ベトナム・ビナテックス/繊維業、上流部門の収益好調/売上高、利益で19年超え、4波直撃も

2022年01月20日 (木曜日)

 ベトナムの繊維業界最大手、国営ベトナム繊維・衣料グループ(ビナテックス)の2021年連結決算は、売上高・税引き前利益がそろって新型コロナウイルス禍前の19年実績を上回る見通しになった。糸などを製造する上流工程の紡績部門が、国際相場上昇を追い風に輸出を大幅に伸ばし、感染第4波の影響で一時生産停止や大幅な減産を余儀なくされた下流工程・縫製部門の不振を補った。

 ビナテックスは昨年12月下旬に記者会見し、21年の連結売上高が前年比10・7%増の16兆4360億ドン、税引き前利益は約2倍の1兆2千億ドンになる見通しだと明らかにした。

 税引き前利益は19年比でも70%増となる。

 新型コロナウイルスの影響が最も大きいとみられた繊維業界で、最大手企業の業績好調をけん引したのは紡績部門だ。昨年春以降、布地の原料となる綿花の国際相場が供給不足から上昇し、化学繊維を含めた繊維相場も連動して高騰した。同社は6月と10月に系列会社フバイ繊維とビナテックス・フーフンの2工場で最新鋭の生産ラインを稼働させ、中国向けなどの輸出を拡大した。

 ビナテックスグループを含めたベトナムの繊維業界の21年の輸出額は前年比11・2%増の390億ドルで、19年比では0・3%増になる見通しも明らかにした。

〈収益貢献、従来の20%から50%以上に〉

 カオ・ヒュー・ヒエウ社長は記者会見で、第3四半期(7~9月)にベトナム南部各省市で実施されたロックダウン(都市封鎖)や「工場隔離」でサプライチェーン(供給網)が途切れたことで、取引先の一部は注文を他国に変更し、大損害を被った企業が少なくないと指摘。「21年は当社にとっても極めて困難な1年だった」と振り返った。

 そうした中でもビナテックスが好業績を維持できた要因について、ヒエウ氏は「グループ各社の効率的な工場運営と、とりわけ紡績部門が好調を支えてくれたおかげだ」と述べ、繊維の上流工程から下流工程までを運営する総合力が発揮できたとの認識を示した。

 繊維の生産ラインは、多くの労働者が集まる縫製工場とは対照的に自動化・省力化が進んでおり、社会隔離措置の影響はほとんど受けなかった。

 同社の収益は従来、80%前後を縫製部門、20%を紡績部門が稼いでいたが、21年は売上高・利益ともに紡績部門の貢献が50%以上になる見通しだ。同社は過去5年間で紡績など上流工程の自動化や高付加価値化への投資を続けてきたという。

 22年以降も繊維相場の好調が続くとみられることから、同社の22年のグループ収益は21年比で8%増を目標に設定。ヒエウ氏は、上流工程を含めたグループ内のサプライチェーンと品質の強化に取り組む方針を示した。

〈多くの企業は苦境、休職組合員3.5万人超〉

 繊維業界では、上流工程を持つ一部の大企業と、縫製に特化した中小企業の格差が広がっているもようで、多くの業界企業の21年決算は厳しい結果が予想されている。

 ビナテックスの会見に同席したベトナム繊維・衣料労働組合のファム・ティ・タイン・タム副委員長によると、第3四半期に実施されたロックダウン(都市封鎖)や工場隔離の影響を受けた加盟企業は49社で、このうち17社が生産停止を迫られた。ベトナム政府が厳しい社会隔離措置の緩和に踏み切った10月以降、生産は徐々に上向きつつあるものの、他国を含めた競争は激しい。

 工場閉鎖の影響で2~2カ月半の休職を余儀なくされた労働者は3万5023人に上り、いずれも収入が大幅に減り、困難な生活を強いられている。企業側も従業員を工場に寝泊まりさせる費用や、休職する従業員への手当支給が必要になり、大幅なコスト増加となった。

 同労組は労働者や企業に対する349億ドンの支援を実施しており、この中には組合員への加工食品や野菜などの食料支援が含まれるという。

〈中国の人権問題も影響か〉

 ビナテックスの好業績をけん引した国際繊維相場上昇の背景として業界関係者が指摘しているのが、中国の人権問題との関係だ。大手総合商社の関係者はNNAに対し「豪州の研究機関が20年3月、中国政府が新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族に対して強制労働を行ってきたとする報告書が低迷していた相場反転のきっかけだった」と話す。

 中国は世界の綿花生産量の3割弱を占め、このうち同自治区は8割以上を生産する最大の綿生産地だ。だが、同報告書をきっかけに、米国政府が同自治区で生産された綿製品などの輸入を禁止する措置を発動。欧州連合(EU)も民間企業に対して、同自治区からの調達を見直すよう呼び掛ける議案を可決し、スウェーデンのアパレル大手H&Mや、ドイツのスポーツ用品ブランド「プーマ」などが相次ぎ見直しを表明した。

 このため、各国のアパレル企業が生産を委託している中国国内の縫製企業などが、生糸や布地などの原材料の調達先をベトナムのほか、インドネシア、インド、パキスタンなどに変更し、これらの国からの中国向け輸出が増加した。これに合わせて20年春ごろから綿花の国際相場も上昇基調を続けている。[NNA]