特集 快適・衛生機能の繊維(3)/多彩な機能を実現する素材・製品・加工剤メーカー/シキボウ/大和紡績ダイワボウレーヨン/ハラダ/大和化学工業/サンワード商会

2022年05月26日 (木曜日)

〈経血対応の消臭、防汚/女性中心にフェムテック開発/シキボウ〉

 シキボウは、女性従業員によるフェムテックプロジェクトチーム「Mechi」(ミチ)を立ち上げ、経血を対象とした消臭加工「フェミュー」と防汚加工「ノアード」を開発した。オーバーパンツや吸水ショーツ、布ナプキン、不織布製生理用ナプキンなどに提案する。

 ミチによる調査では、女性の多くが経血の臭いを気にしていることが分かった。そこで開発したのがフェミュー。経血の臭い成分を検証し、消臭対象として一般的なアンモニア、酢酸、イソ吉草酸に加えて、トリメチルアミンやメチルメルカプタンなど経血に含まれている臭い成分に対しても消臭性を発揮する。

 経血には通常の血液に含まれていない成分も多いため粘性が高く、汚れとして付着した際に落ちにくい。このため既存の血液汚れ対応防汚加工を改良することでノアードを開発した。ボーケン品質評価機構とも協力し、経血の臭い成分の分析や試験方法の共同研究を進めた。防汚加工の開発ではボーケンが開発した人工経血を活用した。

 得意の衛生加工も抗ウイルス加工「フルテクト」、制菌加工「ノモス」、抗菌防臭加工「ノンスタック」、防汚加工シリーズ「汚れま戦隊」と充実したラインアップを誇る。染色加工子会社のシキボウ江南(愛知県江南市)は不織布加工機もあるため不織布への加工も可能。燃焼時の二酸化炭素排出量が少ない特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」を使った不織布に加工することもできる。

〈天然由来加工を拡充/抗ウイルスもバージョンアップ/大和紡績〉

 大和紡績は、天然由来成分を活用し、快適や清潔に焦点を当てた素材や加工のバリエーションを拡充している。抗ウイルス加工も薬剤を変更することでバージョンアップした。

 同社は機能素材・加工でもサステイナビリティーを重視した開発を強化してきた。その成果としてグレープフルーツ成分由来の抗菌防臭加工「シトラスガード」やシルクフィブロインによる保湿加工「アミノモイスト」を提案している。

 シトラスガードは非可食のグレープフルーツの種子から抽出した成分を使い、アミノモイストのシルクも生糸として使えないものを利用。ともに廃棄物の有効活用としての意義もある。まずはインナーなど肌に直接触れる用途を中心に提案を進める。

 抗ウイルス加工「クリアフレッシュV」も新型コロナウイルス禍をきっかけに認知度が一段と高まった。これまでも抗ウイルス加工剤を安全性の高い無機物系に変更するなど改良を続けてきたが、新たに加工前処理で使用する薬剤を海外でも使用しやすいものに変更した。これにより海外でも加工がしやすくなった。

 同社はサステイナビリティーにプラスアルファの機能を付与することで、綿素材の可能性を広げる。

〈練り込み技術に強み/持続可能な再生セルロース繊維/ダイワボウレーヨン〉

 ダイワボウレーヨンは、サステイナブルな再生セルロース繊維であるレーヨンに独自の練り込み技術で機能性を付与することを強みとして打ち出す。快適や清潔に焦点を当てた多彩な機能レーヨンをラインアップする。

 新型コロナウイルス禍を契機に関心が高まった抗ウイルス素材。同社は抗ウイルス「パラモスプラス」をいち早く商品化した。原綿段階で抗ウイルス性を付与することで後加工が不要となり、不織布や先染め糸向けに適している。ここに来て不織布で採用に向けた動きが進む。

 紡績用途では抗菌防臭レーヨン「バクトフリー」や、部屋干し臭の原因であるミラクセラ菌に対する抗菌性も確認した「ビスクリーン」などを積極的に提案する。タオルや軽寝具向けで実績を重ねてきた。

 快適性でも紫外線カットの「スキュータム」、熱線カットの「レイシールド」、涼感機能がある「クールモード」など多彩な調温・涼感機能レーヨンをラインアップしている。

 再生セルロース繊維であるレーヨンは木材を原料とし、生分解性もあることからサステイナブル素材として注目が高まる。練り込み技術によって機能性も付与することで、社会的ニーズに応え、レーヨンの需要掘り起こしに取り組む。

〈1千万足超の勢い/抗ウイルス靴下が店頭の定番に/ハラダ〉

 靴下製造卸のハラダ(奈良県桜井市)の抗ウイルス機能を付けた靴下の売れ行きが好調だ。

 2020年9月から大手衣料品チェーンで販売を始めたところ、同年で300万足が売れ、21年には400万足に増えた。今年も300万足は売れると予想しており3年間の累計で1千万足を超える勢いだ。

 前期に売上高に貢献した抗ウイルスマスクの売れ行きが落ち着く一方で、抗ウイルス靴下は堅調が続いた。そこにファッション関連の靴下の需要が回復に転じたため、22年4月期決算は増収となったようだ。

 同社の抗ウイルス靴下は店頭の定番商品になりつつある。大人が日常的にはくためだけでなく、紺・白無地の商品では、小中高生が学校ではく靴下としても定着している。

 同社の抗ウイルス加工は「デオゼロ」という名称で、オリジナルの抗ウイルス商品のブランド名でもある。加工薬剤は寝具製造卸のマルゼン(宇都宮市)、抗菌性金属の研究開発を行うCSL(名古屋市名東区)と同社の3社共同で開発した。

 15年には繊維評価技術協議会の「SEK抗ウイルス加工マーク」を取得。通常のコロナウイルス(ヒト)に対する抗ウイルス性を確認済みで、新型でも同等の抗ウイルス性があると推定される。

〈大和化学工業/ポリエステル100%でも/耐洗濯性の抗ウイルス剤〉

 大和化学工業(大阪市東淀川区)は、ポリエステル100%の生地でも洗濯耐久性を発揮する抗ウイルス加工剤「アモルデンV―CAD」を発売した。安全性データもそろい、SEKの申請の準備が整った。

 抗ウイルス性はインフルエンザウイルスで確認。ポリエステル100%生地で洗濯10回後でも効果を持続する。SEKマークに対応した抗ウイルス機能付与を強みに、ユニフォームや資材用途など幅広く開拓する。さらに次のニーズに向けた開発も進めている。

 綿素材向けには、抗ウイルス加工剤「アモルデンV―100JM」を既に展開しており、SEKマークを取得するユーザーも出てきた。V―CADの発売で、綿、ポリエステル両方に向けた抗ウイルス加工剤がそろった。同社は自社で保有するウイルスを扱う試験室で顧客の商品開発のスピードアップに貢献している。

 さらにポリエステルの染色同浴でSEK赤ラベルに対応できる「アモルデンD4C」では、その環境面での負荷の低減を訴求する。染色時に染料とともに添加して制菌性を付与するため、後加工に伴う熱処理や排水がなくなる。排水の環境負荷も少なく、活性汚泥菌への影響も少ない。SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも注目されている。

〈サンワード商会/フィルターなどで需要増/オミクロン株でも効果確認〉

 サンワード商会(大阪市中央区)のハイブリッド触媒「ティオティオ プレミアム」は、新型コロナウイルスのさまざまな変異株に対する効果確認を進めている。このほどオミクロン株についての効果も確認した。新型コロナ以外にも対応していく考えで、欧米での小児の急性肝炎急増への関連が疑われるアデノウイルスへの効果検証なども検討していく。

 足元では新型コロナ禍による特需が落ち着き、マスクやカジュアル衣料などでの販売量が影響を受けているが、それ以外の用途が伸びている。衣料用で堅調な用途の一つがユニフォームで、学生服や介護用、オフィス用などが堅調に推移する。

 資材用途では、フィルターやブラシなどが伸びている。フィルターは自動車用や家電用など裾野が広がり、ブラシもさまざまなアイテムで開発が進んでいる。

 今後は輸出にも取り組む考えで、特に欧米市場に力を入れる。欧州の規制に適合する新タイプの試作も終え、従来品と同水準の性能が出せることを確認している。

 ティオティオ プレミアムは、空気中の酸素を利用して酸化還元反応を触媒し、抗ウイルス、抗菌、消臭などの機能を発揮する多機能型触媒。光がなくても機能を発揮する。安全性も高く、各種安全性試験の評価基準に適合している。