タイ化学企業/インド事業を強化/メーク・イン・インディアに呼応

2022年04月12日 (火曜日)

 タイの化学系企業がインド事業の強化に乗り出している。背景には、インド市場を「南アジア市場への入り口」として位置付けるタイ系企業の思惑がある。インドを世界における研究開発および製造業のハブとすることを目標とした同国政府の産業政策「メーク・イン・インディア」も追い風となっている。

 インド市場攻略に最も力を入れているのが、石化大手インドラマ・ベンチャーズだ。インド子会社、インドラマ・シンセティクス・インディアは2021年5月、西部マハラシュトラ州ナグプールにあるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂工場の設備投資と増強などに8200万ドルを投じると発表した。

 PET樹脂はペットボトルの原料などに使われる。新たに設置する設備は22年第2四半期(4~6月期)に商業生産開始予定で、1日当たり700トンのPET樹脂を生産する。インドラマ・シンセティクはナグプールにある工場を含め国内計3カ所でPET樹脂を生産しており、年間100万トンの生産体制を構築する。

 ナグプールの工場では繊維事業も手掛ける。投資を通じて、ナイロン原糸など特殊繊維の製造能力を高め、膨らむ現地需要に対応していく。

 インドラマ・ベンチャーズはさらに同年12月24日、PET樹脂事業と繊維事業に並ぶもう一つの柱の酸化物・派生製品事業の成長に向け、西部ムンバイに研究開発(R&D)センターを設立したと発表した。930平方メートルの広さ。アジア太平洋地域のリサーチハブとしての位置付けだ。酸化エチレン・酸化プロピレンおよび誘導品群で、川下製品の拡充に力を入れる。

 インドラマ・ベンチャーズはこれと前後して、同社が33カ国・124カ所で展開している事業のサポートを目的とする「グローバルビジネスセンター(GBS)」を東部コルカタにオープンした。最新の技術を導入して事業の効率化向上を目指す。グループ最高経営責任者(CEO)アローク・ロヒア氏はGBSについて「インドラマ・ベンチャーズの変革に向けた第一歩」と話している。

〈TPACは地場買収〉

 プラスチック包材メーカーのタイ・プラスパックは22年1月、インド完全子会社の傘下TPACパッケージング・インディアIIを通じて、PETボトルに成形する前のプリフォームやペットボトル、関連製品の製造・販売を手掛けるインドのM/sスカイペット・ポリマーズを買収すると発表した。金額は最大で10億3千万ルピー(約16億円)。タイ・プラスパックはインド西部と北部で事業を展開しており、南部の地場企業を買収することで、事業地域を拡大させる狙いがあるとされる。

 タイ・プラスチックは21年12月、完全子会社化したTPACパッケージング・インディアを通じてインドで包材の新会社を設立すると発表している。

 サイアム・セメント(SCG)は21年12月、子会社のSGCインターナショナル・インディアが、軽量コンクリート製品を生産する同国のビッグ・ブロック・コンストラクションと合弁会社を設立すると発表した。合弁会社はまずは西部グジャラート州で、建物の外壁などに使う軽量気泡コンクリート(ALC)製パネルの製造を手掛ける。年産規模は25万立方メートルとなる見通しだ。投資額は1億ドルに達するとみられる。

 タイの業界団体であるペトロケミカル・インダストリー・クラブはNNAの取材に対し、タイの化学系企業がインド事業の拡大に力を入れている背景の一つにインド政府が掲げる製造業振興策「メーク・イン・インディア」政策を挙げた。化学は同政策の対象となる25業種のうちの一つ。

 インド政府によると、インドの化学産業はアジアで既に4番目の規模。タイの商業銀行大手カシコン銀行傘下の民間総合研究所カシコン・リサーチ・センターは、インドの化学・石化分野の市場規模は24/25年度(20年4月~21年3月)までには19/20年度比で2倍に近い3千億ドル規模に達すると予測するなど伸び代が大きい。

〈インド企業もタイに投資〉

 一方、インドの化学企業もタイに対して活発な投資を行っている。その一つが、複合企業(コングロマリット)アディティヤ・ビルラ・グループ傘下の化学大手、アディティヤ・ビルラ・ケミカルズ(ABCIL)だ。タイ中部アントン県でタイヤ補強材のカーボンブラックを生産している。仏調査会社リポートリンカーによると、カーボンブラックの世界市場は21年以降年6・9%のペースで成長し、27年に256億ドル規模に達する見通しだ。

 インド企業がタイ企業と協業する例も増えている。化学メーカーのインドアミンズは、タイのオプティマルテックと組んで20年5月から農業用化学物質などの生産を始めた。

 塗料や洗剤、せっけんなどの製造に用いられるさまざまな脂肪酸含有化合物の一群であるオレオケミカルの製造を手掛けるインドのファインオーガニックインダストリーズは21年5月、タイのオレオファイン・オーガニクスとタイに合弁会社を立ち上げた。合弁会社は、特殊化学品の製造や輸出などを行う。

 インドの化学企業がタイへの投資を積極的に行う背景には、環境規制の厳しい欧州市場を避けるという狙いがあるとみられる。

[NNA]