特集 北陸産地(2)/サステ商品に注力蝶理/東レ/帝人フロンティア/旭化成アドバンス/双日

2022年03月31日 (木曜日)

〈サステ軸に取り組み強化/北陸品の輸出にも注力/蝶理〉

 蝶理は「サステイナビリティー」「輸出」などを切り口に、北陸産地との取り組みをさらに強化する。

 サステイナビリティーの総合コンセプト「ブルーチェーン」に沿って取り組みを強化する。リサイクル、植物由来など各分野で品ぞろえを充実させている環境配慮型素材の販売規模は今期で100億円を超える見通し。2025年には300億円を狙い、100社を超える「エコブルー」パートナーとの取り組みを強化していく。

 北陸産地から出る繊維廃棄物を回収し、河川補強材や自動車吸音材などに再利用する取り組みも始まった。現在は年間1200~1300㌧を出荷するが、さらなる拡大に向けて年間2千㌧規模の反毛スペースを押さえた。

 染色工程での環境負荷低減を実現する素材や原着糸にも力を入れる。原着糸はこの10年で約10倍の規模に拡大。今後は主力の自動車用に加え、衣料用途でも拡大する。

 北陸産地の商品を海外で販売していく取り組みも加速する。足元は中国市場向けが順調に推移し、欧米向けのスポーツやファッション用途も19年並みに回復した。「北陸の特徴ある商品の輸出をさらに伸ばしていく」(吉田裕志常務執行役員繊維本部長)考えだ。

〈19年並みに回復/北陸との開発継続/東レ〉

 東レのテキスタイル事業部門は今期(21年3月期)、19年並みの水準の見通しだ。スポーツ・アウトドアがけん引役で、国内・輸出とも回復した。ファッション用途はまだ動きが鈍いが、ユニフォームも病院白衣や学販などが堅調に推移する。

 北陸産地との取引量も順調に回復しており、来期は19年並みに戻す計画だ。ファッションなどの用途も回復させる。

 産地企業との開発をさらに強化する方針で、「日本で生産する糸を使いこなすには北陸産地の技術が欠かせない。運命共同体であり、産地と一緒に開発をやり続けていく」(佐々木康次テキスタイル事業部門長)とする。

 開発では特に「ストレッチ」「サステイナビリティー」などの切り口を重視する。ナノスケールで制御する複合紡糸技術「ナノデザイン」を使った開発にも重点を置き、天然繊維にない新しい風合いの開発に注力する。

 スポーツ×ユニフォーム、婦人ファッション×ユニフォームなどそれぞれの用途が持つ強みの融合のほか、ニットと織物の垣根を取り払った開発なども強化する。

〈ユニフォームなど拡大/来期は19年の水準に/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアの衣料素材本部は来期(23年3月期)、前年比10%の増収とし、19年の水準に戻す計画だ。環境配慮型素材を軸に海外のスポーツやユニフォームなどを伸ばす。

 今期は海外のスポーツ、インテリアSPA向けの機能素材販売やテキスタイル販売などが順調に推移しており、来期も引き続き拡大を狙う。加えて白衣、官需、企業別注などユニフォーム用途の拡大に注力する。機能素材を軸に各用途の強みを融合した開発・販売を強化するため、4月1日付で国内向けのスポーツを担当する課とユニフォーム部を統合してテキスタイル2部とする機構改革を実施する。

 スポーツ・アウトドアは欧米向けが好調だが、今後は中国向けも伸ばす。現在はニットが強いが、環境配慮型素材を軸に織物も拡大していく。

 原糸販売は、引き続き環境配慮型商品に力を入れる。足元ではファッション用途でも注目が高まっており、来期はさらに伸ばす。環境配慮型素材が占める比率は衣料素材本部全体で30数%(金額ベース)となり、スポーツでは55%、ユニフォームでは30%に高まっている。

〈来期は15%増収計画/エコセンサーを拡充/旭化成アドバンス〉

 旭化成アドバンスの繊維本部は来期(23年3月期)、前年比15%の増収を計画する。特に衣料用途を伸ばす考えで、裏地やインナーなども拡大を狙う。

 今期業績は19年の水準を超える見通しで、北陸産地との取引も回復した。けん引役はスポーツで、アウターや裏地なども回復した。来期は各用途で拡大を狙う中、「産地のスペースがタイトになっている。北陸としっかり連動してスペースを確保していくことがポイントになる」(橋本薫取締役専務執行役員繊維本部長)とする。

 商品面ではサステイナブル素材の開発に力を入れる。北陸との取り組みが柱となる「エコセンサー」は今期、前年比2倍の規模に拡大した。来期はさらに拡大する計画で、前年比20%増を狙う。現在はスポーツ用が柱だが、インナーやアウター、副資材での展開も広げていく。

 扱う環境配慮型素材も拡充する。旭化成の「ロイカ」のエコタイプや「ベンベルグ」のほか、リサイクル糸や生分解性糸、オーガニック綿糸、レーヨン、ジアセテートなど旭化成アドバンス独自の品ぞろえも拡充する。好調に推移するジアセテートは19年比約2倍の販売量となったが、来期も20%増を計画する。

〈生分解性エステルに注目/今夏、長繊維の展開も/双日〉

 双日の化学本部関西事業部は、環境配慮型素材の品ぞろえを強化している。環境配慮型のセルロース系に加え、合繊でもリサイクル、植物由来、生分解性の各商品を拡充している。

 足元ではファイバーパートナー(デンマーク)の技術を活用した生分解性ポリエステルへの注目が高まっている。現在は短繊維のみだが、ショートカットタイプや長繊維の開発も進めていく。

 ファイバーパートナーが提携する欧州やアジアの合繊メーカーで生産し、双日が日本で販売する。昨年春から提案を開始し、足元では自動車用や衛生材料用の不織布、寝装、紡績糸用途などで広がっている。北陸産地への長繊維の提案も計画しており、今夏ごろに試作品を出す目標を立てる。

 埋め立て環境下では646日で93・7%、海洋環境下では1071日で80・4%、都市下水環境下では241日で17・8%が分解される。バイオマス、二酸化炭素、水、メタンに分解され、土壌汚染のリスクがないことを確認しているという(米国ASTM基準)。