特別インタビュー 東レ 日覺 昭廣 社長(後)/施策の成果出す年に

2022年01月05日 (水曜日)

  ――東レにとって2022年は中期経営課題の仕上げの年です。

 設備投資をはじめ、元々中経で取り組む予定だった施策は着実に進められたのではないかと考えています。新型コロナウイルス感染症の拡大によって遅れが生じたのも事実ですが、繊維やフイルムなど多くの事業が軌道に乗ってきた感があります。今年はきちんと成果が出せると思っています。

  ――繊維事業はサステイナビリティーがポイントとのことでしたが。

 天然繊維は現在も生産量が限られ、食糧問題や気候変動などを考慮すると生産量が大きく伸びないのではないでしょうか。そのような意味でも合成繊維は必要ですが、サステイナビリティー対応は欠かせません。東レの繊維事業でもまずリサイクルにしっかりと取り組んでいきます。

 ペットボトル再生ポリエステルでは、サステイナブル社会の実現を目指すための事業ブランドである「&+」(アンドプラス)が順調に伸びているほか、バイオ由来ポリエステルの注目度も非常に高いと言えます。今後もこれらを積極提案することでシェアを取る方針で、アンドプラスは能力増強を検討しています。

 高機能化・高付加価値化も重要視しており、複合紡糸技術の「ナノデザイン」を生かしていきます。衣料分野での展開はもちろんですが、それ以外にも応用できる用途や分野は広がっていくでしょう。これからはいろいろな仕掛けを行っていきます。

  ――炭素繊維複合材料事業はどうですか。

 航空機用途は新型コロナ禍の負の影響を受けましたが、そのほかの風力発電翼用途やスポーツ用途、圧力容器用途などは好調です。航空機需要の低迷が続く中でも他の用途・分野の底上げによって炭素繊維複合材料事業の黒字浮上を果たし、航空機用途の回復後に利益が積み増せる体制を整えます。

 肝心の航空機用途の復調がいつになるのかは明確なことは言えませんが、今年はある程度人の動きが活発化し、航空機需要も23年には戻り始めるのではないかと期待しています。逆算すると当社には今年中ごろには注文が入ってくる可能性があり、停止中の工場を早い段階で再稼働させるなど準備を整えます。

  ――中経に限らず、サステイナビリティー対応はより重要になりますね。

 18年7月に「東レグループサステナビリティ・ビジョン」を策定しています。50年に向け東レグループが目指す世界や30年度に向けた数値目標を盛り込んでいます。当社はグリーンイノベーション事業拡大プロジェクトを推進しており、目標達成に向けて着実に進んでいきます。