中国「ドウイン」のライブコマース/革新的な仕組みで急成長/海外ブランド参入へ

2022年07月15日 (金曜日)

 中国のショートムービーアプリ「抖音」(ドウイン)のライブコマース(動画のライブ配信による物販)を核としたネット通販は、「商品が顧客を探し出す」革新的な販売チャネルだ。新型コロナウイルス禍の“巣ごもり消費”も寄与し、わずか数年で急成長した。海外アパレルブランドの参入も始まった。

(岩下祐一)

 ドウインは、北京字節跳動科技(バイトダンス)が2016年に投入したスマートフォンアプリ。海外では「ティックトック」の名前で展開している。人工知能(AI)がユーザーの好みを分析し、15秒~1分間のお薦め動画を次々に表示する。通勤の地下鉄の中など、すき間時間に利用する人が多い。1日のアクティブユーザー数が約8億人を数え、中国で今、最も影響力を持つソーシャルメディアだ。

 当初は素人のお笑いコントが多かったが、現在はあらゆる分野のコンテンツがそろう。「歴史や文化を解説する知識系のMC(司会者)にはまっている」と、上海に住む30代女性は話す。

 バイトダンスは20年、ショートムービーとライブコマースを核とした「ドウイン・ネット通販」を始めた。新型コロナ禍の“巣ごもり消費”を追い風に、急成長している。21年のGMV(流通取引総額)は、前年に比べ3・2倍に増えた。同社はGMVの数字を公開していないが、現地メディアは関係者の話として、21年は7千億~8千億元と伝えている。

 ドウイン・ネット通販は、従来のネット通販サイトと構造が大きく異なる。アリババ集団の「天猫」(Tモール)などは目的を持ったユーザーが利用するが、ドウインは特に目的を持たない人に好みに応じた商品を勧め、購入を促す。

 仕組みはこうだ。AIが選んだお薦め商品を紹介するショートムービーを視聴者が見る。それを気に入れば、ライブコマースやネット通販店舗のサイトに飛び、購入する。「Tモールでは顧客が商品を探すが、ドウインは商品が顧客を探し出す」(ドウイン関係者)。従来存在しなかった革新的なネット通販と言える。

 インパクトは大きい。特にアパレルは、ドウイン・ネット通販のGMVの約3割を占めるトップカテゴリー。ドウインにTモール店舗の売り上げを奪われるブランドが後を絶たない。

 こうした中、昨年からアパレルブランドの参入が目立つ。カジュアル「ピースバード」を展開する寧波太平鳥時尚服飾は昨年、開始から2年に満たないドウイン経由の売り上げが、ネット通販全体の約2割を占めた。「Tモールの売り上げを超えるブランドもある」と、ドウインでの販売支援を手掛ける博観瑞思(ボーグアンルイスー)の蔡啓東CEOは語る。

 高級分野も売れ始めた。スタイリストの江美芸氏は約1年前に、地場デザイナーズブランドの販売を始めた。この1年で約20万人のフォロワーを開拓、GMVは1億元に達した。

 地場ブランドに後れを取る海外ブランドの参入も始まった。「H&Mが今年後半に始める」と業界関係者は明かす。

 現在のドウインは、海外ブランドが出店を始めた08~10年のTモールをほうふつさせる。海外ブランドや高級品の参入で、高成長がしばらく続きそうだ。