産資・不織布 通信(90)/東レ エアバッグ事業/次世代狙いの開発推進

2021年12月20日 (月曜日)

 東レはエアバッグ用ナイロン66事業で、国内外に生産拠点を構えグローバルな拡大戦略を推進してきた。

 現在、原糸生産を日本、タイ、メキシコの3極で、エアバッグ布の織布を日本、タイ、中国、チェコ、インド、メキシコの6極で、縫製をチュニジアで行っており、これらの拠点を駆使しグローバルに拡大するエアバッグ需要を取り込んできた。

 2020年度は新型コロナウイルス禍に見舞われ、急成長にブレーキがかかってしまったものの、下半期以降は自動車業界の復調に伴いエアバッグ事業も急回復。国内外の全拠点をフル生産に戻した。

 21年度を迎えると、寒波の影響で米国のナイロン66原料メーカーがフォースマジュール(不可抗力)を表明。原料を手当てできなくなり「作りたくても作れない状況を強いられた」。

 原料問題は改善されつつあるものの、先行きを見通しにくい状況が続いているため、「この先、どう推移するのかを注視したい」としている。

 さらに、原燃料の急騰によるコストアップ、半導体不足などに伴う自動車生産の失速などで再び厳しい局面を迎えている。

 21年度下半期は「値上げを最重点課題に取り組む」としており11月上旬、コストアップを転嫁するための値上げを表明。ナイロン66原糸、基布をともに12月出荷分から20%前後値上げする。

 同社はこの間、海外拠点を中心に原糸生産、織布、縫製で大型投資を行い、グローバルに適地生産・適地販売ができる体制を構築してきた。

 今後も各拠点での営業活動を改めて強化するとともに、縫製企業を傘下に納めた効果を次世代エアバッグの開発に反映させたい考えだ。

 特に、自動運転の浸透に伴い普及が見込まれる新タイプエアバッグ向けの開発を重視しており、「さらにコンパクトなエアバッグを強い糸、基布でどう実現するか」をターゲットにチュニジアの縫製子会社とも連携し開発に取り組む。

 エアバッグ布でも、環境やSDGs(持続可能な開発目標)が注目を集めているとし、環境に配慮した取り組みを進める。製造工程におけるCO2排出量の削減を強化するとともに、バイオ原料の使用やエアバッグ布のリサイクルも検討する。

 エアバッグ事業における大型投資は一巡したことから、次は原糸生産・織布の一貫体制でかなりの競争力を持ち、北米の巨大マーケットに対応する「メキシコを増やすことになる」。