東レ/肌に優しいSB不織布/改質ポリエステルで親水性持続
2022年09月30日 (金曜日)
東レはこのほど、親水性が半永久的に持続することで肌に優しいポリエステルスパンボンド(SB)不織布を開発した。衛生材料で一般的に使われているポリプロピレン(PP)SB不織布と同等の柔軟性も実現した。今後、紙おむつやマスク、生理用品など衛生材料用途に適したSB不織布として量産体制構築を目指す。
衛生材料用のSB不織布は柔軟性が求められるため、ポリエステルよりも柔軟なPPを使用するのが一般的。ポリエステルとPPはともに疎水性ポリマーのため、紙おむつやマスク、生理用品など親水性が必要な用途では不織布に親水剤を塗布する加工が行われている。しかし、繊維表面への塗布のため、通水時に親水剤が流出し、親水性が低下するという課題があった。
この課題に対して東レは、不織布の表面処理ではなく、共重合によるポリマー改質でポリエステルを親水化する研究を進めていた。このほど親水性を飛躍的に高めたポリエステルSB不織布の開発に成功した。
開発したポリエステルSB不織布は、ポリエステルに高分子量親水性ポリマーを共重合させたもの。共重合成分の構造と分子量を制御することでポリマーに特殊なドメイン構造(他の部分と明確に区別された領域が存在する構造)が発現することで繰り返し通水しても親水性が半永久的に持続する。ドメイン構造によって柔軟性も高まる。同社ではPPSB不織布と同等の柔軟性を確認したとする。
親水剤を塗布する必要がないため、親水剤に起因すると考えられる肌への刺激もないとする。実際に肌刺激の指標となる細胞毒性は検出されなかった。このため肌や粘膜に直接触れる紙おむつやマスク、生理用品などに適する。
既存設備の改造で生産が可能なことから、2023年度中にはサンプル供給を開始し、量産技術の確立を目指す。ポリエステルにバイオ原料やリサイクルを使用することも構想している。