ひと/帝人 社長 内川 哲茂 氏/何のために会社があるのか

2022年04月18日 (月曜日)

 今月1日に帝人の社長に就任した内川哲茂氏は1990(平成2)年入社。合繊メーカーや大手化学会社で平成入社の人物が社長に就いたのは内川氏が初めてと聞いた。新しい時代のリーダーとして、どのようなチームを作り、引っ張っていくのか。持ち前の包容力や論理的思考、実行力が試される。

 内川社長のキャリアは繊維研究所の技術者としてスタートする。アラミド繊維をはじめとする高機能繊維が中心にはなるが、“繊維畑”を歩いてきた人物が同社の社長に就いたのは、長島徹元社長(2001年11月~08年6月)以来のこと。繊維出身の社長誕生を頼もしく感じる業界人も多いことだろう。

 鈴木純会長(当時社長)と共に社長交代会見の席上に立ったのは昨年12月23日。その後に正月休みがあったため「気持ち的にゆっくりできた」と振り返る。年が明けて新年のあいさつをするうちに実感が湧き、責任の重さも痛感したが、焦ることなく「目の前の仕事を一つ一つこなす」ことに集中した。

 鈴木会長は内川社長を「論理的に考えて、全てを包み込む包容力がある人」(交代会見時)と称し、手腕に期待を示した。ウクライナ問題などもあって世界の経済動向の先行きは不透明感を増しているが、「今後どうなるかの予想に力を使うよりも起こったことに対処する方が大事」と話す。

 その上で「中期的な視点で考えると、今のままではほとんどの事業が生き残れない。変革が必要」と強調。まずは帝人が世の中に対して何のためにあるのかを議論し、存在意義を明確にする。「一人ではできないので共感してくれる人たちとチームを組んで取り組む」とする。

 さらに帝人が今持っている製品やサービスをアピールしてソリューションを提供するのではなく、「顧客や社会が困っていることを最初に考える。社会の“痛み”を基点としたソリューション提案が重要」と説く。企業風土は簡単には変わらず、内川社長自身も拙速に変えるつもりはないとし、時間をかけて実現する。

 理想の経営者はいないが、「取り組んで失敗するよりも、取り組まないで後悔する方が嫌だ」という考えに共感を持つ。挑戦して失敗しても良いという考えの下、目の前の課題に全力で取り組む。(桃)

 うちかわ・あきもと 1990年帝人入社、2017年帝人グループ執行役員マテリアル事業統轄補佐兼繊維・製品事業グループ長付、20年同複合成形材料事業本部長、21年4月帝人グループ常務執行役員マテリアル事業統轄、同年6月取締役常務執行役員などを経て、22年4月代表取締役社長執行役員。