ジーンズ別冊22SS(1)/循環型ジーンズに活路 日本発の付加価値にも需要

2022年03月28日 (月曜日)

 新型コロナウイルス禍を経て、消費者は高付加価値のジーンズを求める傾向が強くなった。大量生産・大量廃棄という負のファッションサイクルを避けるためにも、長期間はける一過性のトレンドに左右されないジーンズが求められているようだ。ブランドによっては3~6万円のジーンズが売れ筋に浮上。毎シーズンはき替えるマインドから、1本のジーンズを大切に着用するスタイルへ変化している。

 その際、持続可能なコンセプトを盛り込み、Z世代や若年層に訴求するのが必須になってきた。米ブランド「リーバイス」は、リサイクルデニムとオーガニックコットンを採用したジーンズを22春夏シーズンに投入する。ジーンズの起源とされる品番の「リーバイス501」の一部で採用する方針。501でリサイクルデニムを使用するのは初めてになる。スウェーデンの繊維リサイクル企業、リニューセル社との取り組みで、リサイクルデニムとビスコースを交ぜた繊維「サーキュロース」とオーガニックコットンをミックスした生地を使用。リーバイスは以前からジーンズに再生繊維を使用する考えを明らかにしていたが、堅ろう・耐久性に問題があり、テストを続けていた。

 同ブランドを販売するリーバイ・ストラウスジャパンでは「コットンを改めて栽培する必要がなく、水使用量を削減できる。専用のタグを付属し、サーキュラー(循環型)ジーンズとして訴求したい」と説明する。価格は1万3千円前後になる予定だ。今後も501で採用比率を高め、効率的にリサイクルできるよう「単一繊維戦略に沿って開発、生産する」と話す。同モデルではスチール製のリベットを排除したほか、ポリエステル製のポケットや糸、ラベルなども改め、コットン100%の素材に切り替えた。単一繊維や天然素材を使うことでリサイクルを容易とし、結果的にサーキュラージーンズの普及に寄与すると言う。

 リニューセル社は、2012年から廃棄された繊維製品のリサイクルに取り組み、ストックホルム郊外にリサイクル工場を所有。そこで繊維廃棄物を原料にした生地「サーキュロース」を開発し、同素材を年間で最大4500㌧生産している。20年には米ナスダック市場に上場。現在は既存工場の10倍以上の生産規模を目指す第2工場を建設している。

 一方、セレクトショップ「パリゴ」を運営するアクセ(広島県尾道市)は、同社が監修するデニム製品「ジャパンデニム」の直営店を3月5日に開設した。商業施設のギンザシックス(東京都中央区)にオープンし、2~3万円台のジーンズが好調に推移している。19、20年に同館へ期間限定店を開設し、いずれも好評だった。ジャパンデニムは、行政と事業者が連携して備後圏域デニムを発信する「備中備後ジャパンデニムプロジェクト」事業を介し、発足した輸出振興プロジェクト。デニム生地と最終製品でそれぞれ商標登録し、19年3月から製品の販売をスタートしている。品質の高さに加え、小売り目線で監修しているのが特徴だ。

 今季は「08サーカス」「チノ」「ロキト」「エズミ」など16ブランドと協業し、計35品番を展開する。デニム生地では、素材見本市「ミラノ・ウニカ」に出展、製品では「トラノイ」へ参加している。新型コロナ禍で渡航は難しいが、デジタル技術を介し、バイヤーとの商談を実施。取引を継続している。今後も備中備後といった産地に好循環を促す考えだ。

 本特集では、ジーンズ市場に根付きつつあるアップサイクルの注目事例を交え、マーケットの現状に迫った。大量生産型のビジネスモデルから脱却を目指す企業やブランドを掲載した。