クローズアップ/東洋紡せんい マテリアル事業部長 宮嵜 勝浩 氏/綿で強化プラを開発
2022年06月14日 (火曜日)
東洋紡せんいのマテリアル事業部がユニークな取り組みを進めている。綿を混ぜて全体を強化した繊維強化プラスチック(FRP)の開発だ。5月11~13日にインテックス大阪で開催された「第2回〈関西〉サステナブルマテリアル展」に出展。同展には1万7771人が来場し、同社ブースには千人弱が訪れた。出展の狙い、開発の進ちょくを宮嵜勝浩事業部長に聞いた。
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――出展しての手応えはいかがでした。
天然由来の素材を使ったFRPにニーズがあるかどうかを確認したかった。分かったのは、かなりのニーズがあるという事実でした。
――主な出展素材は。
同展では、大きく分けて天然繊維を複合した強化プラスチック、産業資材用シート、改質わたの3タイプを紹介しました。
「アップトゥサイクル」といって、紡績工場や縫製工場で発生した端材を生分解性樹脂脂に混ぜてプラスチックにしたものです。基本はわれわれのお客さんの工場から出てくる端材のアップサイクルです。同展には、提携先の樹脂メーカーで作ってもらったフレークを出展しました。
綿と酢酸セルロース樹脂を複合したバージンコットンプラスチック、プレス成形向けのプラスチック・コットンFRTP(熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチック)もラインアップしています。雑貨やボタン、ハンガーなどの用途を想定しています。
――産業資材用シート、改質わたというのは。
シートは「ウェイシート」といい、サイジングした経糸を糊(のり)付けして生分解性樹脂による不織布と積層させたシートです。現在、用途探索に取り組んでいます。
改質わたとしては、吸湿発熱「ホットナチュレ」、除菌「リフレス」、消臭「デオドラン」のような機能性が特徴の綿やレーヨン短繊維をPRしました。いずれも天然由来の素材なため、サステイナブルをうたうことができます。
――綿を使い強化プラスチックを開発する狙いは。
従来の衣料繊維を中心とする事業にも力を入れていきますが、われわれにとって綿で産業資材や非衣料分野に参入することが長年の課題でした。サステイナブルを求める要望は年々、強くなっていますし、天然由来の素材でプラスチックやシートを開発できるということをPRするのが出展の狙いです。営業マンが現在、個別のお客さんのフォローに取り組んでいます。何とか23年度の早いタイミングで売り上げを計上できればと考えています。