東レ/非可食成分からナイロン66/世界初、原料生成に成功

2022年08月25日 (木曜日)

 東レはこのほど、植物の非可食成分から得た糖を原料として、ナイロン66原料のアジピン酸を生成することに世界で初めて成功した。微生物発酵技術と情報生命科学技術を応用したもので、これにより非可食バイオマス原料によるナイロン66樹脂・繊維生産の可能性が広がる。今後は重合試作や量産化技術の開発を進め、2030年ごろの実用化を目指す。

 衣料品やエアバッグ、樹脂製品など使われるナイロン66は通常、石油由来原料から化学合成したアジピン酸とヘキサメチレンジアミンを重合して生産する。近年、サステイナビリティーへの要求が高まる中、非石油由来の環境配慮型ナイロン66を求める声が高まっていた。アジピン酸は化学合成の過程で温室効果ガスである一酸化二窒素が発生することも課題となっていた。

 これに対して東レは、食料と競合しない非可食植物の糖から微生物発酵によってアジピン酸中間体を生成することに成功した。糖からアジピン酸を生成する微生物を世界で初めて発見し、これに遺伝子組み換えなど遺伝子工学技術と、発酵経路設計など情報生命科学技術を活用することで合成効率を当初の千倍にまで高めることに成功している。これらの技術は新エネルギー・産業技術総合開発機構、産業技術総合研究所、理化学研究所との共同研究によって実現した。

 アジピン酸は精製過程で中間体の濃縮工程を経るが、従来の熱エネルギーによる乾燥方式ではなく、逆浸透(RO)膜を利用して中間体を濃縮する方式を開発した。これにより濃縮工程での消費エネルギー削減につながる。製造工程での一酸化二窒素の発生も全くない。このため地球温暖化抑制への貢献も期待できる。

 同社は現在、作物残渣(ざんさ)など食用に適さない植物資源から糖を製造するプロセスの実現に向けた実証検討にも取り組んでいる。そこで製造する糖をバイオマスアジピン酸の原料に使用することで、非可食バイオマス原料から化学品や繊維・繊維まで製造するトータルサプライチェーンの構築を目指す。