技術の眼/YKK/サンコー/高島商事/帝人フロンティア/デビス/KDDI
2022年07月12日 (火曜日)
「技術の眼~NEW WAVE GENERATING TECHNOLOGY~」では将来的にニューウェーブを巻き起こしうる重要な技術にスポットを当て、紹介する。
〈YKK/高強度コードストッパー〉
YKKの「高強度コードストッパー」は、くさび構造を活用した樹脂100%の製品。ひもを通したストッパーをつまんで締め込み、手を離すとその位置で固定される。
プラグとソケットの〝2点構成〟というシンプルな構造で、ばねも搭載していない。それでも独自のロックシステムにより、靴などに使用する場合、靴ひもを結ぶ代わりに固定させる役割を果たす。
組み立ても簡単にでき、プラグをカチッと音がするまで押し込むだけで作業は完了する。
コンパクトな形状でも高い保持力を発揮するため、主にランニングシューズやトレイルシューズに向けて提案する。
直径1.8ミリのひもに対応するサイズで、色は黒。原材料にはPOM(ポリアセタール)を使用した。リサイクル材での生産も可能で、プラグ側のロゴ入れもできる。
〈サンコー/ペルチェ式冷却ベスト〉
家電製造卸のサンコー(東京都千代田区)は、小型冷蔵庫の冷却システムでもあるペルチェ素子を活用したベスト「冷蔵服」を開発した。
同社が開発したペルチェ式ネッククーラーが2年ほど前からヒット商品となっており、冷却ベストはその技術を応用して製作した。ベストの背中部分にペルチェ冷却システムを配置し、電気を入れると外気温からマイナス15℃に冷やされる冷却プレートが背中部分と密着し、直接冷たさ感じることができる。大型のファンでベスト内部に風を循環させることで汗を蒸発させる気化熱を発生させ、約3秒で体を冷却できると言う。
電源は一般的なモバイルバッテリーを使用するUSB給電方式。ペルチェ素子とファンの動作時間は強設定時約4時間半、弱設定時5時間半。ベストのアームホール部とウエスト部にゴムを採用し、サイズに合わせて伸縮させることで空気の流れをコントロールできる。
〈高島商事/生分解性フェイクファー〉
合成皮革などを企画・販売する髙島商事(大阪市中央区)は、環境負荷の小さいサステイナブルフェイクファーを開発した。植物由来のバイオポリマーとポリエステル樹脂を組み合わせたポリエステル繊維を使用しており、生分解性を持つ。2種を用意し、衣料品や縫いぐるみなどの用途に提案する。
動物愛護や動物福祉などの観点から、リアルファーに代わるフェイクファー・エコファーの需要が世界的に拡大しているとされる。中でもリサイクル素材や植物由来をはじめとする石油資源の使用を抑えた素材のニーズが高まりを見せている。そうした流れを受けて開発したのが今回のフェイクファーだ。
「#4410生分解PEファー」(ラッセル)は、パイルの長さが12ミリでランダムな方向性があるのが特徴。さらさらとした肌触りも持っている。ピリング性(4級)などにも優れ、一般的なフェイクファーと同様の使い方ができる。
〈帝人フロンティア/新たな綿調ポリエステル〉
帝人フロンティアはスポーツ向けの新商品として、綿調ポリエステル素材「ポリリズム」を開発した。丸編みや経編み、織物などを23秋冬向けから国内外のアウトドア、ユニフォーム、カジュアルなどに提案する。
ポリリズムは「高密度」「コンパクトな度詰め感」「ドレープ抑制による高シルエット」などが特徴で、新たに開発した異収縮2層構造糸を使っている。芯がカチオン可染高収縮糸、鞘がソフトな風合いを持つ低収縮糸の2層構造糸で、染色加工の際に芯の糸が50%以上縮む。芯部が大きく縮むことで長さ方向にランダムな糸構造となるほか、芯糸がランダムに露出して綿のような質感を実現する。この技術を応用し、再生セルロース調などの開発も検討する。
カジュアルウエアの合繊化が進む中で質感の重要性が高まっていることが開発の背景。綿の天竺や鹿の子が使われるTシャツや裏毛のスエット、アウターなどを狙う。
〈デビス/プリント生産を簡単に〉
生地商社のデビス(大阪市中央区)はこのほど、生地選定からプリント企画、マス見本発注までを簡単にウェブ上で行えるオンラインプラットフォーム「Airdye.io」(エアダイ・ドットイオ)を立ち上げた。同社によると、アパレル向けに柄とその下地となる生地をセットで提案するプラットフォームは業界初。
エアダイは、スチーミング処理、洗浄処理、熱処理などの後工程を行う必要のないプリント技術で、この技術の活用推進がプラットフォーム立ち上げの背景。
1万点以上の柄と10万色以上の配色を持つデザインライブラリーから柄と配色を選ぶ。生地はデビスの定番品のポリエステル生地13種の中から選ぶ。13種の生地は登録メンバーに事前にサンプルを送付して、質感や風合いが分かるようにする。柄、生地ともに持ち込みやカスタムも可能だ。柄選定は複数のカテゴリーに分けられており、キーワード検索も可能だ。
〈KDDI/バーチャルマネキン〉
KDDIはグーグル・クラウド・ジャパン(東京都港区)と協業し、アパレル業界向けに商品を360度確認できるバーチャルマネキンを開発した。クラウド技術を活用し、利用者は店舗のデジタルサイネージ(電子看板)や手元のスマートフォンから、衣服をまとったバーチャルマネキンを見て着こなしなどを立体的に確認できる。
サービス名は「XRマネキン」。XR(クロスリアリティー)とは拡張現実(AR)、複合現実(MR)、仮想現実(VR)といった先端技術の総称だ。現実と仮想の世界を融合するXR技術を活用して、バーチャル上のマネキンを開発した。
CADで製作したデジタル型紙を用いて作る衣服の3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)や、人間の動きをそのまま3Dスキャン撮影してデジタル化する「ボリュメトリックビデオ」技術でマネキンを表現。素材感や布の動きも再現でき、リアルな着用イメージを確認できる。