繊維街道 立志編 ヤマモト/オークラ商事 代表取締役社長 山本治彦 氏( 下)

2022年01月13日 (木曜日)

「アパレルX」で描く世界進出の夢

 2012年にオークラ商事、ヤマモトの社長に就任した山本は、IT活用をさらに推進する。

 会社の基幹システムの構築を、社長がプログラミングから手掛けるのは異例でしょう。その強みを最大限に生かします。

 15年には、独自の販売管理システム「iTeams」の外販をにらみ、グループ3社目となるIT会社「デザインX」を設立。このころには服飾資材の販売事業は黒字体質に改善され、一時は35人にまで減った社員数も50人に戻りました。ファッション学校卒の社員が増え、私の末弟も仲間に加わりました。人材も充実し経営基盤が整ったところで、かねて構想していたB2B向け服飾資材専用ECサイトの開発に取り組み始めます。

 17年、ECサイト「アパレルX」の開発に着手する。スローガンは「アパレル資材の調達プロセスを変える」。

 iTeamsの基盤を活用しながら開発を進め、半年かけて完成させました。単価、納期、色、サイズなどを検索し、即時に在庫確認できるように設計しました。

 18年の発表後は、それまで扱いが少なかった生地の引き合いが多くあったため、生地メーカーとの連携を増やし、生地と資材をまとめて注文できる利便性を打ち出します。送料の高騰も追い風となり、ユーザー数や注文数は順調に伸びていきます。

 新型コロナウイルス禍以降、テレワークの拡大に伴い、発注方法をファクスからインターネットに切り替えるケースが相次ぎました。需要が急増していたマスク用の資材を特集するといった取り組みも奏功し、ユーザーが加速度的に伸びたのです。

 20年10月には念願の外国版「アパレルX・グローバル」を立ち上げました。外国出身の社員を含めたチームを作り、グローバル事業として展開しています。

 アパレルXは21年12月時点で商品数9千点、アカウント数9千社を超えました。近々、iTeamsをアパレルメーカー向けに再編した「アパレルX・EPR」の提供を開始する予定です。今後はECにとどまらずSaaS(インターネットを通じて必要な分だけ利用できるサービス)の展開も狙っていきます。

 企業成長のためには、服飾資材業界を変革するぐらいの意識が必要と説く。

 私が家業に入って愕然(がくぜん)としたのが、仕事に誇りを持てない人の多さでした。海外流出が続く縫製業、テーラー業界の縮小…。確かに事業を取り巻く環境は明るくありません。それを変えるには、働く人たちがやりがいと経済的幸福を持てるようにする必要があります。

 そこで当社は「中小・中堅企業が大手SPAにも引けを取らないアパレルビジネスプラットフォームを提供する」というビジョンを掲げ、30年までにグローバルで1千億円の売り上げを目指します。服飾資材や生地、縫製サービス、製品・アクセサリー、ITサービスの提供を通じ、小規模事業者でも大企業のような事業を推進できる経営基盤を築いていきます。

 22年は新型コロナ禍で中断していた海外支社・物流拠点の開設を実現させたい。業界にとっても合従連衡は必要だと思うので、M&A(企業や事業の合併・買収)を前向きに検討します。ベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達も視野に入れています。