ファッション消費をどう読む  アパレルトップインタビュー2022 1(1)オンワードHD 社長 保元道宣 氏

2022年01月11日 (火曜日)

基幹ブランド再定義

 ファッション消費は昨秋から回復基調となっている。昨年来、不採算事業の撤退など構造改革を断行した大手アパレル企業は、攻めの経営へシフトし始めた。新型コロナウイルス禍は3年目を迎え、ファッション消費の潮目は変わるのか。まずはオンワードホールディングスの保元道宣社長に話を聞いた。

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  ――緊急事態宣言が繰り返された昨年を振り返ると。

 年初から9月末までは厳しい市況が続いた。緊急事態宣言が解除された10月以降は緩やかに回復基調となっている。外出する消費者も増え、11月の後半から気温が下がったことで重衣料も動いている。冷え込んでいた消費マインドは変わりつつある。

  ――構造改革の進捗(しんちょく)については。

 不採算事業からの撤退といった“外科手術的”な構造改革は(国内外で)8割程度完了した。ただ、継続する既存事業においても改革は必要と考えている。新型コロナ禍における服の需要が減ったことで、在庫の圧縮や仕入れの抑制も継続する。新型コロナ禍の状況にもよるが、需要と供給のバランスを見て、安易な値引き販売をしない量を生産する。

  ――一方で、デジタル技術で企業を変革するDXを推進した。

 商品在庫の完全一元化という意味で、オンラインとオフラインの融合を掲げたOMO型店舗の出店を進めている。昨春に仕組みが完成し、今春には日本全国の店舗(実店舗、自社EC)からオンラインで購入できるようになる。地方ではOMO型店舗の反響が大きい。現地に出店していない当社製品を取り寄せ、試着できるので喜ばれている。

  ――拡大した自社ECについては。

 買う場所は顧客が決める。単に自社ECへ送客する形ではいけない。グループ全体のEC化率は3割を超えたが、今後は実店舗の魅力を高めることが必要だ。今後も5~7割程度は実店舗の売り上げになるだろう。ECだけではなく、実店舗のDXが重要になる。より便利で楽しくなる実店舗が求められる。

  ――百貨店への再出店を考えているのか。

 構造改革で撤退はしたが、百貨店、ショッピングセンター(SC)への再出店もあり得る。顧客の利便性や店舗の収益性を含め、総合的に判断する。百貨店と新しい取り組みを開始する可能性もある。新型コロナ禍という危機に直面したことでECの存在感が増したが、顧客ファーストで実店舗の出店を考えたい。

  ――新規事業で若手社員を起用している。

 若手社員が活躍、成長できる場を用意した。消費者にネットで直販するD2Cブランドは少数精鋭で展開できることもあり、親和性のある20~30代社員を積極的に起用した。キャリアパスという観点からも、チャレンジさせることは重要だ。D2Cの婦人服「アンクレイヴ」は10億円規模に拡大し、同じく「ハッシュニュアンス」も5億円規模となった。今後もこうしたブランドを増やす。

  ――「23区」など基幹ブランドの状況は。

 基幹ブランドにおいては展開から25~30年を経過し、次世代に向かってどう訴求するのかを再定義する。百貨店向け婦人服の「23区」「組曲」「ICB」などが該当する。より差別化することで、似たような商品を作らない。既存の顧客を大事にしながら新規のユーザーを獲得するため、試行錯誤している最中だ。