開発最前線2022 紡績のイチ押し素材(上)/シキボウ/女性中心にフェムテック開発

2022年04月12日 (火曜日)

 社会構造の変化によって繊維素材に求められる機能もますます高度化・多様化した。こうした動きに応える紡績のイチ押し素材を連載で紹介する。

 女性の人権尊重への意識が高まり、社会進出もますます加速する中、月経や性交、妊娠、出産、更年期などに関する女性特有の悩みを解決する商品への関心が急速に高まっている。いわゆる「フェムテック」だ。

 こうした動きを受け、シキボウはフェムテックプロジェクトチーム「Mechi」(ミチ)を立ち上げた。女性特有の悩みに寄り添うためには女性が中心となって開発に当たる必要がある。このためミチはシキボウから6人、子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)から4人の計10人の女性従業員で構成する。

 開発に当たって、まず月経に焦点を当てて調査したところ、多くの女性が経血の臭いを気にしていることが分かった。そこで開発したのが経血の臭いにも対応した消臭加工「フェミュー」だ。

 消臭加工は通常、臭い成分を特定し、吸着・中和することで機能を発現させる。例えば汗の場合はアンモニア、酢酸、イソ吉草酸が主要な臭い成分となる。しかし、経血にはトリメチルアミンやメチルメルカプタンなども含まれていることから、これら臭い成分も吸着・中和できるように加工技術の改良を進め、経血対応の消臭加工を実現した。

 もう一つ開発したのが経血による汚れに対応した防汚加工「ノアード」。経血は通常の血液には含まれていない成分が多く、粘性が高いため汚れが落ちにくい。このため既存の血液汚れ対応防汚加工を改良することで開発に成功した。

 フェムテック関連の評価技術開発に力を入れているボーケン品質評価機構とも取り組みを進めた。経血対応消臭加工では経血の臭い成分の分析や試験方法の共同研究を進める。

 防汚加工の開発でもボーケンが開発した人工経血を活用した。生理用繊維製品は汚れが目立たないように濃色を使うことが多いため、防汚性の評価も通常の目視ではなく、ボーケンの蛍光反応方式を導入した。

 フェミュー、ノアードに、実績が豊富な敏感肌対応加工「ラ・モルフェ」を加えてフェムテック対応加工として打ち出す。オーバーパンツや吸水ショーツ、布ナプキン、不織布製生理用ナプキンなどの用途に提案を進める。12日から東西で開催する同社展示商談会で披露する。

 プロジェクトチーム名である“ミチ”には「月の満ち欠けのように日々変化する女性の心と体」「女性が自分らしく自分の道を歩む」という意味が込められている。これを活動コンセプトとして、フェムテック素材・製品の可能性を広げることに取り組む。