポリエステル使いの「クラリーノ―SR」、再生ナイロンで開発した「クラリーノーNR」をラインアップする。

 バイオ原料使いの新タイプ開発にも力を入れている。「かなり完成の域に近づいてきた」としており、来年からの販売を計画する。

 同社は欧米や韓国の造面メーカーに生機を供給し共同開発した商材で車両内装材用途を開拓する取り組みに力を入れてきた。

 韓国や米国の自動車メーカーが既にクラリーノをカーシート用に採用しており、今後は特に電気自動車メーカーからの引き合いが強い環境配慮型素材もラインアップし、自動車内装材向けの販売を伸ばす。

 新中計では、6系列による年産2800万平方メートル体制に増強した中国の合弁企業ヘーシンクラレが好調を続けているため、「再度の増設を考えたい」との意欲を示している。

〈ユニチカ/サステナブル推進室が主導/豊富な引き出し提案〉

 ユニチカは昨年7月、サステナブル推進グループをサステナブル推進室に昇格させ、SDGs(持続可能な開発目標)を意識した環境経営を強化・徹底していく方針を表明した。

 ユニチカグループにはケミカルリサイクルで生産するポリエステル「エコフレンドリー」やPLA繊維・樹脂「テラマック」、バイオナイロン11「キャストロン」、ケミカルリサイクルで生産するフィルム「エンブレットCE」「エンブレムCE」といった環境配慮型素材を幅広く展開している強みがある。

 ユニチカトレーディングがエコフレンドリーを展開しており、東京ソワールがエコ化したブラックフォーマル向け婦人服地「ノイエ」を採用。瀧定名古屋とのコラボレーションにも力を入れてきた。

 キャストロンでは、フランスのアルケマグループとの包括的連携に乗り出している。キャストロンはヒマ(唐胡麻)の種子から抽出されるヒマシ油を原料とする植物由来のバイオマス素材。

 リサイクルしやすいアパレル製品を企画し、販売してから何年か後に回収、再び繊維に戻すシステムの構築を目指している。

 フィルムでは、プレコンシュマーによる工場内リサイクルに力を入れており、いずれは「ポストコンシュマーにも乗り出したい」考えだ。