特集 スポーツ&アウトドアウエア(2)/素材編/サステ需要に応える開発力/クラレトレーディング/レンチング/ユニチカトレ―ディング/YKK

2022年08月02日 (火曜日)

 スポーツ・アウトドアウエア市場では、サステイナビリティーへの取り組みが世界基準で求められることが多い。その実現に向けては、先進技術を生かした製品開発を続ける素材メーカーが大きな役割を果たしている。

〈環境配慮型で新素材/クラレトレーディング〉

 クラレトレーディングは23年秋冬向けのスポーツ素材で、環境配慮型素材「エコトーク」を拡充する一環として、全くの新原料で開発した新素材の販売を開始する。

 同社はペットボトル再生繊維を中心とする素材群をエコトークブランドにくくり販促を強化している。2022年度からスタートさせた中期5カ年計画を通じ、ポリエステル長繊維に占めるエコトークの比率を「限りなく100%に近づけたい」との意欲を示す。

 クラレグループは自動車やスポーツ・アウトドアといったコンセプトを掲げたセグメントマーケティングに取り組んでおり、同社はスポーツ・アウトドアに参画する。

 この間、ウェブ展を開催しており、新たに開発した「スパンドール」「フィブレスタ」が最も注目を集めていたと言う。

 スパンドールは衝撃吸収性に優れた樹脂を繊維化したもの。ソックスやサイクリング用パンツ向けで商談に取り組んでいる。

 フィブレスタは特殊ナイロンエラストマーと酢酸ビニル系水溶性樹脂「エクセバール」を複合した海島繊維から後者を溶出したマイクロナイロン。溶出にアルカリ減量を必要としないため、環境負荷の低減にもつながる。優れたグリップ性を特徴とする。

〈注目高まる“植物由来”/レンチング〉

 レンチングの再生セルロース繊維「テンセル」への注目がスポーツウエア・シューズ分野でも高まってきた。特に木材パルプが原料という“植物由来”や生分解性への評価が高く、国内外で採用が相次ぐ。

 最近ではアディダスがシューアッパーの素材としてテンセルを採用し、植物由来と生分解性を打ち出す。日本でもゴールドウィンの「ニュートラルワークス」ブランドがテンセル・オーガニックコットン混Tシャツで採用した。麻炭による顔料染めも使い、やはり植物由来と環境配慮を打ち出している。

 レンチングもスポーツ・アウトドア分野での提案を強化し、ドイツ・ミュンヘンで開催された機能性ファブリックの国際展示会「パフォーマンスデイズ」で、テンセルを使ったスポーツ・アウトドア向け生地コレクション「ツリー・クライメイト」を発表した。

 スポーツ・アウトドアのベースウエア、ミドルウエア、アウターウエアの各レイヤーアイテムに向けた多彩な生地や中わた材にテンセルを提案する。展示会ではサンプルとしてテンセル100%の“完全植物由来”中わたベストも展示し、こちらも採用が決まるなど注目を集めた。

〈「キャストロン」を前面に/ユニチカトレ―ディング〉

 ユニチカトレ―ディングは寒い時期のさまざまなシーンで活躍する吸放湿保温素材、バイオナイロン、再生ポリエステルなどを前面に23秋冬向けのスポーツ素材商戦に臨んでいる。

 同社によると、新型コロナウイルス禍に伴い屋外で気軽に行えるウオーキングやアウトドアレジャーへのニーズが高まり、高機能ウエアを普段着として着用するライフスタイルが浸透してきた。

 一方で、環境問題への関心の高まりからサステイナブルが求められバイオマスやリサイクル素材などが欠かせなくなっているという。

 このため、国内外から引き合いを集めるバイオ原料100%によるナイロン11「キャストロン」、吸放湿保温素材「ハイグラ・ウォーム」、再生ポリエステル「エコフレンドリー」を打ち出し秋冬商戦に臨んでいる。

 これらを5月24日から26日、東京都中央区日本橋のプラザマームで開催した「ユニチカ・機能素材2023/24年秋冬素材展」でPR。「大勢のお客さんが来てくれた」と言う。

 22年度は「4月以降、荷動きが戻ってきている」とみており、追加オーダーが増えてきている。市況好転を追い風に23秋冬では20%の増販を目指している。

〈YKK「フラットニットアクアガード」/ソフトな止水性ファスナー〉

 YKKの「アクアガード」は、ファスナーテープの表面をポリウレタンフィルムでラミネート加工し、止水性を高めたファスナー。雨水が染み込みにくいという機能性により、スポーツやアウトドアに向けたアイテムに多く採用されてきた。

 種類の豊富さも特徴の一つに挙げられる。ファッション性にこだわり、チェーン部分に好みのデザインをプリントできる「アクアガード ―プリファ」、ファスナーテープとフィルムで2色展開の「アクアガード ―ツートン」、フィルムをメタリック調にした「アクアガード メタリック調フィルム」など、幅広い用途に対応できる商品をそろえた。

 その中でも「フラットニット  アクアガード」は、柔らかさ、薄さ、軽さを追求したため、生地への〝なじみやすさ〟が際立つ。

 フラットニットは、ニットテープの製造時にエレメント(務歯)を編み込んだコイルファスナーの一種。端正なシルエット表現も可能にする。

 フラットニット アクアガードNo.45は、通常のアクアガードNo.5と比較しても、柔軟性は約2・7倍であり、チェーン厚も約70%になっている。リブなし仕様のため、直線的に縫製することができる。

 挿入補助スライダーを使用しており、スライダー開口部の下面が大きく蝶棒が差し込みやすくなっている。