インドスポーツ産業/27年に1千億ドル、最大は衣料品/年平均21%の成長率

2022年07月28日 (木曜日)

 インドのスポーツ産業は2020~27年に年平均成長率(CAGR)21%で伸び、1千億ドル市場に急拡大する見通しだ。地場金融サービス企業アナンド・ラティ・ウェルスの調査で分かった。部門別では衣料品が420億ドルで最大となるが、伸びでは競技の放映や賭博アプリを含むメディアが50%で最も高いと予測する。国内に15~45歳の若い世代が4億人以上いる上、可処分所得の増加によって新たな有望消費市場に育つとの見方だ。

 アナンド・ラティ・ウェルスは、インドのスポーツ産業の市場規模は20年の27億ドルから、27年には1千億ドル超に拡大し、同期間のCAGRは21%と予測する。全体の成長要因として、27年には経済が5兆ドル規模に膨らみ、人口の55%が中間所得層になるとみられることや、国民の中位年齢(人口を年齢順に並べた中央値)が28歳と若いこと、インターネットの急速な普及、容易な決済アクセスの浸透などを挙げた。一方、課題として、公共スポーツインフラの未整備やスポーツ産業への公共投資の不足、政府や団体・協会の主導力の未熟さ、スポーツ用品やイベントへのGST(消費税)率の高さなどを指摘する。

 ただ、十分な成長要因に支えられ、各種競技の商業化、女性の参加率の上昇、栄養補助食品への注目度が高まり、「医療観光にまで商機をもたらす」とみている。

〈親の意識改革で好循環も〉

 アナンド・ラティ・ウェルスはさらに、スポーツ産業を▽衣料品▽栄養食品▽用具▽ゲーム▽メディア▽フィットネスセンター――の6部門に分けて、それぞれの動向を調べた。市場規模を部門別に見ると、衣料品は27年に420億ドル(CAGR17%)に拡大すると予測。以下、栄養補助食品が240億ドル(同19%)、用具が130億ドル(18%)、ゲームが50億ドル(30%)、メディアが130億ドル(50%)、フィットネスセンターが60億ドル(40%)の順。

 同社は、インドの人口動態だけでなく、国民のスポーツに対する意識も「市場に伸び代があることの裏付けになる」と分析している。インドは62%が「スポーツに関心がある」が、「競技している」のはわずか1%にとどまる。「インドは競技することよりも、見ることを好み」(アナンド・ラティ・ウェルス)、競技人口がいわば、手付かずの市場というわけだ。

 他国と比較すると、シンガポールは「スポーツに関心がある」との回答が76%に対し、「競技している」が33%。米国はそれぞれ75%、35%、欧州は70%、30%、中国は65%、30%と、競技者が一定数いる。インドで競技者が少ないことについて、アナンド・ラティ・ウェルスは「親が、子供のキャリアとしてスポーツをさほど好意的に捉えていないことが背景にある」と指摘する。

 「スポーツを仕事として選択することに親が協力的か」との問いに、「いいえ」との回答は18歳未満が58%、18~25歳が50%、25~30歳未満が35%と、若い世代ほど進路を決めるに当たって、親が前向きでないことが浮かび上がった。

 そのため、「スポーツの商業化が活発化すれば、競技者、視聴者、求職者の好循環が生まれ、スポーツ産業全体の底上げにつながる」と強調する。

〈「クリケット一強」の分散に期待〉

 他方、スポーツ振興の資金源ともなるスポンサーが「クリケット」に偏重していることも産業拡大の上で課題とみている。スポンサー料を競技別に見ると、20年はクリケットが全体の64%を占め、次いでサッカーが22%となり、これら2種目で全体の8割強を占める。サッカーの割合は15年の18%に比べて、上昇傾向にあるが、クリケット一強といえる。

 「インドはクリケット以外にリーグ戦がないこともあり、スポーツの視聴者数の81%はクリケットに集中している」(アナンド・ラティ・ウェルス)。カバディ(8%)やレスリング(6%)、サッカー(3%)、ホッケー(2%)などの視聴者は少数派で、クリケットとは大きな隔たりがある。米英や豪州ではサッカーやラグビー、バスケットボール、野球、テニスなどに視聴者が分散しているのとは対照的だ。

 ただ、インドでも英国のプロサッカー1部リーグ「プレミアリーグ」への人気は高く、「同国のサッカー振興に寄与している」と指摘する。サッカーだけでなく、その他のスポーツも商業化に取り組んでおり、インド国民のスポーツに対する関心が刺激され、嗜好(しこう)の変化が進んでいくと予想する。[NNA]