近藤紡績所/差別化糸の比率高める/生地、製品へもつなげる
2023年03月23日 (木曜日)
紡績・衣料品製造の近藤紡績所(名古屋市中区)は、大町工場(長野県大町市)での差別化糸の生産比率を高めている。糸売りのうち新型コロナウイルス禍前は定番糸が圧倒的に多く、差別化糸が1~2割程度だったが、現状では5割にまで拡大。差別化糸の中でも「企画糸」と呼ばれる同社独自開発の素材が増えつつある。企画糸を使った自社の生地、製品OEMビジネスの拡大にもつなげる。
大町工場では約4万錘の設備を持ち、20~60番手を中心に生産。ほとんどがリング精紡機で、毛羽を抑えた奇麗めな表面感のコンパクト糸の生産もできる。オープンエンド精紡機も小規模ながら保有。撚糸機も15台保有し、双糸などさまざまな加工に対応できる。
近年、国内の紡績各社が錘数を減らしている中、糸から企画ができる強みに加え、アパレルメーカ―が「作る側の思いを込めたストーリー性のある提案を増やす傾向にある」(繊維事業本部の塩原規広営業部長兼アパレル事業部長)ことから差別化糸への要望が増加。差別化糸のうち別注と企画糸が半分ずつになっている。
輸入糸との価格競争が厳しい定番糸の販売が鈍化する中、コロナ禍でも企画糸の販売は年々伸長。同社が国内企業で唯一扱うことが可能な「海島綿」(シーアイランドコットン)など原料を厳選した「renment」(レンメント)や、甘撚りカード糸の「ほたか」「さらしな」などの販売が増えていると言う。
さらに差別化糸を使った生地、製品OEMの拡販にも力を入れる。特に最近、見た目以上の軽さと肌触りの良さが評価され、売れ筋になりつつあるのが、綿100%の繊維束(スライバー)を編んだ生地「watanomama」(ワタノママ)。綿糸換算の80番、110番単糸クラスのスライバーで編み地を生産するもので、大町工場に世界で数台しか設置されていないという編み機を使うなど、独自のノウハウを駆使して生産している。インナーやパジャマへの用途が多く、大型案件も決まりつつあることから、設備投資も検討する。
業務効率化のため4月に、KSプランニングやその傘下にあった縫製の徳島工場(徳島県藍住町)、カジュアルブランド「ランドリー」を展開するランドリー事業部を近藤紡績所に集約する。企画糸を生地、製品までにつなげる動きは「まだまだこれから」(塩原営業部長兼アパレル事業部長)の段階となるが、「糸から生地、製品にまで企画を組み立てることができる」強みを生かす。
4月11、12日に東京で開かれる「テキスタイル・ネットワーク・ジャパン24春夏展」に出展を予定。単なる販路開拓だけでなく、モノ作りでの連携先の開拓も進める。