特集 スクールユニフォーム(6)/学生服メーカー大手3社トップインタビュー/安定した生産基盤の確立を/トンボ/菅公学生服/明石スクールユニフォームカンパニー

2022年10月31日 (月曜日)

 学生服メーカー大手3社は今春、全国的に広がるブレザー化の影響もあり、モデルチェンジ(MC)校からの受注が好調で、3社とも増収基調となった。今春に過去最高となったMC校数は来春、さらに増えるとみられる。3社は引き続き受注獲得に動く。一方で、全国的に縫製工場の生産キャパシティーが足りず、生産がタイトとなっている。ブレザーの増加など生産品目も年々変化するほか、小ロット多品種の傾向が強まる中、安定した生産基盤を確立することも課題となる。

〈トンボ/社長 藤原 竜也 氏/足で稼ぐ営業にも注力〉

――2022年6月期連結売上高は418億円(前期401億円)で、7期連続増収となりました。

 スクール、スポーツ、ヘルスケア、三部門とも増収を達成できました。

 スクール売上高は325億円(前期比4・7%増)で、東京本社や各支店に加え、子会社の瀧本(大阪府東大阪市)が健闘し、私学大型校での制服採用も貢献しています。スポーツの売上高は65億8千万円(2%増)。部活、マーチングウエア含めて約170校の新規校を獲得できました。

――今期に注力する部分は。

 営業部門においては、従来のアナログな営業とリモート営業とを組み合わせたハイブリッド型の営業を推進していきます。ただ、新型コロナ禍も落ち着きを見せつつある今、アナログな部分を今よりも取り戻し、今期は足で稼ぐ営業にも力を入れていきたいと考えています。

 ECにも注力します。今期に入り、EC事業本部を立ち上げ、今月初めには新たなECサイトもオープンさせ、店頭商品の販売をスタートしています。中国のネットモールでの販売も始めており、状況を見ながら販売促進を行っていきます。

――来入学商戦に向けての進捗(しんちょく)は。

 来春も引き続き、性的少数者(LGBTQ)へ配慮する流れから、中学校を中心にモデルチェンジ(MC)が活発です。当社でも計画通りにMC校からの受注を獲得しています。

――今春、学生服業界では新型コロナなどの影響で生産がタイトになりました。

 当社工場や協力工場でも高齢化が進むほか、外国人技能実習生が新型コロナの影響で当初の計画通りには入国できていません。LGBTQに配慮した女性体型の生徒向けスラックスの増加も生産体制に影響しています。国内縫製キャパシティーの確保と並行して、海外生産対応も増やしていかなければならないでしょう。

――設備投資は。

 今年7月、茨城県笠間市の物流センターの建設をスタートさせました。来年7月に完成予定で、2階建て、延べ床面積1万6500平方㍍の倉庫となる予定です。

――今期から新3カ年計画が始まっています。

 売上高460億円が目標。顧客満足につながる営業に取り組みながら売り上げ拡大につなげていきます。今年、学校制服などで、ファッションブランド「ミナ ペルホネン」を展開するミナ(東京都港区)と業務提携及びライセンス契約を結んだほか、スクールスポーツでは「アンダーアーマー」ブランドの体育着を展開するなど、拡販に向けた新たな取り組みも始めています。学校制服、体育着の獲得競争を制したものが業界を制すると思います。改めて営業に注力していきます。

〈菅公学生服/社長 尾﨑 茂 氏/生産スペース確保に動く〉

――2022年7月期の結果と総括を。

 売上高は403億円(前期386億円)となり、当初目標としていた400億円を達成できました。性的少数者(LGBTQ)への配慮で中学校を中心に制服をブレザーに変える動きが活発です。当社もこの波に乗り、MC校からの受注を堅調に獲得できました。

――来入学商戦に向けた進捗(しんちょく)は。

 引き続きブレザー化が進行しており、モデルチェンジ(MC)案件は非常に多いです。

――今期の設備投資の予定について。

 営業から生産、物流までをつなぐ業務センターは今年度中に生産までをつなげる見込みで、計画通りに実行できています。情報の一元化によって、精度の高い生産計画を立てることのできる仕組みを作ります。昨年、レクトラ製のCAM(自動裁断機)を導入しましたが、生産面において効果が出てきています。

 物流面では、岡山県倉敷市児島に建設している物流倉庫が今年12月に完成する予定です。西日本の拠点として活用をしていきます。

――全国的に縫製工場のキャパシティーがいっぱいになっています。現状と来春に向けた対応策は。

 新型コロナウイルスの水際対策も緩和され、外国人技能実習生が入国できるようになってきました。ただ、まだ人数は少なく、生産の不安定さに変わりはありません。

 従業員が新型コロナ感染者の濃厚接触者になって休むなど、依然として出勤率は悪いです。当社でも協力工場の開拓による縫製スペース確保に動いています。ブレザーの増加によって詰め襟生産ラインをブレザーのラインに置き換えるなど、生産背景の整備も進めています。

――デジタル化に向けた取り組みについてはいかがですか。

 AI(人工知能)を使った「スマート採寸」を推進しています。ウイズコロナの時代、希望する顧客は増えており、来入学商戦に向けても採用数は増えていくでしょう。一方、リアルで採寸をしたいという声もあるため、ケースに合わせて対応していきます。

――教育ソリューション事業の取り組み状況について教えてください。

 非認知能力の育成やキャリア教育などの提案によって、学校との関係づくりにつながっています。今月18~20日に東京都内で開いた展示会でも同事業について発信をしました。

――原料価格など、コストアップが深刻です。

 素材などの値段の上り幅が尋常ではありません。いくらかは販売価格へ転嫁しないと生きる道はないでしょう。

 〈明石スクールユニフォームカンパニー/社長 河合 秀文 /12月期に向け順調〉

――今上半期(2022年1~6月)の結果は。

 学生服、体育着ともに順調です。性的少数者(LGBTQ)への配慮で進むブレザー化が今春も活発で、モデルチェンジ(MC)校からの受注獲得が好調に進みました。今春は新入生の生徒数が減らなかったことに加え、価格改定に向けて早くから動いていたことも功を奏しました。

――来入学商戦に向けての進捗(しんちょく)は。

 今春、過去最高となったMC校数が来春はさらに増えるものとみています。これに伴い、新規校の獲得も増えており、まずは制服の仕様の確定を急ぐとともに、原材料の手配を含めて例年よりも早めに動いています。

――今下半期に注力する部分について。

 下半期は再来期の営業のスタートにもなってきます。展示会は拠点ごとに細かく行いながら顧客にアピールしています。

 営業面では都市部を押さえていきます。今年7月に横浜営業所(横浜市)を開設しました。これまで賃貸だった豊橋営業所(愛知県豊橋市)を先月、建物を新築する形で移転し機能を拡充させました。

――設備投資の予定は。

 物流拠点の宇部テクノパークアソートセンター(山口県宇部市)の敷地内に今年新設した物流施設は8月から本格稼働を始めています。来春に向けての備えを進め、上がってきた商品をしっかりと納めていきます。

 同施設へは縫製の基幹工場、宇部工場の倉庫部分も移設しました。工場の空きスペースには検査や仕上げ、裁断スペースを新たに設けます。年々強まる多品種小ロット化に対応できるように生産力をさらに高めていきます。

――今春は新型コロナウイルスの影響などで生産がタイトな状況となりました。

 協力工場のキャパシティーが縮小していることに加え、外国人技能実習生も新型コロナ禍前に比べて減っています。新規の協力工場を開拓していくとともに、海外生産の拡充も進めていかなければなりません。

――AI(人工知能)による採寸など、デジタル化の進展は。

 直販校を中心に提案を進めているAIによる採寸の採用は増加傾向です。来春も新たに100校以上の獲得を見込んでおり、累計で350校、約6万人の人々が活用することになりそうです。

 AIを使った採寸を取り入れることで、受注活動から生産、物流までの一連の流れがスムーズに行えるようになり、効率化にもつながります。

――SDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みについて。

 委員会を作り、各部署で目標を掲げながら取り組んでいます。廃棄する段ボールの削減など、現場からの意見がたくさん出てきており、やって良かったと感じています。

 再生ペットボトル由来の原料を100%使った素材、「+(プラス)リープ100」も評価をいただいています。

〈来春のMC校数は600校超えか/ニッケ調べ/増加傾向は数年続く〉

 ニッケの調査によると、来入学商戦の制服モデルチェンジ(MC)校数が、10月の段階で687校(中学校533校、高校154校)となりそうだ。今春に432校で過去最高となったMC校数だが、来春はこの結果を大きく上回る見通し。

 性的少数者(LGBTQ)に配慮する流れから、全国的にMCの波が広がっている。自治体単位で制服が一新されるケースも散見されるようになり、この勢いは数年続くという見方が強い。

 制服MCは1980年代にブレザーの流行によってスタートした。DCブランド制服の隆盛で90年に初めて300校を突破する。92年には414校となり、ピークを迎えた。ここ10年は150~200校程度で推移していたが、2020年に272校と、19年の155校から増加。21年は234校と減らしたが、今春は一転して急増、現在も勢いを維持している。

 中学校が多いという点が近年のMCの大きな特徴。詰め襟学生服、セーラー服の採用比率が高かった中学校でジェンダーレスなデザインのブレザーへと制服を刷新する動きが強まっているからだ。MCはこれまで高校の方が多い傾向が続いていたが、20年にそれが逆転(中学校163校、高校109校)。21年は中学校155校、高校79校、今年は中学校299校、高校133校で、中学校のMCが高校を上回る状況が続いている。

 都道府県では、今春は愛知県でMC校数が69校(中学校56校、高校13校)でトップに。次いで大阪府46校(同36校、同10校)、福岡県42校(同39校、同3校)、兵庫県27校(同23校、同4校)と続く。愛知県、福岡県などでは自治体単位で制服が変わる“統一型標準服”採用の動きが活発となっている。

 LGBTQへの配慮のほか、少子化などによる学校の統廃合もMCが増える要因の一つ。文部科学省の調査では、19~21年度の3年間に公立小・中学校の統合事例が437件あった。

 中でも小学校同士の統合が273件と最多。中学校同士の統合が94件、小学校と中学校を統合して義務教育学校を設置した例が51件、施設一体型の小中一貫校の整備を含む小学校同士、または中学校同士の統合が16件と続く。21年度だけでみても統合事例は152件ある。