中国ファッション90後・Z世代の肖像(5)/「FIUギャラリー」創始者 兪 沁潤 氏(前)/Z世代が行列作るギャラリー

2021年12月07日 (火曜日)

 「FIUギャラリー」は、上海市内でいま最もホットなストリート、愚園路を代表する存在だ。1カ月ごとにさまざまなアート展が開かれ、Z世代(95年以降生まれ)の若者たちが週末になると行列を作る。このギャラリーを立ち上げたのが、93年生まれの兪沁潤さんだ。

 「FIUギャラリーは、上海のストリートカルチャーを象徴する存在」と話すのは、中国のメンズ最大手、海瀾之家服飾の包暁ブランドディレクター。上海では2016年頃から、建築物の違法利用の大規模な取り締まりが行われ、歴史のある小規模な路面店の多くが閉店に追い込まれた。「買い物はショッピングモールでするものなってしまった」(包ディレクター)。

 ところが、愚園路では数年前からおしゃれなカフェやセレクトショップなどの出店が始まり、Z世代を中心とする若者が集まるようになった。「FIUギャラリーも愚園路とともに成長してきた」と兪さんは述べる。

 兪さんは、英国のロンドン芸術大学(UAL)でテキスタイルを学んだ後、帰国し、アーティストを目指した。ところが「当時の上海には若いアーティストの発表の場はなかった。芸術が街にあふれるロンドンとは対照的だった」と振り返る。

 そこである企業の「芸術を一般大衆に広めるプロジェクト」に参加。中国各地の100以上の学校を回り、子供たちに絵を教えた。「アートは絵や文字を使って自分の感情を表現、記録することだと伝えた」。

 この経験から「一般の多く人はアートに偏見を持ち、遠ざかっているが、アートは一部の人のものではない。芸術家だけでなく、技術者だってアートは必要。なぜならアートは生活を観察する能力や、自分を表現する能力を求められるから」との思いに至る。

 兪さんは18年、UALでテキスタイルをともに学んだMIKAさんらと、FIUギャラリーを開いた。コンセプトは「一般大衆とアートスペースの橋渡し」。芸術館などのアートスペースは、一般の人にとっては敷居が高い。「1日かけて勉強すれば、どんな人もそのアートに関心を持つだろうが、そこまでする人はまれ」。そこで歩きながら触って、体感できる親しみやすいアートを紹介することにした。

 ギャラリーの投資者は同級生で「最初は趣味の延長だった」。ところが、開業早々に注目を集め、にぎわうことになる。

(上海支局)