繊維ニュース

特集CSR(3)/産地の学校と旭化成/キュプラの魅力など伝える/2期目のオンライン講義実施

2021年12月10日 (金曜日)

 繊維産地やアパレル産業に携わる人材の発掘と育成などをテーマとする「産地の学校」。日本の繊維産業やテキスタイルを体系的に学ぶことができ、多くの若者が巣立っていった。旭化成は2018年から支援を行い、キュプラ繊維「ベンベルグ」が持っている魅力や生産背景などを受講生に伝えている。

 糸編(東京都中央区)が運営する産地の学校は、繊維産地の活性化を目指して2017年に開校した。人材の発掘と育成に加えて、産地における課題の明確化や人材マッチング、事業化(事業化支援)をテーマに掲げている。その理念や行動などに感銘を受けた旭化成は「ベンベルグラボ」を企画するなど、支援を続けている。

 繊維関連企業との取り組み方やテキスタイルについての基本的な知識を学ぶ基礎コース、それに続く各プログラムで構成し、就職・転職に関するサポート(マッチング)も行っている。8期目の講義が今年10月に始まったが、これまでに300人を超える社会人や学生が卒業した。

 新型コロナウイルス感染症の拡大によって対面での授業や工場訪問が困難になってしまった。そこで新たに取り入れたのがオンラインでの講義だ。今回で2期目となるが、前期と同様に旭化成パフォーマンスプロダクツ事業本部の協力を得て、リアルでの講義と変わらない充実したコンテンツを作り上げている。

 糸編の宮浦晋哉代表取締役は「オンライン講義によって遠方に住む人も参加が可能になったほか、何度も繰り返して聞くことができるのもメリット」と話す。実際、今期の受講生20人のうち東京都内在住者は10人以下。半数以上が熊本県や兵庫県、奈良県、長野県をはじめとする地方に在住している。

〈旭化成は5講を担当〉

 本講義(東京校)のプログラムは12講義だったが、オンラインプログラムは10講義で構成している。1講の産地概論・自己紹介に始まり、事前収録した工場の映像などを流す。10講の産地概論応用/産地事業論・総括で締めくくる。旭化成は5講の織物応用・化学繊維に関する講義(90分)を担当する。

 講師はパフォーマンスプロダクツ事業本部マーケティング総部繊維マーケティング室の佐藤健二郎氏が務める。織物応用編ではベンベルグの特性や生産背景について分かりやすく説明するとともに、新素材や不織布なども解説する。新素材ではヴィーガンレザーも取り上げる。

 5講は11月20日に実施された。今月4日にウェブ会議サービス「Zoom」を活用した質疑・交流(講師も参加)が行われるなど、“一方通行”の講義にならないよう工夫を施した。昨年にはユーチューブチャンネルを開設し、ベンベルグの生地とテキスタイルパートナー(産地企業)を紹介している。

 テキスタイルパートナーとして青文テキスタイル(山形県米沢市)、ミタショー(群馬県桐生市)、フジチギラ(山梨県富士吉田市)が登場するが、各方面から注目されている。中にはデザイナーから問い合わせが入った企業も存在する。

〈糸編 代表取締役 宮浦 晋哉 氏/“就職サロン”づくりも〉

 2017年5月に開校してから300人以上が受講した「産地の学校」。国内の繊維産地が持つ魅力を伝え、繊維・アパレル産業に携わる人材の発掘と育成という役割を担ってきた。運営する糸編の宮浦晋哉代表取締役に産地の学校の今とこれから、受講生・卒業生への期待を聞いた。

     ◇

  ――「産地の学校」とは。

 繊維産業を体系的に学ぶことができる場所です。産地や繊維業界で働きたいと考えている人は少なくありませんが、「(繊維業界は)閉鎖的で取っ付きにくい」という印象も持たれています。産地の学校ではモノ作りの楽しさや魅力、そして可能性を伝え、産地との距離を縮めてもらうことを目的としています。

  ――新型コロナウイルス禍で実施が困難になりました。

 昨年は春と秋の2回続けて開催を断念し、何か別の形が必要と考え、オンライン講義を始めることにしました。産地の学校は今年10月に8期目を迎えましたが、オンラインでの講義は2期目です。プログラム自体は前回と大きく変わらないのですが、中身は最新の情報にアップデートしています。

 オンラインは10講で構成し、事前収録した講義などを配信します。オンラインの利点は東京などから離れた場所に住む人でも簡単に参加できることです。収録した講義などは自由な時間に見られるようにし、全てのプログラムが終了する来年2月5日から1カ月間は繰り返し見ることができます。

  ――産地の織物工場の訪問なども実施してきました。

 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除されるなど、新型コロナ禍は落ち着きを見せていますが、産地訪問はまだ難しいのが実情です。受け入れ先の市や地域からは「再開してほしい」という呼び掛けがあるのですが、大人数で工場を訪ねるのはリスクが大きく、万が一を考えると再開はまだ先になりそうです。

  ――300人以上が学びましたが、受講生の意識は変わりましたか。

 旭化成との取り組みである「ベンベルグラボ」が始まった18年ごろから受講生の環境への意識が高まっていると感じるようになりました。特に「無駄な物を作らない」「ごみを出さない」という部分に目線を向けています。われわれも勉強になることが多いです。

 そのような感性を持った受講生や卒業生が産地で活躍することを期待していますし、産地企業に就職したいと望む人を増やしていきたいですね。就職や転職の相談・支援も行っているので、“就職サロン”のようなコワーキングスペースを作ることができればと考えています。

〈学生に「ベンベルグ」の授業/素材を伝えることの重要性〉

 旭化成はこのほど、文化服装学院服飾研究科でオンライン授業を行った。授業は同学院からの要望を受けて数年前から取り組んでいるが、新型コロナウイルス禍を受けて「ベンベルグ裏地ミュージアム+」から配信した。約70人の学生にキュプラ繊維「ベンベルグ」の特性などを説明した。

 同学院はベンベルグ裏地の使用を推奨しているが、服飾研究科の相澤雅美専任講師は「学生の裏地知識は不十分」と捉え、同社に授業を依頼した。旭化成は「専門家が素材の特徴や特性をしっかりと教えることでベンベルグ裏地の理解が深まる。当社にとっても意義は大きい」と話す。

 授業では着用試験や静電気試験なども実施したほか、欧州で販売されているベンベルグ裏地を使用した製品も見せた。学生は高級衣料品を見る機会がまだ少なく、興味津々だったようだ。学生からは「裏地がシルエットにも影響するのを知った」「店頭で衣料品に使われている素材を確かめたい」といった声が上がった。

 同社は青山学院大学の「感性ビジネス講座―ファッション産業のフロンティア」という講座で「旭化成ベンベルグの伝統と未来」と題した講義(90分)も行った。この講座はファッション関連企業が講義を行う形式で実施されており、コーディネーターの日本ファッション産業人材育成機構から声が掛かった。

 新型コロナ禍が続いているため、リアルではなく、あらかじめ録画してリモート配信で実施した。パフォーマンスプロダクツ事業本部マーケティング総部繊維マーケティング室の2人が講師を務め、「旭化成について」「ベンベルグのサステイナビリティー」などを説明した。

 受講した学生は、同大学全学部の2年生から4年生の250人。学生からは「旭化成がキュプラを世界で唯一生産している会社だと知った」「サステイナビリティーの意味が分かった」「アパレル業界で最も大切なのは素材だと気が付いた」と言った反応が返ってきた。