特集 北陸産地(2)/北陸との連携を重視/蝶理/東レ/旭化成アドバンス/帝人フロンティア
2022年12月22日 (木曜日)
〈ブランド糸けん引/サステ商材は150億円規模に/蝶理〉
蝶理の今期(2023年3月期)の糸販売は、前年比10%増で推移している。再生ポリエステル「エコブルー」、高伸縮糸「テックスブリッド」、ピン仮撚糸「SPX」など独自のブランド糸がけん引している形で、糸販売量に占めるブランド糸の比率は60~70%に高まった。
エコブルーを柱とするサステイナブル糸が特に伸びている。現在はサステイナブル糸だけで200種をそろえ、幅広いニーズに対応する体制を敷く。サステイナブル商材の販売規模は前期で100億円となり、今期は約150億円となる見通し。25年に300億円を計画するが、「前倒しの達成も見えてきた」(吉田裕志常務執行役員繊維本部長)と言う。
テキスタイル販売も順調に回復し、前年比20%増で推移する。北陸産地との取り組みも増やしながら差別化テキスタイルの展開を強化していることが背景で、スポーツやラグジュアリーファッション、中東など海外向けがけん引する。自動車用途も合成皮革用基布などが伸びており、前年比10%増で推移する。米国向けで中国製から日本製へのシフトもあり、日本からの輸出も伸びている。
来期からの新中計では、差別化糸、テキスタイル、縫製の各分野が連動して新しいビジネスを立ち上げていき、繊維事業の拡大を狙う。原糸販売ではサステイナブル糸を引き続き強化する考えで、生分解性や天然由来などリサイクル以外を含めて合繊のサステイナブル商材を拡充するとともに、STXと連携して天然繊維と合わせての提案も強化する。北陸産地のテキスタイルを海外に販売していく取り組みも引き続き強化する。
来期から基幹システムを入れ替える計画の中、企業同士をデジタルでつないで効率化や見える化を図る北陸プラットフォームの運用も広げていく。
〈アウトドアなど堅調/ナノデザイン開発進む/東レ〉
東レのテキスタイル事業部門の2022年4~9月は、輸出をけん引役に堅調に推移し、北陸産地へのテキスタイル発注量も前年を上回った。スポーツ・アウトドア用途が海外向けを中心に伸び、カジュアルなども堅調だった。需要が落ち込んでいたファッションやユニフォームなども回復した。
23年も北陸との関係を重視し、取り組みを強化する。スポーツ・アウトドアではこのほど出展したISPOで、リブランディングを進める防水透湿素材「ダーミザクス」、軽量・コンパクト織物「エアータスティック」、軽量ニット「カルイシ」などが好評を得た。サステイナビリティーをベースにプラスαを加えた商品が評価された形で、今後も日本の技術を前面に出して拡大を狙う。
革新複合紡糸技術「ナノデザイン」での北陸との取り組みも着実に進んでいる。テキスタイルでは、「UTSフィット」「カミフ」「キナリ」「キューティクル」を戦略商品に位置付けて拡大に取り組む。
回復途上だった21年に対し、22年は順調に回復した。ただ、来年に向けては世界的なインフレ進行による個人消費の低迷などの懸念材料があり、11月ごろから陰りが見えだした分野もあると言う。
その一方で動きが鈍かったスキーや水着など回復が期待できる分野もある。欧米の電気料金高騰による生活様式の変化を見据え、室内で着るミドラーやダウンベストなど暖房温度を下げても快適に過ごせる新たな提案にも取り組む。佐々木康次テキスタイル事業部門長は23年見通しについて、「一本調子に上がっていくことはないとみているが、悲観はしていない」と話す。
〈エコセンサーが拡大/北陸への投資も検討/旭化成アドバンス〉
旭化成アドバンスの繊維事業は今期(2023年3月期)、衣料用途が前年比15%の増益、資材用途が横ばいで推移する。
衣料用途は前期に引き続いて順調に推移しており、特にスポーツ、アウター、裏地などがけん引する。スポーツ用のテキスタイルは前期に新型コロナウイルス禍前の19年を超えたが、今期も順調に拡大する。薄地高密度織物やサステイナブル商品「エコセンサー」がけん引役。裏地は市場の回復もあって堅調に推移し、アウターも順調に伸びている。下半期はキュプラ繊維「ベンベルグ」の玉不足の影響があるものの、裏地は再生ポリエステル、アウターはアセテートやレーヨン、ナイロンなど他素材での開発強化によりカバーしている。
アウターでは特にジアセテートが好調で、長繊維、短繊維とも拡大している。長繊維「ナイア」は20%増で推移しており、昨年から展開を始めた紡績糸「セルン」の拡大も寄与している。
エコセンサーの販売量は、前期に前年比70%増と大きく伸び、今期も20%増と順調に拡大する。全体の95%を占めるスポーツ用途が欧米向けを中心に伸びているほか、裏地での展開も始まった。今後はインナーやアウターなどにも広げてさらなる拡大を狙う。
テキスタイルに軸足を置いて繊維事業の拡大に取り組む中、北陸産地との取り組みを引き続き強化していく考え。販売を拡大しながら産地への発注を確保するとともに、中期的には産地への投資も視野に入れる。同社が整経機を購入して産地企業に貸与するなど産地でキャパシティーが特に不足している工程で検討していく。製織準備工程のほか、製織工程でもウオータージェット織機以外の部分で投資を検討する。
〈産地企業との連携強化/海外スポーツなど好調/帝人フロンティア〉
帝人フロンティアの衣料素材本部は今期(2023年3月期)、原糸、テキスタイル、グループ会社とも堅調に推移する。
グループ会社の帝人フロンティアニッティングは、ニット、加工糸とも足元はフル稼働となっている。ニットは「デルタ」を柱にグローバルアパレル向けが順調に推移しており、顧客が広がったことや編み機(46ゲージ)の増設なども寄与している。加工糸は前半に人手不足の影響があったが、9月ごろから稼働が上がり出し、収益も改善した。
織布のフロンティアテックスは、海外のスポーツ・アウトドアやカイト用、ユニフォーム、国内のスポーツとも堅調で、フル稼働が続く。
北陸向けを柱とする原糸販売は、新型コロナウイルス禍前の水準に回復した。特にエコをベースにした機能糸が伸びている。スポーツではサステイナブル糸の比率が60~70%に高まっており、30年には100%に近い水準を目指す。
テキスタイル輸出は好調で、今期は計画を大きく上回る見通し。現在は編み物が中心だが、今後は織物での拡大も狙う。
一方、国内のユニフォームやスポーツ、裏地は増収ながらも利益はコスト上昇の影響を受けている。今後はスポーツのニットの技術をユニフォームに生かすなど部内連携を強めていく。
今後は産地企業との連携を強化していく。ユニフォームはフロンティアテックスや帝人フロンティアDG、タイナムシリインターテックスが中心だったが、積極的に北陸との連携を増やしていく。スポーツなどでも産地企業との連携を強める。