特集 アジアの繊維産業(10)/カケン/2023年度も成長への施策推進/短納期対応や顧客拡大に注力
2023年03月10日 (金曜日)
カケンテストセンター(カケン)は、2022年度(23年3月期)が中期経営計画の最終年度に当たる。海外事業は、新型コロナウイルス禍による混乱が見られた国・地域はあったものの、おおむね回復基調に入っている。来年度以降は中国での納期対応強化やインドでの顧客拡大など、成長への施策を進める。
〈海外事業は中国がポイント〉
カケンは、中国やインドネシア、ベトナム、バングラデシュなど、幅広い国・地域に拠点を持つ。このうち中国はコロナ禍で苦戦しているが、ベトナムなどは回復基調にある。中期経営計画は今年度で終了し、来年度から新たなスタートを切るが、中国が海外事業のポイントになると捉える。
中国には、香港、上海、南通、青島、無錫などに拠点があるが、22年度は中国政府によるコロナ政策の急転換が影響した。中国の動きは注視していく必要があるとした上で、試験の内製化を強化する方針だ。「価格よりも納期を求める顧客が増えている」ためで、内製化によるスピードアップで顧客の要求に応じる。
納期短縮では試験機の増強を検討するほか、各拠点の連携深耕による共有化も進める。中国では、CSR監査も強化する。各拠点での監査員育成の取り組みも「ほぼ終了した」とし、人材を活用しながら拡充する。CSR監査は他の国での強化も視野に入れる。
そのほかでは、中国やベトナムで内販のための試験に積極対応し、バングラデシュでは繊維だけでなく皮革の試験にも応じる。インドは知名度を高めて顧客を全土に広げることが課題となる。
〈試験依頼確実に増加/バングラデシュ試験室〉
バングラデシュ試験室は、日本人駐在員を順次拡充し、現在は3人体制で対応している。試験依頼の件数も大きく伸びており、22年4~12月期の実績を見ると、前年の同じ時期と比べて2・5倍で推移した。1月単月では「前年同月比で3倍の水準になった」と話す。
試験内容は、染色堅ろう度やホルムアルデヒド、混用率、耐洗濯性などの一般試験が中心で、製品検査にも応じる。これまでは欧米向けが中心だったが、ここに来て日本向けが拡大してきた。アイテム別では子供服や婦人アウターの試験依頼が伸長している。
試験依頼件数が増えていることについて「問い合わせがあれば早急に調べて連絡するなど、アフターフォローを含めた親切な対応が評価されているのではないか」と分析する。納期も3泊4日が通常だが、要望に応じて柔軟に対応している。
試験依頼増加に応えるため、定期的に勉強会を実施し、スタッフ教育に力を入れている。吸水速乾やUVの試験依頼も増加傾向にあり、対応できる試験の充実を図る。
〈連携で機能性試験も充実/香港検査所〉
香港検査所の22年度は、試験依頼件数が減少するなど、前年と比較すると苦戦を強いられる形となった。広東省の顧客も多く、コロナ禍による都市封鎖(ロックダウン)の影響を受けた。ただ、“脱コロナ”が進む中、試験依頼は確実に戻ると予想している。
同検査所の特徴の一つが、広東省の顧客が中心ながら、タイやベトナム、インド、バングラデシュなどから試験依頼が入ることで、勢いを取り戻している周辺国の繊維産業の需要を取り込む。封鎖されていた中国本土と香港の境界が開放されて人や物の流れが復活し、早い回復に期待をかける。
染色堅ろう度や物性などの一般試験ではなく、機能性試験への対応をアピールする。試験設備を新たに導入することはないが、提携している大手検査機関ビューロベリタスとの連携を強化し、制限化学物質リストに対応した試験サービスにも応じる。
来年度以降はサービスの充実を図るとし、その一環として、ウェブ受け付けに対応するなど、システムを改善した。
〈ベトナム試験室/内販のための試験にも対応〉
ベトナム試験室の2022年度は、順調な回復を見せる。前年度はコロナ禍による都市封鎖(ロックダウン)で大変だったと話すが、今年度はコロナ前の19年よりも依頼件数が増え、「非常に忙しい状況にある」と言う。チャイナリスク回避などでベトナムに生産が戻っているのが奏功しているようだ。
同試験室によると、22年4~12月は前年同期の1・3~1・4倍で推移し、コロナ前との比較では10%増の水準で推移する。染色堅ろう度などの一般的な試験が増えているが、提携先のビューロベリタスのスタッフを含めて日本人が5人駐在しており、コミュニケーション面が優位点とみる。
新たに導入した窒素酸化物試験も寄与する。これまでは日本に送って試験を行い、納期は1週間ほどかかっていた。これが3日程度に短縮できる。機能性試験の短納期化は今後も力を入れる。
ベトナム国内での販売には、ホルムアルデヒドや芳香族アミンの試験が求められるが、試験実施には資格が必要。提携先が資格を持っており、同試験室でも対応できる。
〈知名度の向上など強化/インドベンガルール試験室〉
インドベンガルール試験室は、21年8月に営業を開始して1年半が経過し、依頼件数は順調に増えている。ただ、「国土が広いにもかかわらず、依頼が入ってくる地域・地区が近隣に限られている」とし、「幅広い地域の需要を取り込んでいく」ことが今後の課題との認識を示す。
試験業務は、グローバル検査機関であるモダン・テスティング・サービス〈グローバル〉(MTS)のインド法人と提携して行っている。染色堅ろう度や物性、混用率をはじめとする一般的な試験が中心で、特殊な試験については現状では日本や香港に送って対応している。
現在対応可能な試験に加えて、実施できる試験を増やす。納期の短縮などを図り、顧客満足度を高める方針。このためMTSとの連携を深めて試験設備の増強などを進めていきたい考えだ。
幅広い地域から依頼を獲得するための施策として営業活動を強化する。インドのカケンの知名度はまだ高くないとして、同国内で開催される展示会などに積極的に足を運び、認知向上につなげる。