環境特集(7)/わが社の環境戦略/タキヒヨー/コタニ化学工業/ヤギ/帝人フロンティア

2022年06月27日 (月曜日)

〈サステのプロジェクト推進/グアテマラでの取り組みも/タキヒヨー〉

 タキヒヨーは、「サステナビリティ基本方針」を策定し、グループが一丸となって持続可能な社会の実現と企業価値向上に努めている。その中で、縫製時に発生する裁断くずを再利用するプロジェクトや中米のグアテマラでのプロジェクトをはじめ、さまざまな取り組みを進めている。

 裁断くずを回収・粉砕して繊維化し、糸や生地、商品によみがえらせるのが「ノーウエイストプロジェクト」だ。サステイナブルチームが軸となって推進しており、既に大手量販店やアウトドアメーカー、ファッションブランドなどとの連携が進展を見せる。

 アウトドア企業やファッションブランドとの取り組みでは使用済み商品も回収し、紙に再生して下げ札などに活用。ファッションブランドとの連携では、回収商品のボタンなどを就労支援施設で除去するという社会貢献活動にもつなげている。

 グアテマラの「ザニューデニムプロジェクト」は、デニムの裁断くずや再販できない古着、落ちわたを使ってさまざまな商品に生まれ変わらせるプロジェクト。同国の紡績会社が取り組んできた。タキヒヨーは2018年に契約を結び、生まれ変わった商品を日本国内で販売している。

〈染色時間の短縮実現/廃棄物を薬剤に再利用/コタニ化学工業〉

 コタニ化学工業(堺市)は、サステイナビリティーを意識した繊維加工剤の開発に力を入れている。①染色時間の短縮による節水・省エネ②廃棄物やロスの削減、製品の長寿命化③天然物の活用④生分解性を持つ薬剤の開発――など各面から開発を強化し、品ぞろえを広げていく。

 近年は、食品廃棄物などを再利用して作る繊維加工剤への注目が高まっている。例えば廃棄される貝殻の抗菌性を利用した薬剤などがあり、機能性付与とともに廃棄物の削減につながる。その地域の特産物を利用し、地産地消を訴求できる加工剤へのニーズも増えている。

 染色時間の短縮につながる薬剤への要望も高い。例えばソーピングの回数を減らして節水・省エネを実現するなどで、性能が高く短時間での脱落洗浄を実現する綿素材用ソーピング剤「クインソープ 5Gconc」、ポリエステル綿混のRC工程が省略できるソーピング剤「クインソープ T―JEnew」などをそろえる。

 廃棄物やロスの削減につなげる商品としては、染色時のトラブル防止剤(スカム発生防止、缶体洗浄剤など)、修正用助剤(ピリング防止剤や摩擦堅牢度向上剤など)を提案する。

 天然成分を利用した加工薬剤には早くから力を入れており、植物性スクワランによる保湿加工「クインセッターSSQ―2」、竹エキス由来の抗菌加工剤「クインライト BMB」、粘土鉱物由来の抗アレルゲン加工剤「クインライトALG」などをそろえる。このほかにも椿オイル、シルクプロテイン、シアバターなど幅広く天然成分を活用した加工剤をそろえる。これらの開発実績を元に新規事業にも取り組む考えで、大阪府から化粧品製造業と化粧品製造販売業の許可も得ている。

〈再生合繊と有機栽培綿/国際認証も取得/ヤギ〉

 ヤギは、サステイナブルへの対応とそのブランディングに力を入れている。糸の段階でこの方針を具体化するのが、再生合繊糸の「ナチュリール」と、オーガニックコットンの「ユナ・イト オーガニック」だ。トレーサビリティーや信頼性も重視しており、前者はリサイクル製品認証プログラム「GRS」を、後者はオーガニックコットンの国際認証「GOTS」の認証を取得している。

 ナチュリールは、再生ポリエステル糸の「ブルーラベル」、再生ナイロン糸の「グリーンラベル」でこのほど展開を開始。共に以前から販売実績のある糸だが、ブランド化によってさらなる拡販を狙うことにした。今秋には生分解糸などで構成する「ブラウンラベル」も加える。

 ユナ・イト オーガニックはこれまでオーガニック100%で10品番強を備蓄して展開してきたが、他素材との混紡糸を現在開発中で、年内にはラインアップに加えることができると言う。綿糸高騰への対処でもあり、機能性の付与という要素もある。

 販売は拡大しており、前期の売り上げは前の期比2倍。混紡糸を加えることによって、ユニフォームなどの非ファッション、資材などの非アパレルを開拓していく。

〈環境戦略を積極推進/業界挙げた啓発も必要/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、環境戦略「シンクエコ」を設定している。「素材からエコにこだわろう。」「きれいな空気と海を守ろう。」「省エネな毎日を送ろう。」の三つを掲げ、2030年度をターゲットに「リサイクル原料使用比率を50%以上に高める」ことや「モノ作りが省エネな商品の100%化」を目指す。

 同社は、ペットボトル再生ポリエステル繊維「エコペット」を販売しているが、再生ポリエステルは合繊メーカーや他の合繊メーカー系商社なども展開に力を入れており、差別化が不可欠。「再生ポリエステルだけでは大きな差は出ない。糸と生地を組み合わせた機能品で優位性を出す」と強調する。

 他社との差別化に加え、連携も求められると話す。シンクエコで掲げているリサイクル比率の向上などには販売拡大がいるが、消費者には「環境負荷低減には賛成だが、高ければ買わない」という心理がまだある。個社の努力はもちろん、「業界を挙げた取り組みでこうした心理を変えていく必要がある」とした。

 個社の取り組みでは、コスト削減などのほか、イベントなどでのペットボトル回収や海岸清掃のボランティアなどの活動を行っている。