特集 アジアの繊維産業(14)/カケンテストセンター/アジア事業を再拡大へ/中国は納期短縮に注力

2022年03月30日 (水曜日)

 カケンテストセンター(カケン)は、アジア事業の再拡大に期待をかける。2022年度(23年3月期)も新型コロナウイルス禍の影響は残るとみるが、試験依頼が回復基調をたどる中国や南アジアの成長を狙う。中国では各拠点で納期短縮などを進め、南アジアは日本との連携を強化する。

〈対応試験項目の拡大を〉

 新型コロナ禍はカケンのアジア事業にも影響を与えた。21年度は感染拡大によってベトナムやインドネシア、バングラデシュなどはロックダウン(都市封鎖)の措置が取られ、カケンの各拠点も業務の一時停止を強いられたほか、インドのベンガルール試験室は業務開始時期がずれ込んだ。

 その一方、中国については、ASEAN地域などからの生産場の移転・回帰もあって、各拠点で試験・検査依頼が回復基調を示した。中国が海外事業のけん引役となった結果、21年度は全体で前年の実績を上回る水準で推移している(22年1月末時点)。

 22年度も新型コロナ禍の影響が残り、衣料品の市場も盛り上がりを欠いていることなどから、全体として厳しい状況が続くと予想している。ただ、試験・検査の依頼は中国を中心に回復基調をたどるとみている。

 中国は試験の内製化を推進して対応できる試験項目を増やすほか、納期短縮にもつなげる。上海科懇検験服務では、吸水速乾性で中国国家標準規格(GB規格)に対応する試験機を、寧波試験室ではゴム耐久性試験機などを導入する予定だ。

 強化を図りたいとするのがインドとバングラデシュだ。バングラデシュは日本との連携強化のほか、増員によってサービス力を向上する。両拠点ともに収益力アップに取り組む。ASEAN地域は着実な回復を見込んでいる。

〈窒素酸化物試験などに期待/ベトナム〉

 ベトナム試験室は、大手検査機関であるビューロベリタス(BVCPS)と提携し、日本市場向けの試験だけでなく、ベトナム国内で販売する際に必要な認定の試験も実施している。設備導入で対応の幅を広げており、繊維関連のほか、家具やプラスチックの試験も行っている。

 21年度は、7~10月にかけてロックダウンの措置が取られ、生産の中国移転があったが、抗菌性試験などが下支えして20年度と比較すると全体の試験件数は増えた。「生産地として重要視されていることに変わりはない」と捉えており、22年度も着実に数字を伸ばしたいとしている。

 来年度については特に窒素酸化物堅ろう度の試験に期待をかけている。同試験はこれまで日本に送っていたが、試験機を購入済み。使用する薬剤の手配を行い、「4~5月の試験開始を目指す」とした。昨年度と今年度ともに依頼が多かったことから需要は続くとみる。

 ベトナム政府が観光業の回復を急いでいるという観測があり、新型コロナ禍の影響は限定的にとどまると予想されている。

〈セミナーやCSR監査を/中国〉

 中国の青島試験室は、カケンの中国拠点では2番目の規模を誇る。ニットやインナーに関する試験・検査の依頼が多く、各種の機能性試験(吸水速乾性や接触冷感など)に対応している。機能性試験に関するセミナーの開催などにも積極的に取り組んでいる。

 21年3月に現在の場所に移転して1年が経過する。この間も試験依頼は順調に入り、新型コロナ禍前の水準にまで回復しているという。機能性試験の需要も底堅いが、特に抗菌性試験が増えているとしている。

 移転前はフロアが分かれていたが、試験室が広くなり、受け付けから試験、発送までワンフロアでの対応が可能になった。これによって効率化が図れるという。22年度は、リモートを含めたセミナーを再開する。セミナーでは試験機の説明なども行う。

 顧客が求めるのは納期の短縮とし、中国の検査機関と提携してその対応を図る。原燃料・原材料価格の高騰で、試験に使用する薬品の価格や廃液処理の費用も上昇している。試験・検査の拡大や自助努力で吸収したいとしている。

 大連試験室は、「他の検査機関の拠点は営業所としての活動」となっているため、大連では唯一の試験室だ。納期面などで優位性を発揮しているほか、「試験機が見たい」という顧客の要望にも応じることができる。吸水速乾性や紫外線に関する試験機も導入し、対応の幅を広げている。

 インナー・ファンデーション、パジャマ、セーターを中心にニット製品の試験・検査が多いが、水着やスポーツウエア、デニム関連などの扱いもある。昨年10月に所在地を移転した。21年度は20年度よりも試験依頼件数が上回るなど、順調に推移している。機能性に関する試験が増えた。

 22年度は新型コロナ禍で実施できていなかったセミナーを復活させたいとしている。洗濯表示類や洗い方などに関するセミナーの開催要望が多いほか、「中国の現地貿易会社は新入社員を積極採用している。新人教育のベーシックセミナーも行う」とした。

 同じく新型コロナ禍で中断を余儀なくされたCSR監査も増やしていく。監査ができる人材を育成するため、2人の研修を行っている。