帝人・アラミド事業本部/サステ軸に事業成長を/送電ケーブルなどの需要に期待

2022年08月31日 (水曜日)

 帝人のアラミド事業本部は、サステイナビリティーを軸に事業の成長を図る。アラミド繊維の市場は拡大基調にあるが、中でも再生エネルギーの送電ケーブルや洋上風力発電の係留ロープなどの需要拡大が期待できるとみる。ペーター・テル・ホルスト帝人グループ執行役員アラミド事業本部長は「次期中計で生産能力増強を検討する可能性もある」と示唆した。

 アラミド繊維の需要は、新型コロナウイルス禍の影響からいったんは落ち込んだものの、急激な回復を見せている。さまざまな分野・用途で使われているが、今は全ての市場が良いと言う。安全に対する意識が高まる中、今後も年率10%程度で市場が成長すると予想されている。

 2022年度(23年3月期)の販売について、ホルスト帝人グループ執行役員は「原燃料価格高などもあり、楽観視はしていない」としつつ、市場自体が拡大していることから「ビジネスは順調に推移する」とみている。パラ系アラミド繊維「トワロン」の生産能力増強も今年度中に完了するなど、成長への体制も整う。

 パラ系アラミド繊維では、既存分野の継続強化に加えて、新市場の需要に目を向けており、その一つが再生可能エネルギーだ。世界では、ある国・地域で発電した電力を海底ケーブルで別の国・地域に送る海底送電プロジェクトが進められており、この海底ケーブルなどが新たな市場になると捉えている。

 アフリカでは再生可能エネルギーでビジネス機会が増えつつあり、送電ケーブルの需要が出てくる可能性がある。洋上風力発電用の係留ロープの需要も拡大が見込めるとする。そのほか、リサイクルにも注力する方針で、ケミカルリサイクルについても実用化に向けて取り組んでいる。

 能力を増強し、販売も順調なパラ系アラミド繊維は、23年度に始動する次期中期経営計画でさらなる生産能力増強を検討する可能性も出てきた。メタ系アラミド繊維は、「コーネックス・ネオ」で多色展開を可能にしており、防護衣料市場でさらに収益性の高い分野での展開に力を入れる。

〈「サステナビリティ・レポート」/テイジン・アラミド〉

 帝人グループのテイジン・アラミド(オランダ・アーネム市)はこのほど、アラミド事業における持続可能性に関する2021年度の取り組みをまとめた「サステナビリティ・レポート」日本語版を発行した。同レポートは13年から発行しているが、日本語版は初めて。

 同グループが掲げる「2050年ネットゼロ」を実現するためのアラミド事業における取り組みを包括的に紹介している。

 レポートでは、パラ系アラミド「トワロン」の加工工程で発生した端材や使用済み製品に用いられていたものの約5割をリサイクル向けに回収していること、使用済みアラミド製品の回収やリサイクル品を使用した試験的な生産体制を強化するため欧州の顧客企業やリサイクル企業、専門機関など七つの組織とパートナーシップを結んでいることを紹介している。