帝人/23年度は収益性最重視/300億円以上の改善目指す

2023年02月09日 (木曜日)

 帝人は2023年度(24年3月期)、収益性改善のための改革を実行する。同社の23年3月期の連結営業利益は過去数十年間で最も少ない100億円の見込みで、内川哲茂社長は「深刻な危機」とし、「全社で構造改革を断行する」と強調した。課題事業の収益性改善と経営体制改革を中心に、23年度までに300億円以上の改善目指す。

 22年度が最終の中期経営計画は、外部環境が大きく変化する中で、マテリアル事業の収益性の大幅悪化で財務目標はいずれも未達の見通し。23年度は新中計を始動する予定だったが、「現在の状況では足元を固めることが大事」とし、収益性改善のための改革に優先して取り組む。次期中計は24年度に公表する。

 収益性の改善が必要な事業は複合成形材料とアラミド繊維、ヘルスケアの三つ。複合成形材料は、赤字からの脱却が最優先と捉え、約130の改善策を策定した。現場レベルへの落とし込みは完了し、23年度に130億円の営業損益改善を目指す。北米事業の改善が認められない場合は事業売却なども検討する。

 アラミド事業は、販売面で影響を受けた工場火災からの早期回復、既増設ラインの生産安定化、紡糸工程を中心としたさらなる自動化などに注力する。環境貢献投資への資源配分、販売数量増によるトップシェアの地位強化などにも重点を置き、23年度で将来の収益性回復にめどを付ける。

 ヘルスケア事業は、事業基盤を活用した希少疾患・難病領域などの医薬品導入を先行する。経営体制の変革では執行役員を15人体制に刷新し、理事を廃止する。これらの施策を確実に進めることで、「早い段階でCOVID―19(新型コロナウイルス)前の利益水準に戻したい」との考えを示した。

〈大幅減益/4~12月期〉

 帝人の22年4~12月期連結決算は、売上高7650億円(前年同期比11・4%増)、営業利益148億円(61・1%減)、経常利益174億円(57・8%減)、純損失70億5300万円(前年同期258億円の利益)だった。原燃料価格高騰に対応した販売価格の改定などで増収だったが、マテリアルセグメントの営業赤字拡大などで大幅減益を余儀なくされた。

 通期の業績見通しは、売上高1兆300億円、営業利益100億円、経常利益120億円、純損失180億円。マテリアルセグメントの欧州拠点での工場火災による生産量低下に伴う販売量減などを受けて、各段階で下方修正している。