特別インタビュー/日本メンズファッション協会/理事長 八木原 保 氏/紳士業界に夢や元気を/新たな一歩を踏み出す
2022年03月28日 (月曜日)
日本メンズファッション協会(MFU)は、1960年の設立以来60年以上にわたって「夢」「勇気」「元気」「希望」「感動」を紳士業界と社会に届けてきた。昨年には「ベストドレッサー賞」で50回、「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」で40回という節目を終え、2022年度から新たな一歩を踏み出す。MFUの現在とこれからを八木原保理事長に聞いた。
――MFUにとって21年度はどのような1年でしたか。
これはMFUに限ったことではありませんが、緊急事態宣言の発令やまん延防止等重点措置の適用をはじめ、20年度に続いて新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄(ほんろう)された1年だったと言えます。人の流れが抑えられ、さまざまな事業やイベントも中止に追い込まれました。
そうした状況下ではありましたが、MFUは6月の「第40回ベスト・ファーザー イエローリボン賞」を皮切りに、「グッドエイジャー賞」「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー」を開催し、12月の「第50回ベストドレッサー賞」を無事に開くことができました。各種セミナーも実施しました。
――新型コロナ禍の下での開催に迷いはなかったのでしょうか。
「開催を取りやめた方が良いのではないか」という意見もあって迷いましたが、このような時だからこそ皆さんを元気付けたいという思いが勝りました。政府や東京都のガイドラインを守りながらの開催でしたが、明るい話題、そして元気や夢、勇気、希望を届けられたと考えています。
昨年6月のベスト・ファーザー イエローリボン賞は九つの都道府県で緊急事態宣言が延長された中での開催でした。これが試金石となって他のイベントの実施につながりました。MFUの果敢な挑戦は各方面から高く評価されました。もし各イベントを中止していたら悔いが残っていたでしょう。
――4月から新年度です。これからどのように歩んでいくのですか。
社会貢献が一番であると考えています。あしなが育英会へのチャリティーもその一つなのですが、30年以上続けている活動であり、このような団体は他にはないと自負しています。SDGs(持続可能な開発目標)を含め、これまで行ってきたことを精査した上で、今後もMFUができることに徹底して取り組みます。
同時に、少し元気をなくしている感のある紳士服業界を盛り上げていきたいと思っています。協会名には「ファッション」が残っていますが、衣料品に限るのではなく、化粧品関連や住宅関連などの他産業・異業種を合わせたライフスタイル全般で「紳士業界」を活性化することを志向していきます。
――業界を元気付けるには。
新型コロナ禍やビジネススタイルの変化によって中小企業やオーナー企業はもちろん、大企業や専門店を問わず、みんな厳しい状況にあると言えます。何十年もかけて作り上げたビジネスモデルが崩れてしまったからです。各社が新モデルを模索している段階なのですが、答えが出るには2、3年必要かもしれません。
今は気分的にめいっている部分があるので、イベント開催やセミナー・勉強会の実施が少しでも高揚感につながればいいと考えています。幸いにしてMFUには前向きな姿勢の企業が多く、新しいことに積極的にチャレンジしています。少し時間がかかったとしても何かがつかめると信じています。
――ベストドレッサー賞は50回を数えました。これからの同賞は。
これまでの50年間を振り返ると、その時代の日本を代表するようなそうそうたる人たちが受賞しています。MFUをよく知らない人からは「有名人を集めているだけ」という声も聞こえてくるのですが、決してそのようなことはなく、きちんとした理念を持っている人を選んでいます。
第50回のスポーツ部門で選出された車いすバスケットボール銀メダリストの鳥海連志選手やインターナショナル部門で選ばれたサンマリノ共和国のマンリオ・カデロ特命全権大使もそうです。理念を持つ人が受賞することで、MFUの考えも周りに浸透していくと期待しています。
――今後の課題については。
一つは会員数を増やすことです。そのためにも今まで以上に魅力のある団体に成長していかなければならないでしょう。各社に対して常にわくわく感を持ってもらい、「会員になって良かった」と思われるように努力を続けていきます。マーケティング研究会の意義を高めることなども方策になるでしょう。
SDGsへの対応も課題です。ベストファーザー、グッドエイジャー、いい夫婦の日、ベストドレッサーの各事業は全てSDGsに関連していますので、今年もきちんと開催したいと思っています。グッドエイジャー賞は今年が20回の節目になるので、楽しみの一つでもあります。
〈略歴〉
やぎはら・たもつ ジム代表取締役会長兼社長。MFU理事長のほか、東京ニット卸商業組合理事長、原宿神宮前商店会会長、日本アパレル・ファッション産業協会理事、西印度諸島海島綿協会理事長、天然繊維循環国際協会理事長などを務める。2011年黄綬褒章、20年旭日双光章受章。