インタビュー/MFU/日本に夢と元気届ける/ライフスタイル全般の協会へ/理事長 八木原 保 氏
2023年03月28日 (火曜日)
「ベストドレッサー賞」や「ベスト・ファーザー イエローリボン賞」などを主催する日本メンズファッション協会(MFU)。他業界の会員も増え、メンズファッション業界はもちろん、日本全体に「夢」「勇気」「元気」「希望」「感動」を届けている。八木原保理事長にMFUの現在と今後を聞いた。
――国内のファッション業界の現状を教えてください。
「高くても良い商品を購入しよう」という流れができているなど、新型コロナウイルス禍による一時の低迷から脱して回復基調に入っていると感じています。ただ、食品を中心に値上げが続き、中間層は衣料品への支出に目を向けていません。これまで以上に二極化が進んでいると言えるかもしれません。
「失われた30年」と言われるように、ファッションに限らず、日本経済全体の低迷が続いていましたが、コロナ禍やロシアによるウクライナへの侵攻で世界の情勢は大きく変化しました。時代の変化を見極め、自らのポジションを決める時が再び訪れています。企業は、長く事業を続けられる土台を改めて築かなければなりません。
――メンズ業界はどうでしょうか。
好機が到来していると考えています。ただし、従来型のビジネスでは難しいでしょう。二極化が加速するほか、少子高齢化で市場全体が縮小しているので、メンズ業界でも優勝劣敗がはっきりとしてくるでしょう。100社あるうちの全社が良くなるとは言えないので、いかにして「良い方」になるかだと思います。
変化を転換へのチャンスと捉え、自ら変化することが不可欠です。特色を出すことによって差別化を図り、時代に挑戦するという意識が必要です。「良い方」に立てるかどうかは規模の大小が左右するのではなく、それぞれの姿勢や取り組みが決めるのだと思います。
――MFU会員企業の動向は。
会員企業は毎年増えています。日本メンズファッション協会という名称ではありますが、現在はメンズだけでなく、レディースファッション企業の加入も目立ってきました。そのほかでは、大同生命保険などの保険会社やホテル、ビールメーカーをはじめとする他業界の企業の姿も珍しくありません。
新規に会員が入ってくるのは、MFUに魅力を感じているからだと思っています。これは私が理事長を引き受けた時から念頭に置いていたことなのですが、メンズにこだわらず、ライフスタイル全般に関連する協会へと成長し、元気のある企業や人が交流できる場の構築を目指していきます。
――2022年度の活動を振り返ると。
コロナ禍が続く中で、きちんと活動ができたと評価しています。「第41回ベスト・ファーザー イエローリボン賞」を皮切りに、「グッドエイジャー賞」「いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー」を実施し、11月には「第51回ベストドレッサー賞」を無事に開催することができました。各種セミナーも行いました。
ベスト・ファーザー イエローリボン賞は初めて東京會舘(東京都千代田区)で開きましたが、高い評価をいただきました。ベストドレッサー賞は50回を超え、ファッション業界を盛り上げるには最高のイベントと言え、国民的行事の一つになったのではないかと自負しています。
――23年度はどういった観点で活動を行いますか。
ベスト・ファーザー イエローリボン賞、グッドエイジャー賞、いい夫婦 パートナー・オブ・ザ・イヤー、ベストドレッサー賞の開催は決定していますし、各種セミナーも継続的に実施します。ただ、ベストドレッサー賞は、コロナ前は会場に2千人が入っていました。規模を元に戻すかなどは検討の余地があるでしょう。
22年度以上に盛り上げ、メンズファッション業界はもちろん、日本全体を元気にしたいと考えています。元気がない業界や産業、市場との関わりだけでは活路を見いだすことはできないので、MFUも元気のある業界、産業との連携を深めたいですね。
――そのほかで力を入れているのは。
SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを活動の核とし、社会的課題の解決への貢献を志向しています。これまでも事業活動を通して人々に豊かな生活文化の実現を提言してきました。
それらの一環として他の協会や団体との連携も深めています。本部を置いている渋谷区や東京都との取り組みはもちろん、天然繊維循環国際協会(NICO)などとも協調しています。
MFUの取り組みに否定的な意見もあるのは知っています。ですが「夢」「勇気」「元気」「希望」を与えるには、言葉だけでなく、実際の活動が必要だと信じています。
【略歴】
やぎはら・たもつ ジム代表取締役会長兼社長。MFU理事長のほか、日本アパレル・ファッション産業協会理事、西印度諸島海島綿協会理事長、天然繊維循環国際協会理事長などを務める。2011年黄綬褒章、20年旭日双光章受章。