帝人/次期中計で戦略見直し/複合成形材料事業を再構築
2022年11月09日 (水曜日)
帝人は2023年3月期が3カ年中期経営計画の最終年度となるが、目標達成が困難な状況となっていることから、来期から始まる次期中計で大幅な戦略見直しに取り組む。内川哲茂取締役兼社長執行役員は「目の前の収益悪化を食い止めることを最優先し、抜本的対策を含む計画にする」と強調した。
23年3月期は連結売上高1兆500億円(前期比13・4%増)、営業利益250億円(43・4%減)、経常利益290億円(41・6%減)、純利益160億円(30・9%減)を見込む。いずれも前回予想から大幅な下方修正となった。セグメント別では主力のマテリアル事業が売上高4850億円(25・9%増)と増収も、営業損失85億円(前期は57億円の損失)を見込むなど苦戦が続く。
マテリアル事業の中でも炭素繊維は航空機向け販売の拡大などで好調が続く見通しだが、アラミド繊維は欧州での天然ガス高騰や調達する主要消耗品供給に制約が生じていることによる生産性低下で利益が減少する見通し。複合成形材料も米国での労働需要逼迫(ひっぱく)による生産性低下やOEMの一部で発生している生産制約の解消が遅れることが利益を押し下げる。
このため23年3月期のEBITDA(営業利益+減価償却費〈のれん含む〉)は1千億円にとどまる見通しで、中計目標である1500億円を大きく下回る。特にマテリアル事業のEBITDAは280億円となり、中計目標の800億円から大きく乖離する。
現中計は自動車向け複合成形材料や航空機向け炭素繊維中間材料、地域密着型ヘルスケアサービスを「ストラテジック・フォース(将来の収益源育成分野)」、アラミド繊維や糖尿病治療薬などヘルスケア事業を「プロフィッタブル・グロース(利益ある成長分野)」と位置付け、「成長基盤の確立」をテーマに掲げている。しかし、ストラテジック・フォースは投資による一定の成果があるものの利益貢献が伴わず、プロフィッタブル・グロースも早急に収益構造の立て直しが必要と分析する。
内川社長は「現中計が掲げた『成長基盤の確立』は不十分な結果となった。来期から始まる次期中計はストラテジック・フォース分野の軌道修正も含めて戦力の大幅な見直しが避けられない」と話す。
このため今下半期から各事業とも収益改善策に取り組む。アラミドは原料調達・生産の分散化を検討する。複合成形材料は内製化・自動化を進めると同時に、グローバル拠点は売却を含む選択と集中を検討する。不採算案件からの撤退も進めるなど再構築に取り組む。その上で2月により具体的な収益改善策を盛り込んだ新中計を発表する。
〈売上高、利益ともに上方修正/繊維・製品事業〉
帝人の繊維・製品事業は23年3月期に売上高3200億円(前期比13・3%増)、営業利益95億円(68・4%増)を見込む。いずれも前回予想から上方修正した。
産業資材分野の自動車用途と衣料繊維がともに海外工場を中心に中国のロックダウン(都市封鎖)の影響から回復し、販売量が増加する見通し。商品構成も高付加価値品へのシフトが進むことや価格改定の浸透効果で利益率の改善も見込む。