2022年秋季総合特集Ⅳ(15)/トップインタビュー/カケンテストセンター/繊維ビジョン実現へ連携も/理事長 寺坂 信昭 氏/検査機関の存在・役割広める
2022年10月27日 (木曜日)
カケンテストセンター(カケン)は、今年度(2023年3月期)が最終の中期経営計画を進行している。東京事業所川口本所のバイオラボやインド・ベンガルール試験室を開設し、寺坂信昭理事長は「中計で掲げていた施策はほぼ実行できた」との認識を示す。次期中計では新分野の開拓や認知度向上などに力を入れ、持続的な成長を目指す。
――社会や経済は変化しています。繊維産業が進むべき道は。
マクロで言えば、経済産業省がまとめた「2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)」に繊維産業が進むべき道が示されていると思います。繊維産業にもさまざまな業界・企業が存在しているので、繊維ビジョンのどこに重点を置くかはそれぞれで異なりますが、いずれの場合も実現には縦横の連携や他業界との連携が必要でしょう。
ビジョンでは「新たなビジネスモデルの創造」「海外展開による新たな市場獲得」「技術開発による市場創出」「サステイナビリティーの推進」「デジタル化の加速」などが示されています。従来から取り組んでいることではありますが、カケンや検査機関にとっては全てが重要な要素です。さまざまな連携を図りながら実現に向けて歩を進めます。
――現在の経済環境をどのようにみていますか。
一つは新型コロナウイルス禍による変化があります。かつてはアフターコロナといわれていましたが、そうではなくウイズコロナを前提に物事を考えなければならなくなりました。商品に求められるモノも変わる可能性はありますが、サステイナビリティー重視の流れは変わらないと考えています。
もう一つはロシアのウクライナ侵攻による変化です。他の国を巻き込んだ政治的な対立と、距離を置こうとする第三者(国)の出現によって経済的・政治的分断が加速することが考えられます。物価高にも注視が必要です。インフレと景気停滞が同時進行するスタグフレーションに陥るかもしれないという懸念も拭い去れません。
――厳しい環境ですが、カケンの今年度上半期(4~9月)は。
前年同期の実績を上回り、計画のラインに沿って推移しています。海外は、新型コロナ禍で中国・上海のロックダウン(都市封鎖)などのマイナス要因がありましたが、全体の数字は悪くありません。ただ、日本国内に目を移すと、試験・検査件数は減少傾向が続いています。さらに言うと、全体的に上半期の後半から勢いが衰えつつあります。
――下半期以降は。
下半期に限ったことではなく、次年度以降にもつながるのですが、顧客との関係強化、非繊維などの新分野の開拓、経費削減、カケンの持続可能性のための人材育成・確保、働き方改革などに取り組みます。事業を取り巻く環境には不安が残りますが、これらの確実な実施によって単体での黒字確保を図ります。
――今年度で中計が終了します。成果は。
新型コロナ禍の影響が小さくなく、当初予定していた計数目標については見直しを行いました。とはいえ、東京事業所川口本所でバイオラボが立ち上がり、インド・ベンガルール試験室を開設することができました。中計で取り組もうとしていた施策はほぼ実行できたのではないかと思っています。
――次期中計の方向性を教えてください。
これまで国内は、大阪事業所の生物ラボと東京事業所川口本所のバイオラボを中心とする機能性試験が順調でしたが、次の試験・検査を模索していくことが不可欠です。新分野では中国を中心に実績のあるCSR監査の拡大、CO2排出量算出や水循環などにも目を向けます。海外は中国一極集中ではなく、どの国・地域での展開が良いかを考えないといけません。
検査機関は社会に対して重要な役割を果たしています。新型コロナ禍でマスク需要が拡大し、カケンの名前が知られるようになってきましたが、まだまだ不十分です。カケン、そして検査機関の存在や役割を企業はもちろん、消費者にもっと知ってもらいたいと考えています。そのため各種展示会への出展やセミナー開催などを実施します。
〈秋と言えば/紅葉とイチョウ〉
紅葉とイチョウ。秋と言われて寺坂さんが思い浮かべるのは、この二つなのだとか。紅葉について「京都の紅葉の赤は、東京で見る赤とは全く違う」と強調し、「永観堂は特にすごかった」と話した。一方のイチョウは、東京都内のあちこちで見ることができ、神宮外苑のイチョウ並木などが名所として多くの人に知られている。今年は紅葉狩りや並木散策の予定は今のところなく、「近所の公園のイチョウを楽しむつもり」と語った。
〈略歴〉
てらさか・のぶあき 1976年4月通商産業省(現経済産業省)に入省。2004年6月経産省大臣官房審議官、07年7月経産省商務流通審議官、09年7月原子力安全・保安院長、11年8月退官。15年6月冠婚葬祭総合研究所社長、17年8月互助会保証社長を経て、20年7月からカケンテストセンター理事長。