特集 アパレル総合22秋冬(3)~企画&トレンド~/紳士服編

2022年06月23日 (木曜日)

〈オンワード樫山「J.プレス」/ジャケットなど単品需要に即応〉

 オンワード樫山が展開する紳士服「J.プレス」は、パターンオーダーのスーツを強化し、さらに単品のドレスジャケット、パンツ需要をカバーする。直近では単品需要が高まり、マーケットの動きに即応する考え。

 昨年からバリエーションを増やしているカジュアル中軽衣料については、シャツ、ボトムスを拡充する。こうした商品は通年のエッセンシャルアイテムとして訴求。ジャージー素材のセットアップも投入する。実需期購入に対応し「長い期間の販売を見込む」とした。

 MD精度を高め、ビジネス需要と在宅ワークを意識した中軽衣料、セットアップの両カテゴリーを提案。昨秋冬シーズンも、丸編み地のトップスやシャツなどに当たりがあった。

 先シーズンに続き、ブランド設立120周年記念アイテムを提案する。さらにサステイナブルな原料を継続的に使用するとした。スーツの価格は7万9200~14万3千円、ジャケット・アウター類5万3900~13万2千円など。

〈三陽商会「マッキントッシュ・フィロソフィー」/素材と柄でアップデート〉

 三陽商会が展開する英ブランド「マッキントッシュ・フィロソフィー」は、堅調に推移しているるセットアップの素材と柄でバリエーションを増やす。軽量で動きやすいジャケットとパンツが主流で、ウオッシャブル仕様などイージーケアも特徴になっている。

 同社では「テーラード仕立ての構築的な見た目と、ジャージー素材ならではの柔らかな着用感を両立させた商品もある」と説明する。コート類でも軽量で動きやすいディテールを盛り込む。

 中わたのライナーを搭載した実用的なスタンドカラーコートや、ウール調合繊ツイル表地にフリース素材をボンディングし、軽さと温かさを両立させたアウターなどを投入。クラシックな表情でありながら、素材や汎用性でコートをアップデートさせている。

 足元では紳士、婦人服ともに3~4月度の売上高は前年比2桁%増となった。百貨店やECなどチャネル別でMDを組み、それぞれで成果が出ている。同社では「前年の反動で売上高が伸長したこともあるが、回復のペースが想定よりも速い」と分析している。

〈オッジ・インターナショナル「ダーバン」/着心地重視のスーツ〉

 オッジ・インターナショナルの紳士服「ダーバン」の22秋冬は、複雑なチェック柄のデザインや着心地にこだわったスーツを提案する。好調なカジュアル衣料は、パンツの企画に力を入れる。

 主力のスーツは着心地の良さを高めた。尾州産地で作ったカシミヤ混の編み地のスーツや、経と緯の両糸にポリウレタン糸を使い縦横に伸びる生地で仕立てたスーツなどをそろえる。既成スーツの価格は7~24万円に設定し、21秋冬の水準に据え置く。コスト増は企業努力で吸収し、原料高に対応するという。

 カジュアル衣料はベーシックなデザインが中心。パンツを軸にそれに合うシャツやコートを用意し、利用シーンが想像できるスタイリングの発信を強化する。明るいブルーといったカジュアルな色合いの商品も増やし、着こなしの幅を広げる。

 21秋冬の売上高は20秋冬比で30%増。特にスーツは36%増と回復傾向が鮮明だった。独自生地の開発や国内工場での縫製といった強みを武器に、22秋冬も幅広く顧客を開拓する。

〈YKK「デジタルショールーム」/仮想空間に築いた交流拠点〉

 YKKの「デジタルショールーム」は、英国・ロンドンのYKKショールームをモチーフとした合計6フロアの仮想空間でファスナーやバックル、面ファスナー、スナップ・ボタンなどの商品情報をウェブ上で紹介している。

 商品提案と顧客とのコミュニケーションの場として2021年4月に開設した。以来、商品情報、商品開発ストーリー、お客さまの声といったコンテンツの追加や、日本語・英語・中国語の3カ国語対応などで機能の拡充を図った。その成果として、国内外のページビューは約50万にも達している。

 人気コンテンツは、欧米、中国、日本国内の各地域特有の商品、NFCチップ内蔵のファスナー引手「タッチリンク」がもたらすウエアラブル体験やサステイナビリティーのストーリーなど。商品情報にとどまらず、顧客の関心に合わせた内容を盛り込んでいる。

 21年には、同社のウェブ展示会「YKK ファスニング・クリエーション for 2022」と連動させた。中国・上海で開催された「インターテキスタイル」でも、出展ブース内にデジタルショールームコーナーを設置し、来場者に展示品とバーチャルの両面で提案を体感してもらった。こうしたデジタルとリアルを融合させた顧客接点としても活用を進めている。

 6月から、アスリートがファスナーなどYKK商品についても語るインタビューを掲載している。

〈青山商事/シーン別に三つのジャケット〉

 新型コロナウイルス禍を経て働き方が多様化する中、青山商事は外出、オフィスでの勤務、在宅勤務の三つの場面を想定した夏用ジャケットの販売を始めた。着用シーンに合わせたビジネス服を用意し、ニューノーマル(新常態)時代に対応する。「ザ・スーツカンパニー」全店と公式オンラインショップで扱う。

 外出・出張用は、テーラードジャケットでかっちり感を出した。通気性の高い平織りで、夏場の屋外でも涼しい設計にした。家庭洗濯機で丸洗いができるため、手入れもしやすい。

 オフィス・来客用のジャケットは、ノーカラーで少し崩したカジュアル感を出しつつ、見た目のきちんと感を兼ね備えたデザインに仕立てた。通気性や伸縮性も追求。急な来客時にも対応できる汎用性の高さが特徴だ。

 テレワーク・ウェブ会議用は、軽さと柔らかさを重視したカーディガン風のジャケットに仕上げた。リラックスしやすい伸縮素材を使用し、副資材は最低限に絞った。着心地と、ウェブ会議にも適した見た目の良さを両立させた。