LIVING-BIZ vol.89(4)/特集 寝具寝装モノ作り~23春夏~/帝人フロンティア/シキボウ/東レ/ユニチカトレーディング

2022年12月16日 (金曜日)

〈機能の複合化で価値高める/中長期的には非繊維分野も/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアのライフスタイル部は、機能の複合化に力を入れている。寝装品用途では除湿や消臭を付与した製品が順調な動きを見せており、さまざまな機能を組み合わせることで販売拡大に結び付ける。中長期的には繊維に加え、非繊維分野にも領域を広げ、幅広いニーズに応える。

 同部は、寝装品市場の現状について、新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要が一巡したほか、原材料高に伴う商品の値上がりもあって消費者の財布のひもが固くなっていると捉える。そうした状況下でも同部の寝装品分野の販売は堅調で、2022年4~9月期は前年同期を上回った。

 前年同期比増は機能素材が評価されたことが寄与した。その一つが高吸水・高吸湿繊維「ベルオアシス」を使った除湿アイテム(雑貨類)で、パッドの下に置く商品にも派生した。そのほか、消臭わたの「フレッシュコールZ」や発熱わたなども堅調だった。

 原材料高や円安の影響が顕在化している下半期以降は、コストダウンと価格転嫁にきっちりと取り組む。ただ、従来と同じ機能・商品では値上げは難しいとし、除湿と消臭の組み合わせなど、機能の複合化で価値を高める。組み合わせる機能をどれだけ探せるかがポイントと捉える。

 カーテン用途では消臭のほか、防カビなどを訴求する。

〈サステ素材を充実/フェムテック品も/シキボウ〉

 シキボウは寝具寝装向けで、生分解性ポリエステル短繊維「ビオグランデ」や、女性従業員で結成したフェムテックプロジェクトチーム「ミチ」が開発した経血対応防汚加工「ノアード」などを訴求する。

 ビオグランデは、ユニチカトレーディングとの共通ブランド商品。土中だけでなく海水中での生分解性も確認しており、マイクロプラスチックによる海洋汚染の軽減に貢献する。カバーや“側”(中わたを入れる前の半製品)で提案する。ミチのノアードはシーツや敷パッド向けなどで提案する。

 サステイナブル関連では、シキボウグループの新内外綿が取り組む繊維廃材のアップサイクルシステム「彩生」も活用。回収したリネンサプライ用シーツを反毛にして糸にし、エコバッグに仕立てるなど取り組みを広げている。

 2022年4~9月期の業績は伸び悩んだ。中国の新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウン(都市閉鎖)や夏場の電力供給不足による生産調整で、中国のグループ拠点の生産が遅れ、販売機会ロスなどがあった。原材料などのコストアップの影響も大きく、利益面を圧迫した。

 寝具寝装向けは子会社の丸ホームテキスタイルを含めて、生地、側売りが中心となっている。

〈ポリエステル機能原綿に力/サステの取り組み一段と/東レ〉

 東レの短繊維事業部は、寝具用途でポリエステル機能原綿やサステイナビリティーに力を入れる。

 国内寝具用ポリエステルわたは、ミル消費(糸・わたメーカーの国内生産から輸出量を除き、海外からの糸・わたの輸入を加えたもの)で月1500トンほどあり、同社はそのうち約500トンを供給する。。

 国内のポリエステル短繊維は愛媛工場で生産し、機能原綿を強みの一つにする。国によって機能性評価が異なり、基準をクリアするにはコストがかかるため、海外メーカーが参入しづらい構造になっている。消臭や防ダニなど清潔関連機能をはじめ、扁平(へんぺい)な繊維の表面に多数の微細な凹凸を配置することで高い吸水拡散性を持つ吸水速乾素材「ペンタス」などを訴求する。

 同社が供給する500トンのうち混率は異なるものの、大半は再生原料を使用していると言う。寝具の側地や中わたを全てポリエステルにしてリサイクルを容易にするモノマテリアル化を進めるほか、ペットボトルリサイクル繊維「&+」(アンドプラス)などの浸透を図る。

 アクリルは、マイヤー毛布用途に引き続き力を入れる。西川、森弥毛織(大阪府泉大津市)との協業なども積極的に行う。

〈増収もコスト増で利益減/カポック使いの寝装素材上市へ/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングは、10月1日付で衣料繊維事業本部のサステナブル繊維営業第一部とサステナブル繊維営業第二部をサステナブル繊維営業部に再編し、サステナブル繊維営業部の東京テキスタイル課が寝具寝装向けを担う体制になった。

 2022年4~9月期の寝装向けは前年同期比増収減益だった。「綿糸高騰を十分ヘッジできていない」(滝澤邦治部長)などで利益率が低下した。売り上げは前年同期比10%増。新型コロナウイルス禍前の19年度比では10%減収まで回復している。販路では量販店向けが減少し、百貨店や専門店向けが増加した。生産の納期遅れで機会損失もあったと言う。

 新たな企画や加工方法を開発して、コスト増に対応するほか、新規先の開拓を進める。

 SDGs(持続可能な開発目標)関連では、インドネシア産のカポックを使用した寝装素材の開発を進め、23年度後半の上市を目指す。インドネシア紡績子会社のユニテックスを活用し、カポックを高混率した紡績糸や中材の開発を進める。

 カポックは東南アジアに自生し、伐採せずに木の実からわた状の繊維だけを採取できるため環境配慮型の素材として再注目されている。