春季総合Ⅳ(16)/ウイズコロナ時代を進む検査機関/日本繊維製品品質技術センター(QTEC)/ボーケン品質評価機構/ニッセンケン品質評価センター

2022年04月26日 (火曜日)

 新型コロナウイルス禍は検査機関にも小さくない影響を与えたが、業績はおおむね計画通りに推移するなど、回復基調をたどる。ただ、事業を取り巻く環境は新型コロナ禍などで大きく変化しており、検査機関にも変革が求められている。独自性や社会貢献、海外展開、人材育成などをキーワードに前進を続ける。

〈日本繊維製品品質技術センター(QTEC)/理事長 山中 毅 氏/対応力と意志力、実行力/ウェルビーイングに動く〉

  ――ウイズコロナ時代に成長するために必要な要件は何だと考えますか。

 新型コロナウイルス禍もあって消費者の思考や生活様式は大きく変化しました。今は安心・安全、脱炭素、デジタル技術で社会を変革するDXの流れが加速しており、そうした変化への対応力が求められます。対応力に意志力と実行力を加えた三つの力が不可欠です。

  ――2021年度(22年3月期)を振り返ると。

 一言で表現するならば「厳しい1年」でした。ただ、抗ウイルスや抗菌、羽毛、機能性をはじめとする多種多様な試験を行っていますので、最低限はクリアできました。どこか一つ、何か一つではなく、日本国内と海外が互いにカバーしました。QTECの強さが発揮できたとも言えます。

 国内、海外駐在員、ナショナルスタッフを合わせた全職員の頑張りに対して大変感謝しています。中でもナショナルスタッフの活躍には目を見張ります。日本人駐在員が不在の時に「自分たちがやらなければ」と考えてくれたことが大きかったと思います。

  ――22年度の経済の動きをどのように見ていますか。

 昨年、米国でバイデン政権が誕生してからも米中摩擦が続いていました。そうした状況下で起こったのがロシアのウクライナへの侵攻です。これまでの米国対中国から、米・欧とロシア・中国の対立という図式に変わりました。この対立は長期化する可能性があり、これからも注視していく必要があるでしょう。

 日本にとって安全保障上のリスクは対岸の火事という感覚だったと思うのですが、そうではなかったことが今回のウクライナ危機で分かりました。原油やガスをはじめとするエネルギー、食料品の価格上昇が生活を直撃し、それが衣料品の購入などにも影響を及ぼしつつあります。

  ――22年度以降のQTECの基本方針は。

 22年度が初年度の3カ年中期経営計画を始動したのですが、今回の中経は、ウェルビーイングのスタートに位置付けています。QTECにとってのウェルビーイングは「職員が元気に働いていること」「職員が日々安定した生活を保てること」「育児や介護の不安を軽減すること」などです。これらの実現によって従業員エンゲージメント、つまり、財団への共感、愛着につなげます。

 具体的な施策では、試験技術の開発・強化の継続はもちろん、海外を含めた営業体制の構築、人材育成・研修のバージョンアップに取り組みます。さらに広い意味でのDX加速にも力を入れます。QTECはかなり筋肉質になっていると思いますが、中経の着実な推進で全体のボトムアップを図り、より筋肉質な体制の構築を目指します。

〈ボーケン品質評価機構/理事長 吉田 泰教 氏/専門性を高めて価値創造/四つのソリューションを強化〉

  ――ウイズコロナ時代における成長の要件は。

 以前から大量生産・大量廃棄など繊維産業が抱える課題が指摘されていましたが、新型コロナウイルス禍によって、そういった課題が一段と明確になったと思います。当機構も従来型の納品前検査業務だけでは将来性に限界があると考えています。そこで3年前から事業本部制を敷き、専門性を高めることで新たな価値創造に取り組んできました。繊維だけでなく生活用品などでもさまざまな試験のニーズが高まっており、それらニーズに応えるためです。サンプルチェックや品質表示作成・確認、サステイナブル行動指針作成やCSR監査に関するサポートなど品質支援業務を強化してきました。こうした取り組みは海外拠点を通じても実施していますが、新型コロナ禍で海外出張が難しくなっていることから、海外での要望が増えています。

 サステイナビリティーに関する動きも強まっており、ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)などプラットフォームができつつあります。当機構もJSFAに賛助会員として参画しました。

  ――2021年度(22年3月期)を振り返ると。

 上半期は新型コロナ禍からの経済回復もあって順調に推移しましたが、下半期に入ると変異株による感染再拡大の影響もあって回復の勢いが鈍化しました。繊維事業は前年度並みです。機能性事業は、抗菌・抗ウイルス試験が、やや落ち着いたとはいえ、依頼件数も増加しています。提携するユニチカガーメンテックとの共同開発なども進みました。生活産業資材事業は増収を確保しています。認証分析事業も前年度並みですが、サステイナブル関連の依頼が増加しています。このため現在は海外の試験機関に託している生分解性試験を国内でも今年度整備していきます。品質支援事業は品質サポート業務だけでなくセミナーなど教育支援業務も増えました。

  ――22年度の基本戦略は。

 今期から新中期経営計画がスタートしました。「私たちが切り拓く、未来から選ばれるBOKEN」をビジョンとして掲げています。既存事業の強化に加えて、新規事業の拡大に取り組みます。特に「品質支援」「教育支援」「共同研究」「サステイナブル支援」の四つのソリューションに重点的に取り組みます。専門性を一段と高めることが重要です。事業環境の変化に対応するためサステイナブル経営の強化、戦略的な人材確保・育成にも取り組みます。ボーケンならではの役割をどれだけ創造することができるかが問われています。そのためにも、何より業界企業の事業や社会的責任がうまくいくような品質、環境、人権へのサポート業務に力を入れます。

〈ニッセンケン品質評価センター/理事長 駒田 展大 氏/変化する事業環境への対応/独自事業と社会貢献を〉

  ――ウイズコロナ時代に成長するために求められる要件は。

 新型コロナ禍が始まって2年以上がたちました。当初はコロナ収束後の姿が問われましたが、今はまさにウイズコロナの中でどうするのかが問われているのだと思います。変化していく事業環境に対してどのように対応するかですが、自分たち自身が変化しないといけません。

  ――ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)もこの2年で変化したのでしょうか。

 繊維、特にアパレル業界は盛り上がりを欠く状況が続いていました。そこに新型コロナ禍が直撃し、ニッセンケンも予算の組み替えや資金の使い方の見直しを実施しました。海外への渡航制限はもちろん、国内での移動自粛もあって出張経費などが減少し、中身的には良くなりました。

 事業に目を移すと、エコテックス事業とバイオケミカル事業、香粧品分析事業の三つを集約した「ライフ アンド ヘルス(L&H)事業本部」を発足するなど、文字通りライフや健康に力を入れました。「エコテックス」は堅調で、抗ウイルス・抗菌試験も増えました。事業面でも中身が変化したと考えています。

  ――2021年度(22年3月期)を振り返ると。

 ほぼ予算通りの数字となるのではないでしょうか。繰り返しになりますが、エコテックスとバイオケミカルを中心にL&H事業本部が想定よりも伸長しました。香粧品分析も予想以上の伸びを見せています。新型コロナ禍が早い段階で落ち着いた中国も堅調です。

  ――22年度の経済動向をどう読み、どのように事業を進めますか。

 経済や市場の動向については分からないというのが正直なところです。原燃料はウクライナ危機以前から値上げ基調にあり、原材料費や電気料金を含む物価も上昇しています。アパレル業界も原燃料・原材料価格高騰の影響を受けています。衣料品市場が盛り上がりを欠く中でのコストアップは厳しいと言えます。

 そのような状況下で事業に取り組むことになります。新型コロナ禍で市場が変わり、考え方も変わっていますが、この2年間で自分たちが進むべき方向が見えてきました。ニッセンケン独自の事業の推進と社会貢献が重要になり、この1年でそれを目に見える形にしたいと考えています。

  ――ニッセンケンならではの事業とは。

 エコテックスがその一つだと捉えています。積み重ねてきたノウハウを活用して分析事業や化学物質の管理手法などに関するコンサルティング業務に広げていきます。フェムテックなどにも目を向けますが、繊維にこだわる必要はなく、さまざまな分野の要望に応えていきます。