帝人/次期中計、収益改善に注力/繊維は海外拠点再整備
2023年01月18日 (水曜日)
帝人の内川哲茂代表取締役社長執行役員CEOは、来期(2024年3月期)からの新中期計画について、「収益性悪化要因の改善に取り組む。利益を安定して稼ぎ出せる事業構造の再構築を最優先課題としたい」との考えを示した。
今期(23年3月期)を最終年度とする中期計画は、「成長基盤の確立期と位置付けて積極的な投資を進めたことから一定の成果を挙げた」が、収益性目標は未達となる見通し。収益性の課題が大きい事業として複合成形材料を挙げ、次期中計では強みを持つところに経営資源を集中させながら改善を図る考えを示した。
23年の取り組みとしてマテリアル事業では、炭素繊維やアラミド繊維のライフサイクルアセスメント対応などを重視する。製造工程におけるGHG(温室効果ガス)排出量の削減に向けたデータの算出や分析の強化とともに、顧客製品を含めた幅広いサプライチェーンにおける製品ライフサイクルの環境負荷低減などに取り組む。自動化を含む合理化や省力化も進める。
帝人フロンティアを中核とする繊維・製品事業は23年、①環境戦略「シンクエコ」のさらなる推進②リサイクルポリエステルを中心に糸・テキスタイル開発の強化③デジタル技術を活用した業務効率化や生産性向上、新規事業の創出―などに取り組む。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による社内業務の自動化、自社工場のスマートファクトリー化のほか、研究開発におけるデジタル技術の活用も検討する。
リスク分散と生産効率のバランスが取れた海外生産拠点の再配置や、各国における地産地消ビジネスの拡大にも取り組む。縫製は東南アジアを中心に拠点を広げることで、有事の際にも供給不足に陥らないサプライチェーンを構築する。ベトナム、ミャンマー、中国、インドネシアなどでの拠点構築を進めていく。
〈北陸との取引は250億円に〉
帝人グループの今期の北陸産地との取引額は約250億円となり、新型コロナウイルス禍前の約90%の水準に回復する見通し。20年3月期は280億円だったが前期、前々期は200億~220億円に落ち込んでいた。来期は欧米市場の不透明感もあり、横ばいの250億円を見込む。
内川社長は、帝人グループの機能性繊維と北陸の高次加工を組み合わせた開発に加え、「無形資産をお互いが活用しあうパートナーシップ」をキーワードにした新しい連携にも取り組む考えを示す。福井経編興業、大阪医科薬科大学との3者共同で開発を進めている「心・血管修復パッチ」を一例に挙げ、「人脈などお互いが持つ無形資産はたくさんある。活用しあってイノベーションを生む」協業を進める。
〈3年ぶりに新年互例会〉
帝人は16日、金沢市内のホテルで新年互例会を開いた。北陸での開催は3年ぶり。産地企業106人、帝人グループ46人が参加した。