特集 「産業資材向け繊維機械」/多様な素材を安定生産/ピカノールとエディー/福原産業貿易/イズミインターナショナル/ストーブリ/イテマ/伊藤忠システック

2021年12月20日 (月曜日)

 先進国型の繊維産業では、産業資材用途のウエートが高くなる傾向があり、日本でも同用途への注目が高まっている。近年は新型コロナウイルス禍の中でも堅調に推移する用途としても注目され、新しい柱を創るために資材分野を狙う企業も増えている。日本には高機能・スーパー繊維に強みを持つ素材メーカーも多く、今後さらに川中が広がっていく土壌もある。本特集では、各社の産業資材用繊維機械を紹介する。

〈ガイドレス式で広幅化/多様な素材・品種に対応/ピカノールとエディー〉

 ピカノール(ベルギー)の日本総代理店を務めるエディーは、産業資材用の提案に力を入れる。産業資材用は新型コロナウイルス禍の影響を受けず堅調に推移しており、レピア織機の基幹機種「オプティマックス―i」を軸に、540センチ幅のガイドレス式レピア織機の提案も強めていく。

 オプティマックス―iはさまざまな糸種に対応するとともに多様な緯入れが可能で、衣料、産業資材、工業資材、農業資材など幅広い用途に対応する。生産性の高さや安定性、デジタル技術による扱いやすさなども評価が高く、日本での産業資材用の販売は今年も堅調に推移する。

 緯糸挿入方式はガイド式とガイドレス式(フリーフライト)がある。ガイドレス式は高い汎用性や経糸への影響が少ないなどの特徴から注目を集めるが、今年は要望が多かったさらなる広幅化も実現した。6月に開かれたITMAアジアでは540センチ幅のガイドレス式レピア織機を発表し、日本でも提案を強めていく。

 世界的な需要拡大から、イーペルの基幹工場はフル生産が続く。今年の生産台数は1万台に達する見通しで、日本への納期は約8カ月になっている。エディーは来年に向け、産業資材用の提案をさらに進めるとともに、デニム用にも力を入れていく。

〈好調続くマットレス用途/貼付薬基布や自動車も堅調/福原産業貿易〉

 福原産業貿易の丸編み機が資材用途でも好調に売れている。マットレス表皮材向け編み機は海外を中心に高い評価を得ている。

 マットレス表皮材の編み立て用に販売しているのは口径38インチ・20ゲージの電子柄編み機が中心。キルティング調の編み地を生産できる。さらにユーザーの要望に応じて、よりハイゲージのタイプも用意するなどニーズに応じた機種提案が強みとなる。

 世界的にマットレス表皮材は織物から編み地への転換が進む。織物に比べて伸縮性があり、生産性も優れることが理由だが、同社の編み機を使うことで多様な柄表現ができることも評価が高い。このため編み機の販売もこれまでトルコ向けが多かったが、最近では中国にも広がってきた。

 資材用途では貼付薬の基布向け丸編み機も安定した需要が続く。また、両面編みを応用したブラッシュインターロックはスエード調の編み地となり、自動車の天井材などで採用が増えた。このためブラッシュインターロック向けの編み機も堅調な販売となっている。

〈炭素繊維やガラス用に強み/炭素繊維用ラボ機開発/イズミインターナショナル〉

 イズミインターナショナル(大阪市北区)は、ガラス繊維や炭素繊維など高機能繊維用の繊維機械に強みを持ち、テンション制御装置「TOP1000」「TOP5000」や、フラットヤーンの緯糸挿入用フィーダー「WF―510」などを展開している。特にガラス繊維用のテンション制御装置は、台湾や中国などガラス繊維織物の主要生産国で多くの実績がある。

 ガラス繊維用の装置は堅調に推移しており、足元では来年3月まで生産が埋まっている。ガラス繊維の市場は電子基板を柱に伸び続けている。近年は糸の細繊度化、織物の薄地化が進んでいることに伴い、製織に関わる機械には高度な技術が求められるようになった中、張力制御技術や装置の安定性などが高い評価を得ている。

 炭素繊維用では、新商品として扱いやすいラボスケールのサイジング装置を開発した。炭素繊維用の機械は、欧米向けが主力で、日本でも研究機関や大学などに採用されている。新たな取り組みとして開発を重視する日本企業にも紹介していくため、12月1~3日に東京ビッグサイトで開かれた「先端材料技術展」にも出展した。同展では、ラボスケールのサイジング装置のほか、卓上ワインダーや炭素繊維の毛羽や幅を検知するアナライザー、テンションコントロール装置なども紹介した。

〈TF20新機種開発/より導入しやすい形に/ストーブリ〉

 ストーブリは、産業資材用機械「TWS(テクニカル・ウィービング・システム」シリーズをドイツで生産する。この中でダブルレピア織機「TF20」への注目が高まっており、今秋も欧州で販売が進んだ。

 TF20は、1998年にストーブリグループに加わったションヘルの技術を生かして開発した産業資材用の織機。炭素繊維やアラミド繊維、ガラス繊維などさまざまな糸に対応し、スペーサーファブリックや3D織物などの製織が可能。コンベアベルトやフィルター用などの厚地のほか、複合スペーサーファブリックなどさまざまな織物に対応できる。

 繊維機械の市況が低迷した2018、19年はドイツ工場の生産も落ち込んだが、V字回復のけん引役となったのがTWSで、欧州市場を中心に導入が進んでいる。

 現在、TF20の新たな開発に取り組んでおり、ユーザーのニーズにより柔軟に対応できる新機種を間もなく発売する予定。オプションをそろえてダブルレピアやシングルレピア、ドビーやジャカード、クリールの有無などを選択できる形にするとともに、織機のコンパクト化などより導入しやすい形とする。現状の販売は欧米が中心だが、日本でも超厚地織物や多層織物を得意とする織機として新機種の提案を進めていく。

〈強み異なる多様な機種/捨て耳削減機構導入へ/イテマ〉

 イテマの日本法人、イテマウィービングジャパンは、産業資材製織に向けて旗艦機であるレピア織機「R9500」の産業資材向け仕様のほか、「イテマテック」ブランドで展開するレピア織機「ヘラクレス」「ユニラップ」など多様な機種をそろえる。それぞれの異なる強みを生かし、産資分野の多様なニーズの掘り起こしを進める。

 R9500は汎用性の高い緯糸挿入で産資でも豊富な実績を誇る。一方、ヘラクレスは生産品種に応じて緯入れ方式を積極と消極に切り替えができる。経糸張力は最大4・5㌧まで対応し、強力筬打ちによる重布製織で威力を発揮する。ユニラップは片側レピア織機としても使用でき、特に扁平糸もよれずに挿入できるため、特殊織物の製織に使える。そのほか、圧倒的な緯入れ安定性が強みのプロジェクタイル織機「P7300HP」も引き合いは多い。

 レピア織機の捨て耳削減機構「ⅰセーバー」を産資製織用でも導入を進める。捨て耳を半減できるため、高価な糸を使う高性能繊維の製織では大きなコストダウン効果が期待できる。

〈メタグの細幅織機販売/超厚物の製織可能/伊藤忠システック〉

 伊藤忠システックは、産業資材用繊維機械の取り扱いを拡充する中、今年からメタグ(イタリア)の細幅織機の販売を開始した。超厚地織物の生産が可能で、船舶のスリングベルトなどの生産にも適する。

 メタグの細幅織機は、厚手の重布に特化して開発されており、超厚物の製織などに特徴を持つ。20ミリ程度の厚さの織物も生産できる。軽量化や安全性などの面で鋼線からスーパー繊維への置き換えが進む船舶スリングベルトのほか、建築資材用などにも適する。

 織機の仕様は、それぞれのニーズに合わせて柔軟に対応する。緯入れ方式はニードルだけでなく片側レピアにもでき、筬幅は370~620ミリなど生産する品種・用途に応じて電子ドビーやボビン式耳綴じなどの選択肢を用意する。日本での提案は今年から始めたが、新しい用途展開を考える企業を中心に好反応を得ていると言う。

 伊藤忠システックは、今後も産業資材用の繊維機械に力を入れていく考えで、ドルニエやメタグの織機だけでなく、染色整理仕上加工機などを含めて提案を進めていく。