2022年夏季総合特集(5)/新時代に向けたわが社の素材・取り組み/東レ/帝人フロンティア/クラレトレーディング/ユニチカトレーディング

2022年07月26日 (火曜日)

〈東レ/「エコディア」N510本格販売/GR事業大きく伸ばす〉

 東レは「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に取り組んでいる。同ビジョンを通じグリーンイノベーション(GR)事業の売上高を2013年度の4631億円から30年度には4倍の規模に拡大する。

 繊維事業では、植物由来原料繊維とリサイクル繊維の開発・拡販に力を入れている。1月には、100%植物由来の原料から生産するバイオナイロン「エコディア」N510を上市。従来からある、原料の一部を植物由来にしたナイロンN610や部分バイオポリエステル「エコディア」PETも含めてグローバルな販促活動に力を入れている。

 バイオナイロンというのは珍しく、環境先進地域の欧州や海外アウトドアブランドから特に注目を集めている。23秋冬からスポーツ・アウトドア向けを中心に薄地織物、カットソー素材の販売を立ち上げる。

 最初に開発したのがポリエステルの「エコディア」PET。全体の約30%をバイオ原料が占める。植物由来の再生資源を粗原料とする合成繊維として当時、世界で初めてタイプⅠ環境ラベル(エコマーク)の対象商品に認定された。バイオ原料100%によるポリエステルも完成させており、「20年代のどこかで量産をスタートさせる」。

 1月14~16日、幕張メッセ(千葉市)で開催された「トウキョウアウトドアショー2022」に出展。「多くの方が興味をもって見てくれた」と言う。

〈帝人フロンティア/DXで事業強化や業務変革/粗利創出と販管費抑制に〉

 帝人フロンティアは、デジタル技術で企業を変革するDXの取り組みを加速している。2021年10月に立ち上げたDX推進室を中心にグループ全体でデジタル対応を図り、既存事業の強化や新事業の創出、業務変革などにつなげる。

 同社が掲げているグループのDX構想では、研究・開発(R&D)からCSR調達、原糸・原綿製造、マーケティング・販売(B2B)、消費者向け小売り、バックオフィス業務に至るまで、グループのバリューチェーン全体でデジタルツールを活用する。

 その中で志向するのは、既存事業強化と新事業創出、業務変革の三つ。デジタル環境の進化によって事業機会を新しく作るほか、アクセスの変化でビジネスモデルを変える。バックオフィスは業務フロープロセスの再構築などを進める。既存事業強化と新事業で粗利を作り、業務変革で販管費を抑える。

 22年度(23年3月期)は、来年度に始まる次期中期経営計画に向けたトライアルの1年に位置付けている。15、16の案件を試し、「それらの中から、次期中計で特に力を入れる案件を選定する」としている。

〈クラレトレーディング/ポートフォリオ変革/横串通し相乗効果狙う〉

 クラレトレーディングは事業ポートフォリオの変革を重視しており、「クロスディビジョンチーム(CDT)」の編成で事業に横串を入れ、商品開発や販路開拓で相乗効果を発揮させるための取り組みに力を入れている。

 ベトナムにはスポーツOEMビジネスを強化・拡大するため、まず縫製で進出したが、その後、クラレグループの他の事業のベトナム進出が相次ぎ、「現地で相乗効果が出始めている」。

 商品開発では、スポーツやアウトドア向けの新素材開発を強化しており、既に「フィブレスタ」「スパンドール」を完成させている。

 フィブレスタはグリップ性を付与した特殊ナイロン系の原料と酢酸ビニル系水溶性樹脂「エクセバール」とを組み合わせた海島構造の複合糸。エクセバールを溶解することで島部分のナイロン極細糸を形成するもの。ポリエステルマイクロファイバーの生産にはアルカリ原料が使われるが、フィブレスタは水を使うため、「環境にも優しい」。

 フィット感が求められるインナーウエアやインテリア、手袋、靴下、サポーターをターゲットとする開発を急いでおり、2023年度からの本格販売を開始する。

 スパンドールは衝撃吸収性に優れた樹脂を繊維化したもの。衝撃を吸収する繊維は珍しい。衝撃を吸収することを生かし、疲れにくいソックス、ラケットのグリップ、ウオーキングシューズなどで商談を進めており、22年度中の販売を目指す。

〈ユニチカトレーディング/新事業開発室での取り組み強化/産官学で感染防護衣〉

 ユニチカトレ―ディングは2020年4月に立ち上げた新事業開発室による取り組みを強化している。ネット通販のような新規流通を通じ、新たな販路開拓を精力的に進めている。

 昨年4月にDX推進グループとSI(セーフティイノベーション)推進グループを設けた。前者はECサイトやクラウドファンディング(CF)を活用した取り組みを担当。後者は安心、安全に貢献するアイテムの開発を進めている。

 この間、CFマクアケを通じ、繊維メーカーらしいこだわりで開発した5アイテムを投入し、いずれも目標金額を超過達成した。

 このほど、「夏の夜もさらっと快適気持ちいい。日本の技術で作る天然素材の爽やか敷パッド」を商品化。さらっとした快適な肌触りが特徴の寝具を売り出した。価格は1万円。プロジェクトは6月27日~7月24日に行なわれ、目標金額の60万円を大きく上回った。

 広島国際大学、消防庁とは産官学連携で救急隊員が着用する感染防護衣の開発に取り組んでいる。今年から13の自治体で社会実装を始め、早ければ23年度から販売がスタートする。

 新型コロナウイルス禍が徐々に収束に向かう中、「高級ホテルでの需要が回復している」とみており、ポリ乳酸繊維「テラマック」で商品化したスリッパやクリーニング袋を提案、「早ければ23年度からホテルとの取り組みが滑り出す」。