成長のステージへ 素材メーカー系商社のいま(3)/クラレトレーディング/独自ポリマー活用
2023年03月08日 (水曜日)
クラレトレーディングで人工皮革やビニロン、スーパー繊維などを除く繊維事業を担うクラベラ事業部は2023年度(12月期)から組織を再編し、衣料、資材、アパレル製品、原糸の各用途で自社が持つ独自素材や開発、情報、人材を横串展開する体制とした。既存ビジネスのさらなる拡大に加え、クラレ独自のポリマーを活用した開発も強化する。
クラベラ事業部の22年度の商況は、上半期の好調が寄与して増収増益となった。安河内裕史クラベラ事業部長は「特にスポーツ、ユニフォーム、学販がテキスタイル、製品ともに好調だった」と話す。世界的なスポーツ・アウトドアブームの追い風もあり、有力取引先との取り組みが成功している。
ブラックフォーマルも新型コロナウイルス禍による冠婚葬祭の減少で需要減退が続いていたが、ここに来て底打ちし、回復傾向となっている。ウエアラブル向け生地・製品も好調。原糸も帯静電気防止繊維「クラカーボ」など独自性のある糸を中心に順調だった。一方、ユニフォームは白衣やサービスユニフォームが好調もワークウエア向けが苦戦した。
ただ、下半期に入って一部で市況に変調の兆しが濃くなった。世界的なインフレによる需要減退や、物流停滞を懸念したアパレルは発注を前倒ししていた反動が出ている。このため23年度の市況に関して楽観していない。
こうした中、同事業部は23年度から衣料販売部、資材販売部、アパレル推進部、クラベラ推進部の4部体制に再編した。衣料と資材それぞれで用途やアイテムに横串で全ての商材で提案を進める体制を整えた。引き続きスポーツ・アウトドア、ウエルネスなどの分野で販売拡大を目指すと同時に、原糸は国内外への販売拡大に取り組む。
「クラレ独自のポリマーを活用した商品開発を強化する」として活性炭配合による光吸収発熱性、吸湿性、吸湿発熱性、蓄熱などマルチ機能を持つ「アグリアス」や、衝撃吸収性に優れる特殊エラストマー繊維「スパンドール」などの独自素材の提案を本格化させる。
主力素材の一つである十字断面ポリエステル長繊維「スペースマスター」も原料を再生ポリエステルへの変更を進めており、一段と高まるサステイナブル素材の要望への対応を進める。さらに使用済み製品の回収とリサイクルによるサーキュラーエコノミー(循環型経済)の仕組み作りにも取り組む。