特集 カーペット(2)/環境配慮製品に脚光/スミノエ/川島織物セルコン/サンゲツ/アスワン/東リ

2022年09月26日 (月曜日)

〈約35万平方メートル受注/環境面が評価受ける/スミノエ〉

 スミノエは、住江織物グループの住江テクノとともに、森ビルが設計した虎ノ門・麻布台プロジェクト向けで、水平循環型リサイクルタイルカーペット「エコス」約35万平方メートルを受注し、7月に納入を始めた。同プロジェクト向けもあり、2023年5月期のタイルカーペットの売り上げはここまで、前年同期を上回る。

 同社は従来埋め立て処分するしかなかった使用済みタイルカーペットの再資源化に取り組み、11年に使用済みタイルカーペットのバッキング材を再生して、再びバッキングに使用する循環型リサイクルシステムを確立。再生材比率は最大84%、二酸化炭素排出削減貢献量は最大43%に上り、同社のタイルカーペットの9割以上に採用される。他社に先駆けて地道に取り組んできたことがアドバンテージとなっている。

 一方で6、7月ごろから全体の需要が少し落ち込んでいると懸念する。コスト増加も課題に挙げる。塩ビメーカーなどが電気代や燃料費などのエネルギーコストの上昇を理由に値上げする動きが今夏ごろから目立ってきていると警戒する。今秋、前年以降第3次となる値上げを行い浸透を図る。

〈付加価値高めた値上げ/一部値下げも実施/川島織物セルコン〉

 川島織物セルコンは床材事業で、強みのデザイン性や環境対応など高付加価値化で拡販を図る。4~9月商況はオフィス案件を中心に前年同期比増で推移。昨夏来懸案だったBCFナイロンの安定調達にもめどを付けた。

 9月にコントラクト向け床材を値上げしたが、価値を高めた新商品を軸に売り上げを伸ばしている。けん引するのはタイルカーペットの「カラーバンク」。値頃感のある無地調が特徴だが、新たに加えたさり気ない柄物、SEK抗菌・抗ウイルス加工マーク取得の“カラーソリューション”など、プラスアルファの付加価値品が健闘する。

 ハイエンドの「モードスタイル」を含め、関西を中心に活発化するホテル案件獲得にも力を入れる。

 一方、値上げ一辺倒の世の中で少しでも喜んでもらおうと、中高級ゾーンの「アートバンク」で人気商品を値下げした。特に“トランスレーションⅡ”は12色に拡大した上で約5%値下げし、好調な売れ行きを見せる。

 堅調な住宅向け床材は、新商品投入の11月を機に値上げに踏み切る。「ユニットラグ」では再生ナイロン100%(「エコニール」)使い、ビニル床タイル「ホームベスタ」では新商品全点抗菌仕様など、値上げに見合う高付加価値化を訴求する。

〈再生材使いの商品提案/評価高く採用実績も伸長/サンゲツ〉

 サンゲツはオフィス向けに見本帳「2021―2023NT700カーペットタイル」の提案を進める。同見本帳の商品はリサイクル素材など環境配慮を意識しており採用実績も伸びつつある。

 一般住宅の新築着工件数は伸び悩んでいるほか、ホテルや医療・商業施設といった物件の再開発も停滞気味。一方で、オフィスは今後の不透明感があるものの、着工や開発は横ばいで推移する。

 「NT700」は再生ナイロンをはじめとしたリサイクル素材を使用しながらも、汎用品並みの価格に抑え、豊富なデザインが特徴。こうした点が顧客からの高い評価につながっている。

 ほかにも、1月に発刊した見本帳「2021―2023DTカーペットタイル」も展開。環境配慮の商品に加えて高い意匠性が特徴だ。NT700を含めて両見本帳でオフィス向けに販売拡大を狙う。

 タイルカーペットでは、建築家の隈研吾氏とコラボレーションした「カゲトヒカリ」も訴求する。高級ゾーンのホテルや商業施設向けに提案を進めており、販売は想定に近い状況で推移する。

〈22年4~9月期は前期並み/快適性とサステ追求/アスワン〉

 アスワンの2022年4~9月期業績は、前年同期並みで推移する。コントラクト用途は、市場環境同様に回復基調にあるが、ホーム用途は巣ごもり需要が一巡したことや原材料費をはじめとするコスト上昇による値上げなどで低調な動きとなっている。

 23年3月期の下半期も「この傾向は続く」としながらも、8月に発売したオーダーカーペット「ウォールトゥウォールカーペット」(24柄130アイテム)などで、新たなカーペット需要の開拓や暮らし方を提案する。「使う人にとって良いインテリアであること」という前提条件を満たした上で、サステイナビリティーを追求した。海に捨てられた漁網などの廃棄物をリサイクルした100%リサイクル糸「エコニール」をパイルに、ペットボトルをリサイクルした「エコフュージョンバック」を裏材に使用したアイテムをラインアップ。快適性にもこだわり、肌触りと踏み心地の良い一枚に仕上げた。

 ソニーグループが米のもみ殻を原料に開発した天然由来の多孔質カーボン素材「トリポーラス」を練り込んだ不織布を基布に使用したカーペットも提案する。羊の毛を染色や漂白せずそのまま生かした無染色ウールや、優良種のメリノを使用したウールカーペットも打ち出す。

〈廃材再資源化を推進/原着糸の内製化比率向上/東リ〉

 東リは、タイルカーペットのリサイクルや、原着ナイロンの内製化の推進、第3次値上げの浸透をテーマに挙げる。

 6月に発売したタイルカーペットの裏材のバッキング層の一部にリサイクルチップを使用した「GA―3600サスティブバック」が、デベロッパーや設計事務所に好評だ。21年にカーペットの主力生産拠点である滋賀東リで「タイルカーペットリサイクルプラント」を本格稼働させ、タイルカーペット廃材をパイル層とバッキング層に分離することなく、再生利用できるようにした。年間処理量は最大2300㌧で、取り組みを推し進める。

 カーペット用ナイロン紡糸機も増設する。20年に、カーペット用原着ナイロン6を生産するナイロン紡糸機を滋賀工場に導入。土日を含めて24時間フル稼働しており、さらに内製化比率を高めるため、2号機の導入を決めた。既に発注済みで、「来春あたりの稼働」を予定する。

 コスト上昇への対応では、20日受注分からカーペットを含めた取引価格を10~15%値上げする。前年以降3度目の値上げとなり、浸透を図る。

〈「ドモテックス2023」/年1月 3年ぶりの開催〉

 欧州を代表するカーペットと床材の国際専門展示会「ドモテックス」が、2023年1月12~15日に、ドイツのハノーバー国際見本市会場で開催される。20年1月以来となる今回は、「FLOORED BY NATURE」(自然に囲まれた床、自然界の床)を基調テーマに実施する。

 床材産業、生活空間において、健康的で自然(環境)に配慮した持続可能性を訴求。基調テーマの下、「市場をつなぐ」「意識的な生活」「カラフルな自然」を切り口に、繊維系・硬質系の各種床材から床材設置用機器、関連技術まで幅広く展開する。

 市場をつなぐでは、エネルギーや生産コストの上昇、オンライン取引プラットフォームなどにも対応し、売り場や国境を越えて顧客とつながる可能性を提供。意識的な生活では、革新的なソリューションの実装と材料の循環的使用(循環経済)を前面に押し出す。カラフルな自然では、自然をデザインやパターンのインスピレーションの源泉として提示する。

 特別展示エリア「ザ・グリーン・コレクション」も新設。サステイナビリティーをテーマに、製品展示からプレゼンテーション、カンファレンスも行う。