環境特集(4)/有力繊維企業/SDGsを追求/帝人フロンティア/三菱ケミカル/東洋紡STC/三井化学

2021年12月06日 (月曜日)

〈帝人フロンティア/環境対応ナンバーワン目指す/地道な活動を続ける〉

 環境戦略「シンクエコ」を設定した帝人フロンティア。2030年度を着地点に「脱化石原料による省資源社会実現―素材からエコにこだわろう。」「環境負荷低減による自然との共存―きれいな空気と海を守ろう。」「CO2排出量削減による低炭素社会実現―省エネな毎日を送ろう。」という三つの重点目標を定めている。

 シンクエコを積極的にアピールしているのがサステナビリティ戦略推進部だ。同部には八つのワーキンググループがあり、その中の一つとして、プロサッカークラブなどと連携。ペットボトルの回収を行うなど、消費者の行動変容を促す環境啓発のための取り組みを進めている。

 海洋プラスチックごみの削減に向けて海岸清掃のボランティアも行っている。これらの活動は会員制交流サイト(SNS)を通じて発信しているが、「認知はまだまだ。地道な活動を続け、消費者から環境対応では帝人フロンティアが一番進んでいると思ってもらえるようになりたい」と話す。

 30年度の重点目標では、「売上高に占めるリサイクル原料使用の比率を50%以上に高める」「モノ作りが省エネな商品の100%化」などを定めている。その達成には帝人フロンティア全社員の意識も重要になるとし、社長のビデオメッセージをイントラネットで発信するといったeラーニングを開始している。

〈三菱ケミカル/植物由来のポリオール/CO2排出量削減に貢献〉

 三菱ケミカルは、植物由来の原料を使用したポリオールを展開している。ポリカーボネートジオール(PCD)の「BENEBiOL」(ベネビオール)とバイオPTMGの二つで、ともにポリウレタン樹脂の原料などに使われる。環境への意識が高まる中、引き合いも強まっている。

 ベネビオールは、トウゴマの種子から抽出するひまし油などから得られる特殊な原料を使った世界初の植物由来PCD(植物由来比率は最大93%)。人工皮革の製造などで用いられているが、石油由来のPCDと比べて柔らかな風合いや柔軟性、強度を付与することができる。

 バイオPTMGは小麦やトウモロコシを原料とする環境配慮型のポリオールで、95%以上が植物由来。石油由来のPTMGと同等の性能を持ち、反発弾性や耐摩耗性、耐加水分解性などに優れている。幅広い用途で活用が可能。バイオマス原料由来ポリオールに関する特許を持っており、バイオPTMGのパイオニアとして積極的に提案する。

 両ポリオールともに石油由来と比べてCO2の排出量が最大で50%削減できるほか、枯渇資源(原油)の使用量を減らせることも大きなメリットだ。ベネビオールは耐久性に優れた製品が作れるため、長く使えるといった点でも環境負荷低減に貢献する。

〈東洋紡STC/「エコールクラブ」前面に/総合展に向け開発強化〉

 東洋紡STCは環境配慮型素材としてペットボトル再生ポリエステル「エコールクラブ」、部分バイオポリエステル「エコールクラブバイオ」、生分解性素材「ダース」の3本柱を構えている。

 既にユニフォーム市場に浸透している「使い慣れたエコールクラブの販促に改めて力を入れていきたい」としており近々、開催する東洋紡グループ総合展に向けて商品ラインの拡充を急いでいる。

 12月7~9日に東京で、14~16日に大阪で1年ぶりとなるグループ総合展を開催。完全アポイント制の内見会方式を採用する予定。

 ユニフォームでは、このほかドレスシャツ向けの販売が好調を続ける高機能ニットシャツ地「Zシャツ」「Eシャツ」でオフィスウエア、サービスウエアの開拓を強化する。

 新たに開発した中肉の高機能ニット「スクラムテック」による企画提案にも着手し、これまで手付かずだったオフィススーツやジャケット&パンツ用途を掘り起こす。

 新型コロナウイルス禍に伴い安全・清潔へのニーズが高まっているといい、医療介護や食品白衣向けに引き続き抗ウイルス素材「ナノバリアー」を重点投入する。

〈三井化学/九大との連携に着手/カーボンニュートラル目指す〉

 三井化学と九州大学はカーボンニュートラルに資する最先端の環境基盤技術の開発、当該技術領域における実用化・事業化を共同で推進することを目的に組織対応型連携契約を締結した。

 これに伴い、九大のカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(アイスナー)内に三井化学カーボンニュートラル研究センター(MCI―CNRC)を開設した。

 両者はMCI―CNRCでグリーン水素製造・利用、CO2分離・回収、CO2変換・固定化、高度分析・評価をテーマに共同研究に着手する。

 三井化学は2050年にカーボンニュートラルを達成することを宣言している。同社グループのGHG(温室効果ガス)排出量削減と、同社グループが提供する製品のライフサイクル全体を通じたGHG削減貢献量の最大化を両輪として推進する。

 九大は10年にアイスナーを開設。20年にWPIアカデミーの拠点となった世界で最初にカーボンニュートラルを冠した研究機関である。

 三井化学の橋本修社長は「九大の世界最先端の技術との連携を強化し、当社の知見との融合を目指す」、九大の石橋達朗総長は「活動基盤を充実させ、地域や産業界の期待に応えられる組織へとまい進したい」と述べた。