不織布新書23春(3)/ユニチカ/フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/東洋紡/JNC
2023年03月20日 (月曜日)
〈ユニチカ/高付加価値品を拡販/新たなビジネスモデル作る〉
ユニチカの不織布事業部は、ポリエステルスパンボンド不織布(SB)と綿スパンレース不織布(SL)いずれも高付加価値品の拡販を進める。加えて2023年度(24年3月期)は、新たなビジネスモデルの構築に向けたリサーチや開発に力を入れる。
22年度は、SBが自動車向けでメーカーの減産の影響を受けたが建材やカーペット基布、フィルター、生活資材いずれも好調に推移し、売上高は新型コロナウイルス禍前の19年度の水準を超え、タイのSB製造子会社のタスコも黒字浮上した。ただ、原燃料高騰の影響が大きく、減益となっている。綿SLはコスメティック用途などでインバウンド需要の回復が遅れており、前期比増収ながらコロナ禍前の水準には回復していない。
23年度に関してSBは自動車用途でも需要の回復を見込み、SLはインバウンド需要に期待を寄せる。そうした中、2成分複合SB「エルベス」や太線度SB「ディラ」、抗菌・消臭・抗カビ・抗ウイルスなど多機能SB「ユニダイヤ」、タスコで生産する熱成形用SB「マリックスAX」など高付加価値品の拡販を進め、事業の高度化を進める。
綿SLは綿100%による環境配慮素材としての特徴を打ち出すと同時に、合繊との積層などで物性の幅や機能性を高め、用途開拓に取り組む。
国内での不織布需要の伸びが鈍化する中で、次世代のニーズを掘り起こすことによる新たなビジネスモデル構築にも23年度は徹底して取り組む。
〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/建材、土木資材を強化/「エンカ」も積極提案〉
独フロイデンベルググループのフロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(大阪市中央区)は、主力のカーペット1次基布向けスパンボンド不織布(SB)に加え、複合SBやニードルパンチ不織布(NP)による建材や土木資材用途の開拓に取り組む。
2022年度は原燃料高騰を受けて値上げを実施したことで増収となったが、完全には転嫁しきれず、利益率が低下したため利益面は横ばいにとどまった。販売面では建材向けが堅調だったが、カーペット向けは若干減少している。
そうした中、ポリエステルNP「ドリップストップ」が屋根の防水材用途で評価が高まってきた。欧米では実績のある商品であることを生かし、今後は日本市場での拡販を進める。
フロイデンベルグが買収した英国のロー&ボナーが展開してきたポリエステル・ナイロン複合SB「コルバック」と3次元構造体「エンカ」の拡販にも取り組む。特にエンカは7月からフロイデンベルグの中国工場での生産も始まる。屋根のスペーサーやベンチレーション材のほか、土木資材用途もターゲットとなる。
環境配慮の取り組みも一段と推進する。フロイデンベルググループは現在、米国、台湾、ドイツの各工場で、生産工程で発生する端材などを再生した原料による生産を行っている。建材用ではイタリアでペットボトル再生ポリエステルの利用も実施している。
〈東洋紡/海外市場開拓を重視/東洋紡エムシーの効果期待〉
東洋紡のスパンボンド不織布(SB)事業は、得意とする自動車用途のさらなる拡大に向けて海外市場の開拓に力を入れる。2023年4月から三菱商事との合弁、東洋紡エムシーへ事業移管される効果への期待も大きい。
22年度(23年3月期)は、原燃料高騰の影響でSB事業も利益が圧迫された。製造拠点である岩国事業所は今年10月に自家発電設備の燃料をLNG(液化天然ガス)に転換を予定しているが、それまでは石炭を使用するため、世界的な石炭高騰の影響は大きい。
そうした中、主力の自動車用途はカーマット基布、トノカバー材ともに自動車減産の影響を受けたが、中国や欧州での販売は堅調だった。建材もルーフィング材は一部で材料不足の影響があったものの総じて安定している。土木用途は公共事業減少や中央リニア建設の遅れなどの影響を受けたが、残土の仮置きや処理に使用する重金属イオン捕集材「コスモフレッシュナノ」の採用が始まるなど開発品提案で成果が出る。
23年度は東洋紡エムシーに移管されることを生かし、三菱商事が持つマーケティング力との融合を目指す。特に自動車用途は既に国内市場で一定のシェアも持つことから、中国や欧州の自動車メーカーでの採用拡大を目指す。建材、土木用途も国内市場が縮小傾向なことから、海外市場の開拓を重視する。
また、生活資材分野にも力を入れる。現在、そのための開発が進行中だ。
〈JNC/熱融着性複合原綿の不織布/技術高度化などで拡販〉
JNCは、熱融着性原綿「ES繊維」を使ったエアスルー不織布「エスソフト」などを販売している。同不織布は、かさ高性や安全性などの特徴を持ち、衛生材料分野向けを主力とする。今後は、機能に磨きをかけることで同分野でのシェアアップを図るほか、市場の開拓にも力を入れる。
ES繊維は、ポリプロピレンまたはポリエステルを芯に、鞘部にポリエチレンを配した熱融着性のある複合短繊維。技術的には1・0デシテックス以下という細繊度の生産が可能なほか、繊維長を顧客の要望に応じてカスタマイズすることができる。同社が生産し、米国企業との合同販売会社「ESファイバービジョンズ」が販売する。
このES繊維を使ったエスソフトは、中国(常熟と広州)と日本、タイの4拠点で生産する。かさ高性や柔軟性、柔らかな風合い、安全性が特徴で、紙おむつや生理用品、ペットシート向けなどで販売。来期(2024年3月期)は「市況の見極めと既存技術の高度化、新技術で拡販につなげたい」意向。
販売については、海外向けが多いが、日系企業だけでなく、現地企業への提案強化も検討する。インドを含めたアジアの需要も積極的に取り込む。
産業資材分野向けには、エレクトロスピニング法で生産するナノ繊維を使った不織布「エルファ」を開発している。ポリフッ化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリアミドなどのナノ化が可能だが、ニーズに応じた最適な素材を探索中。早い段階での本格販売開始を目指す。