キュプラとリヨセル/鑑別法がJIS化/顕微鏡、染色、統計手法を利用

2023年02月03日 (金曜日)

 再生セルロース繊維であるキュプラとリヨセルの鑑別法が、このほど日本産業規格(JIS)として発効した。2020年に国際標準規格(ISO)化された鑑別法を基にしたもので、三つの手法がJISに採用されている。

 キュプラとリヨセルは、ともに再生セルロース繊維であり、近年はサステイナブル素材として注目も高まる。ただ、両繊維は繊維外観や性質(染色性、燃焼性、耐薬品性)が酷似しており、両者を明確に鑑別する方法の標準化が進んでいなかった。そうした中、20年に鑑別法がISO化され、それを基にJISが制定された。

 今回JISとして発効したのは「JIS L1030―4―1繊維製品の混用率試験方法 第4―1部 キュプラ及びリヨセル―走査電子顕微鏡法及びスペクトル分析法による繊維鑑別」「JIS L1030―4―2繊維製品の混用率試験方法 第4―2部 キュプラ及びリヨセル―光学顕微鏡法による繊維混用率試験方法」「JIS L1030―4―3繊維製品の混用率試験方法 第4―3部 キュプラ及びリヨセル―スペクトル分析法による繊維混用率試験方法」の三つ。

 JIS L1030―4―1はキュプラとリヨセルの繊維表面上の違いを電子顕微鏡によって鑑別するほか、近赤外線顕微鏡で得られる赤外線吸収スペクトルの差から統計手法の一つである多変量解析による回帰モデルを作成して両繊維を鑑別する。

 JIS L1030―4―2はキュプラとリヨセルの微細な染色性の違いを利用する。脱色した後、特定の条件で再染色することで両繊維を染め分けることができる。この色差を光学顕微鏡で観察して鑑別する。

 JIS L1030―4―3は、両繊維の混紡を想定した試験方法。キュプラ、リヨセルそれぞれの混用割合から得られる赤外線吸収スペクトルの差を抽出し、多変量解析による回帰モデルを作成して混用率を算出する。

 JIS L1030シリーズの制定に当たり、JIS L1030―4―1とJIS L1030―4―2の原案作成はボーケン品質評価機構が参画している。