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不織布新書22春(10)/アジアの不織布生産/右肩上がりで成長/中国の存在感圧倒的/旭化成アドバンス/ヤギ/レンチンググループ

2022年03月18日 (金曜日)

 アジアの不織布産業が右肩上がりで成長している。昨年20周年を迎えたアジア不織布協会(ANFA)によると、アジアの不織布生産量は2000年92万トンに過ぎなかったが、20年には695万トンにまで拡大した。

 けん引するのは中国だ。1990年代には日本とほぼ同じ規模だったが、急成長を遂げ、2000年の36万トン強から20年には527万トンと約14倍の規模になった。アジア生産の実に76%を占めている。日本の不織布メーカーは「量的な中国のプレゼンスは、アジアだけでなく世界でも高まっている」と分析する。アジアでは韓国が00年13万トンから20年27万トン、台湾は00年11万トンから20年19万トン、インドは08年13万トンから51万トンに拡大した。

 一方、日本は30万トンから34万トンの間で20年間、増減を繰り返しながら、アジア進出も活発化させてきた。日本不織布協会がまとめた日系企業の海外生産(アジア中心)は20年で32万トン強。国内生産と同等規模にある。

 これもアジア生産の増加に結び付いているが、今後は「中国で量から質への転換が起こるかどうかがポイントになるだろう」との見方も示すところは多い。

 日本の不織布メーカーは中国などアジア製に比べて高品質、高付加価値品に強みがある。これは衣料用繊維などと同じだが、中国の技術開発力が向上した際、どのように対抗できるのか。注目される。

〈付加価値品を拡大/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスは旭化成のスパンボンドやキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」などを販売するが、今後は「後加工などで付加価値を高めた原反や製品ビジネスで不織布事業を拡大する」との方針を掲げる。

 新型コロナウイルス禍に伴いスタートした不織布、耳ひも、ノーズワイヤーのセット販売が一時、絶好調で推移したほか、除菌シート「ソフライト」でも2020年度は大幅な拡販を達成した。

 ソフライトはレーヨン・ポリエステルによる3層構造の不織布によるシートで、コロナウイルスに効果を発揮することが確認されており、量販店バックヤードなどに浸透しつつある。

 フラッシュ紡糸不織布「タイベック」による防護服などの販売も好調で、不織布を展開する繊維資材事業部は20年度、売上高と利益で過去最高業績を更新。21年度は売上高で過去最高を見込んでいる。

 22年度からスタートさせる新中期3カ年計画では、耐炎繊維「ラスタン」による産業資材向け不織布、吸音材向けの高機能不織布「プレシゼ」、耐候性に優れた印刷基材「ペクトリー」などの拡販を計画しており、自社で加工を施し付加価値を引き上げた商材によるビジネス拡大に重点的に取り組む。ラスタン不織布を加工する拠点構築をタイで進めており、大ロットの受注をこなす加工場に育成する。

〈産資や衛材の開拓進展/ヤギ〉

 ヤギは、主力事業である衣料品関連に加え、産業資材や衛生材料分野の開拓を方針に掲げている。この方針を具体化させる商材が、ナノファイバーメンブレン(薄膜)「ナノクセラ」と、3D構造体不織布「エンカ」だ。

 ナノクセラを用いた高機能マスク「エアクイーン」は新型コロナウイルス禍の発売以降、累計販売枚数が100万枚を超えた。大手通販サイトや医療従事者向けサイト、ドラッグストア、量販店などで販売しており、その軽さや高通気性、フィルター性能、付け心地の良さなどが消費者から高く評価されている。最近は企業向けOEMの依頼も増加傾向という。

 次のステップとして投入したのが生分解性タイプ。ノーズやひもにも生分解性の素材を使い、サステイナブルな商材として訴求する。

 ナノクセラ製の果実袋を販売する。2年間の実証試験では、通気性の高さとフィルター性能により、従来の果実袋よりも病害虫被害が少なく、糖度が高まることが確認できた。

 エンカは、人工芝のアンダーパッドとして採用が進む。高い排水性とクッション性が評価されている。

 豪雨の際に人工芝にまかれたゴムチップが外部に流出し、それが廃プラスチック問題として指摘されているが、エンカの高排水性はこの現象の発生確率を低減できる。

〈カーボンニュートラル実現/レンチンググループ〉

 レンチンググループは、カーボンニュートラルを実現したリヨセル繊維を展開している。「不織布用原料での達成は初めて」とされる。環境特性に加え、ドレープ性や吸水性といった特徴も兼ね備える。顧客の評価は高く、昨年に販売を始めて以来不織布用途でも注目を集めている。

 同グループのリヨセル繊維は、再生可能エネルギーの利用や生産効率向上などによって製造でのCO2の排出量を削減しており、その排出量は一般のリヨセル繊維の約3分の1。森林再生プログラムへの投資をはじめとする活動を進めることでカーボンニュートラルを達成した。

 再生可能エネルギーの活用などは継続的に取り組み、オーストリア北部に設置している太陽光発電を試運転中。発電量は1時間当たり5500メガワットで、同国の平均的な家庭1700戸分の使用電力が賄える。

 なお、カーボンゼロのリヨセル繊維は、「混率をしっかりと守った上で、申請してもらえれば、製品などに『ヴェオセル』ブランドを付けることができる」としている。

〈用途別 不織布生産/四大分野で9割弱〉

 不織布の用途は多岐にわたる。用途別に生産量を分析することで見えてくることがある。

 経済産業省の生産動態統計によると、2021年の生産量で最大用途は生活関連用。全体の24・7%を占める。続いて医療・衛生用24・4%、産業用21・9%と続く。この三大用途で全体の7割強を占め、車両用の14・9%を含めると90%弱を占める。それ以外は土木・建築用6・1%、その他4・3%、農業・園芸用0・5%、衣料用0・5%。車両用を含めた4大用途が不織布を大きく左右する。

 21年は前年に比べ生活関連用3・8%減、医療・衛材用7・3%減、産業用10・3%増、車両用4・6%増と明暗を分ける形となった。1、2位を占める生活関連用、医療・衛材用の落ち込みが不織布生産の伸び悩みにつながった形だ。

 これを12年と比べると違う面が見えてくる。生活関連用が17・7%増となる一方、医療・衛材用は26・6%減。生活関連用で不織布のすそ野が広がっていることが分かる。一方、マスクやドレープ(覆布)、ガウンなど新型コロナウイルス禍で医療用は急増したが、紙おむつや生理用品などの衛生材料が落ち込んだため、医療・衛材用が落ち込んだと推測される。