特集 環境(9)/有力繊維企業/環境負荷低減に向け技術とノウハウ結集/ダイワボウレーヨン/東レ・オペロンテックス
2022年12月05日 (月曜日)
〈カーボンニュートラル本格化/BSIの検証で適正意見/ダイワボウレーヨン〉
ダイワボウレーヨンは、木材パルプを原料とし、生分解性もあるレーヨンを環境に優しい繊維として一段と打ち出す。このためカーボンニュートラルレーヨンの販売も本格化させる。適正にカーボンニュートラルを実現しているか第三者による検証も受け、このほど適正意見を得た。
同社は今年4月からGHG排出権クレジット購入を導入することでカーボンニュートラルを実現したレーヨン短繊維を販売している。適正にカーボンニュートラルを達成していることを示すためにPAS(公開仕様書)規格に基づく適格声明書(QES)を発表し、第三者機関である英国規格協会(BSI)の検証を受け、適正意見を得た。適正にカーボンニュートラルを達成していることが確認されたことになり、同社のカーボンニュートラルレーヨンの国際的信用が一段と高まる。
原料である木材パルプも適正に管理されている資源を使用していることを示す森林認証(FSC)を取得している。加えてカナダの森林保全団体であるキャノピーの森林に焦点を当てたファッションセクター向け繊維調達分析ツール「ホットボタンランキング」にも参画。2022年のホットボタンレポートでランクインした。
そのほか、使用済み綿製品を原料として再利用するリサイクルレーヨン「リコビス」や、海水中生分解性も確認した「エコロナ」、合繊複合でも一浴染めを可能にすることで染色時の環境負荷を低減するカチオン可染レーヨンなど環境負荷低減に貢献するレーヨンを多数実用化した。
カーボンニュートラルレーヨンと同様に国際認証も積極的に活用することで機能に対する信頼性を担保している。海水中で生分解性を認証する「OK・バイオディグレイダブル・マリーン」をエコロナで取得した。そのほか米国の農務省が再生可能資源から作られた製品を認証する「バイオベース製品認証」、染色加工などの安全性に関する国際規格「エコテックス規格100」、食品接触の安全性認証「ISEGA」なども取得している。
H&M財団の支援でポリエステル綿混素材の分離・リサイクル技術開発に取り組む香港繊維アパレル研究所とも連携し、分離・回収した綿パルプを原料として再利用したレーヨン「RDセル」も開発した。GHG排出削減など環境負荷低減に貢献するためにも、レーヨンの可能性を追求していく。
〈“繊維to繊維”を推進/再生原料使いの「ライクラ」登場/東レ・オペロンテックス〉
東レ・オペロンテックスは今年、“繊維to繊維”の水平リサイクルを推進するための取り組み「OPTグリーンプロジェクト」を立ち上げた。第1弾として、ポリウレタン弾性繊維「ライクラ」ファイバーにリサイクル原料を一部使用した「グリーンタイプ」の販売を下半期(2022年10月~23年3月)から開始した。
世界的に環境負荷低減とサステイナビリティーへの要求が強まる中、同社は繊維to繊維の水平リサイクルが廃棄物の発生を最小限に抑える方法との結論に達した。このためOPTグリーンプロジェクトを開始し、繊維to繊維リサイクルの推進に取り組む。
OPTグリーンプロジェクトから生まれた商品の第1弾であるライクラファイバーグリーンタイプは、工場内で発生し、従来は廃棄されてきたロス糸を原料の一部として再利用して製造する。このリサイクル技術は従来から一部品種に活用されていたが、今後は全品種に導入する。
グリーンタイプの登場で、アパレルから資材、衛材など多様な用途に向けて幅広い繊度・タイプのリサイクル原料使用糸を提供できることになり、ユーザーからの要望に応えることができるようになった。ユーザーからの要望があれば、同社発行の「リサイクル原料使用証明書」も提供する。
同社では引き続きOPTグリーンプロジェクトを通じて繊維to繊維の水平リサイクルを拡大し、廃棄物発生の最小化に向けた取り組みを推進することで循環型社会の構築への貢献を目指す。
今後は、自社工場以外で発生するロス生地についてもリサイクルすることも視野に入れる。プロジェクトの第2弾として、取引先の工場で発生し、廃棄対象となっているロス糸・ロス生地のプレコンシューマーリサイクルを予定する。最終的には使用済み最終製品のポストコンシューマーリサイクルも視野に入れており、これに関連する特許出願も完了した。
近年、機能性や快適性が求められる繊維製品にはストレッチ素材が不可欠となっているが、ストレッチ素材の主流であるポリウレタン弾性繊維はウレタンの性質上、リサイクルなど環境負荷低減への取り組みが難しいとされていた。今回、ライクラファイバーでリサイクル原料を使用したグリーンタイプが登場したことで、ストレッチ素材でも環境負荷低減への取り組みが一段と加速する。